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タワマンの一般的な耐震性能目標値

建物の耐震性能設計についてJSCA(日本建築構造技術者協会)が非常に参考になる基準資料を公開しております。

出典:JSCA性能設計【耐震性能編】

地震の強さと建物のグレードにより、無被害、軽微な被害、小破、中破、大破のどれかの被害状況となります。
中破からは中規模~大規模修繕が必要なるので、地震発生後の住み心地を考えると、極大地震時にもできれば小破以下に被害を抑えることが望ましいでしょう。

耐震性能の評価時に使用するのは主に以下の2つの項目です。

・層間変形角:地震時の各階に発生する変形の意味で、骨組や仕上材の被害の程度を表す
・塑性率
:損傷の程度の意味で、耐力低下の度合いを表す

この2つの建物被害の評価項目以外に、地震時の家具の転倒率などの室内被害の程度を表すものとして、応答加速度という項目もありますが、これに関しては上限の規定値が定められてないらしく、自分で確認したタワマンの性能評価結果資料でも、免震の中の一部の物件しか公開されておりませんでした。

塑性率に関しても、層の塑性率なのか、部材の塑性率なのか、性能評価結果資料を見ても分かりづらい部分があるので、今後は層間変形角を耐震性能の数値として取り上げていきます。

耐震性能評価時には、

稀に発生する地震動(震動5弱程度)をレベル1地震動(L1)
極めて稀に発生する地震動(震動6強程度)をレベル2地震動(L2)
性能評価対象外として余裕度検証用の地震動(震動7)をレベル3地震動(L3)

と呼びます。
JSCAの性能メニューにこれらの地震動と被害程度・層間変形角の数値を入れて整理してみました。

表:各構造毎の耐震性能一覧

層間変形角1/200以下は無被害となりますが、構造部材である柱と梁に耐震性能に影響する被害はないという意味であり、多少のひび割れは発生するかもしれないし、非構造部材である外装材などは、もっと早い段階で被害が出る可能性はあります。

耐震・制振の場合、高さ60m未満のマンションは一般的に基準級を目標に設計されますが、タワマンはL1で層間変形角1/200以下、L2で層間変形角1/100以下を目標に設計するのが一般的なので、タワマンの時点で上級のグレードとなります。
ただ、L2の数値は法規で決められたものではないので、稀にですが、1/80~1/90辺りの物件も過去にはありましたが、東日本大震災以後はそういう物件は見えなくなりました。
特級の物件もあるにはありますが、数が非常に少なく、全体の比率的には3%以下くらいかと思います。

免震や免制震の場合、高さ60m未満のマンションもタワマンも免震基準級を目標に設計する物価はなく、L1で層間変形角1/300以下、L2で層間変形角1/150以下または1/200以下を目標に設計するのが一般的なので、免震上級か免震特級かのどちらかになります。
免震特級はL2とL3地震動の被害が一緒になってますが、L3で軽微な被害に止める為には、L2では無被害、かつ少なくとも層間変形角1/220以下になってないと、L3の目標を達成するのは厳しいでしょう。

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