見出し画像

ブリリアタワー浜離宮の誕生物語 (14)

第二章 建替決議承認まで

2. 割増容積を取得できる開発手法の確認

 新しい推進委員会で最初に確認したかった事は、容積率の上限である。建替え提案コンペに参加した全てのデヴェロッパーが総合設計制度を活用し、300%の容積割増を受け700%の容積率で計画を立てている。しかし、容積率の向上により事業採算が大幅に改善されれば、増床費用も0になる可能性も十分にある。同じ竹芝地区にありながら、道路を一つ隔てた敷地のステップアッププロジェクト(東京ポートシティー竹芝)では国家戦略特別区域に指定されていることから、容積率が全く異なり、高さ制限も無い。また、他の多くの湾岸地域では、竹芝地区と異なり、120mの高さ制限も無い。何故、竹芝地区では容積率の700%制限や高さ制限があるのかその理由が理不尽である。何か容積率改善の方策があるのではないかと言う思いが捨て切れなかった。
 計画が進み、後戻り出来ない段階になって容積率がもっと増える事になっても、後悔するだけだ。将来、後悔する事が無いよう、まず最初に最大の容積率を確認した上で実施計画の作成を始めたかった。何故なら、前回の建替提案の際、T社はディケアサービスの様な公共の利便施設を設置すれば容積率のさらなる割増を得られるかもしれないと仄かしていたからである。(ただし、これには何の法的根拠も無かった。)
 そこで、松田平田設計にお願いし、経済特区、総合設計制度を含むあらゆる都市開発制度の適用を検討した。松田平田設計は時間を掛け、あらゆる可能性を詳細に調査、検討してくれた。割増容積を取得できる開発手法には、総合設計制度以外に、法定再開発事業、特定街区指定や都市再生特別地区等がある事が分かったが、これらの手法は何も大規模な再開発手法であり、イトーピア浜離宮の場合では残念ながら、敷地面積の規模が足らず、総合設計制度以外は適用不可とわかった。尚、総合設計制度の中でも「一般型」から、「都心居住型」、「共同住宅建替え誘導型」等6種類あり、もっとも有利なのは都心居住型で400%の割増が可能である事が分かった。しかし、全ての住戸が40m2以上であり、かつ2/3以上の住戸が55m2以上でなければならないと言う制約があった。この条件を満たすためには、全ての1Rの所有者が転出するか、もしくは高額の費用を負担し、増床せねばならない。9月に実施した最初の区分所有者の要望調査の結果を見ても転出、増床でその条件をみたす事は不可能である事が明白だった。それでも諦めきれず、保育園やディケアーサービスを設置すれば、容積率の割増の可能性があるのでは無いかと考え、行政と直接折衝したり、事業者を通じ交渉してもらったが、300%の割増が限度である事が確認され、以後、最大限の700%の容積率を確保する事を前提に計画の作成を始めた。

画像1

以上


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?