見出し画像

TVロケの聖地「稲城」


1.稲城ロケーションサービス

 先日、久しぶりに稲城に行った時、市が発行する市政便りを手にした。パンフレットには市が観光協会等と共同で稲城ロケーションサービスを運営しているとあった。そして稲城市で撮影されたTVドラマが紹介されていた。2022年に撮影された「となりのチカラ」は当時住んでいた家の近くのマンションの敷地内で長期間撮影されていたので、何度も撮影を目にしていた。また、同年に撮影された「未来の10カウント」は現場が家から離れていたので撮影を見たことはないが、友人からキムタクを見たと言う話は聞いていた。2022年6月に引っ越しで稲城を離れたが、それからもいろんなドラマが稲城で撮影されていた。2023年前半には13件のドラマの撮影が稲城で行われていたと紹介されている。そのうち半分ぐらいはTVで見ていて、気がついていた。
 ドラマの撮影がこの時期にだけ集中していたと言うわけではない。常にこれくらいの頻度でドラマのロケが行われているのだろう。しかし、そのすべてのドラマを見ている訳でもないし、また、稲城で撮影がされている事に気づかない事もあるだろう。
 2023年夏以降もNHKの「生理おじさんとその娘」で娘が家出をして友達と夜の街を歩いている場面があったが、稲城向陽台がその現場だった。また
2023年夏ドラマ 若村麻由美主演の「この素晴らしき世界」のエンディングに流れる彼女が自転車に乗っているシーンが向陽台の近くで撮影されたものだと気がついた。
 と言うよりTVドラマを見るたびに「あれ?これはあそこで撮影したんじゃない?」思うことがよくあり、稲城の撮影現場を特定することがドラマをみる楽しみになっているほどだ。

2.稲城に住むきっかけ

 稲城に住むきっかけはあるTVドラマを見た事であり、また単純な誤解からであった。1981年から1987年まで駐在していたコロンビアで友人からヴィデオを借りて夢中で見ていたドラマが「恋に落ちて」だった。そのドラマの舞台になったのが東急の田園都市線の多摩プラザの住宅地だった。私はその街の雰囲気がすっかり気に入り、帰国したら、是非、多摩プラザに住みたいと思っていた。しかし、地方出身の私は東京も東京近郊も良く知らなかった。帰国時に調布の借り上げ社宅を選んだのも、田園調布と間違えたからだった。調布をベースに住宅を探したが、多摩プラザと多摩センターを間違えて、調布から京王線一本で行ける多摩センター付近でマンションを探し始めた。途中で多摩プラザとは違うことに気づいたが、むしろ多摩ニュータウンの先進的な雰囲気の方が気に入った。しかし、当時はバブル期で価格的に、ニュータウンの住宅公団の戸建て、タウンハウス、マンションがターゲットで何度も抽選に外れながら必死にトライを重ね、ようやく稲城向陽台のマンションを購入することができた。向陽台はニュータウンの稲城市地区で最初に開発された地域で、私は1988年に稲城地区最初の住人の1人となった。まだ街は完成していなかったが、完成した街並みを想像しながら楽しく住む事ができた。

3.自宅が撮影に使われた話

 稲城がドラマの撮影に使われる様になったのは最近のことではない。街開き当初からドラマの撮影は盛んだった。我が家が「三毛猫ホームズ」の撮影に使われたこともあった。我が家のフリールームの窓に看板を掲げ、ブティックに見せかけ撮影に使われた事もある。また、別の撮影で題名は覚えていないが、東ちづると高田純二が出演したドラマがマンションの前の歩道や道路で撮影された。
 その後、再び、海外駐在になり、長く稲城を離れ、帰国後に同じ稲城の戸建てに引越したが、そこでも一度、家を撮影に使わせてくれないかと依頼があった。快諾したのだが、家の中を見ると階段の位置が撮影の台本に合わないとわかり実現はしなかった。その時はドラマの内容も俳優も知らされていなかった。後日、あるTVドラマで森七菜が自分の住んでいる住宅街から若葉台駅まで全力で疾走するシーンがあった。我が家が森七菜の撮影に使われる機会を失ったことに気づき、残念に思ったこともあった。

4.稲城がTVロケに選ばれる理由

 また、退職後は健康のため、毎日、ウオーキングをしたが、そのコースの稲城中央公園と若葉台公園ではよくドラマ撮影に出会った。中央公園ではNHK大河ドラマ「いだてん」の撮影で役所広司に出会ったこともあった。
 多摩ニュータウンの稲城地区がなぜこのようにTVドラマの聖地とも言える程人気があるのだろうか。豊かな緑と公園が背景としての見栄えの良さになり、また、広い歩道は撮影がし易いと言うことがあるのだと思う。しかし、これらの特徴であれば、他の多摩ニュータウン地域も同様だ。むしろ公園は規模が大きく、かつ多彩だ。なのになぜ稲城が選ばれるのか?確かに同じニュータウン内でも似た様な雰囲気がありそうだが、実際に歩いてみると違いが良くわかる。
1)車道、歩道。車道はほとんどが1車線だが、2車線と同じぐらいの幅があり、バイク、自転車と並走しても全くストレスがない。同様に歩道も広く、歩道橋も一箇所しかなく、歩きに全くストレスがないのだ。この事は住んでいる時には全く気づかなかったが、他所に住めばすぐにそのありがたさに気付く。1車線の道路が適度な交通量を生み、騒がしく無く、適度な賑やかさを演出している。
2)緑が豊富。単に植樹が多いというだけではない。特徴は単調な並木道でなく、雑木林の中を歩くような錯覚に陥るほどに変化のある色々な樹が植えられている通りがある。柿、栗、杏、枇杷等の果樹、高木、低木と高さに変化のある植樹があり、正に雑木林だ。

となりのチカラの撮影現場の近くの歩道

3)自然が豊富。市街地では滅多に見られない雉を良く見かける。他の野鳥も豊富だ。たぬきやハクビシンなど歓迎すべきでない動物もいるが、それも自然の豊さの象徴だろう。

ショッピングモール近くの草むらに居た雉

4)建物の形状が多様で、多摩ニュータウンの中心地の様な古い規格的な団地の風景とは異なり、視覚的な豊かさがある。おそらく、進歩的な景観と里山的な自然の名残。これらの要素が重なり、独特の街の雰囲気が醸し出されるのであろう。 

中央公園くじら橋から望むマンション群

 上記は私が感じる稲城の魅力だが、TVドラマの背景でこれらの良さを表現するのは難しい。ではなぜ、稲城がTVの聖地と言われるほど、好まれるのだろうか。おそらく、撮影する側の人たちが私と同じ様な感覚で稲城を好きになっているのだろう。そしてその感覚はきっと撮影の背景にも現れてくるはずだ。
 さて、今夜見るドラマではどこが撮影に使われているのだろうか?

以上



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?