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ブリリアタワー浜離宮の誕生物語 (25)

第三章 マンション完成を目指して

1.建替決議から建替組合結成まで

1) 催告書の発行

 建替決議承認の後、建替反対者もしくは決議棄権者に対し、建替に参加するかどうかを問う為に催告書を配送した。権利返還をせずに転出を希望される人も建替に賛同し、転出補償金を受け取る必要がある。

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 建替に賛同しない人には権利の売り渡し請求ができる。最初は3名の権利者から建替に同意を得られなかった。1人は逝去されており、権利登記が変更されておらず、相続者が不明であった為である。その後、相続者が分かり、複数の相続人であった為、手間取ったが、建替に賛同を得ることができた。1人は高齢の単身者で認知症のため判断能力が無く、後見人である弁護士と連絡をとり、建替に賛同の上、転出されることが決まった。他の1人は2戸の1Rの所有者で当初より建替に賛成してくれていた人であったが、緊急に換金が必要になり、転出補償金が出るまで待つことができず、修繕積立金の分配(240万円以上)を放棄してまで売り渡し請求を受け、換金する事を選ばれた。
 残念ながら上記理由で100%建替に参加して貰えなかったが、実質的には全員建替に賛同と言う形になり胸をなぜ下ろした。

2) 2018年11月 建物解体工事に関する「同意書」の提出依頼

 当初のスケジュールでは2018年5月に建替決議、権利変換手続きを経て2019年4月に解体工事着工となっていた。しかし、様々な行政の許可取得に当初予定していた以上の時間がかかり、特に保育施設設置は計画変更の必要があったこともあり、5ヶ月程の遅れが出た。しかし、下記の理由より解体工事をあまり遅らせる事はできず、予定より3ヶ月遅れの7月に解体工事の着工を決定した。しかしその時点では権利変換は完了しておらず、区分所有者に解体同意書の提出を求める事になった。
①補助金(特定緊急輸送道路沿道建築物)の申請期限が2019年3月であり、それ以前に解体工事契約を結ぶ必要がある。
②早くから借家人対応として定借契約への切り替えをお願いしてきた。最初は期限を2018年12月とし、後に2019年7月着工を念頭に2019年3月と修正したが、定借に切り変えられている賃貸オーナーには解体工事着工が伸びるのは更なる迷惑をかけることになる。
③何よりも殆どの権利者が1日でも早い竣工を願っておられる。
 同時に全区分所有者に改めて2019年6月末までに部屋の明け渡しを依頼した。

3) 2019年1月 住戸選定に関する説明会開催

 住戸選定にための説明会の内容は概ね2018年7月の建替実施計画案の説明会で案内されていた通りであった。しかし、自分では住戸選定で最も重要だと考える間取りについて実施計画案では十分検証できておらず、それが宿題となっていた。私は間取りを考えたり作図したりするのが好きだったので、この作業は楽しみながらできたが、付き合ってもらった松田平田設計の担当者には何度も何度も間取りを書き直して貰うなど大変な手間隙を撮らせてしまった。根気良く、最後まで付き合ってもらった事に感謝しなければならない。

1R住戸
 建替推進委員会では1R 住戸の所有者が多く、間取り検討分科会では活発な意見が出た。まず、実施計画案の間取りでは他の物件に比べメリットである広い間口を活かした設計になっておらず、キッチンとトイレ・風呂の間の廊下の幅がいたずらに広く無駄が多いという印象があった。何度も何度も図面を書き直しながら、広い間口を活かした1DKタイプと従来の1K でクローゼットを廊下側に移動して居間を広げたタイプが採用された。(左図が実施計画案、右図が最終版)
 東京建物の2020年の販売時、モデルルームを訪問したマンションブロガーのコメントでは玄関横の洗濯機置き場で洗濯機が丸見えになると批判があったが、これは消防法の問題より戸をつけることが出来ず、また、最大限の空間の効率性を追求した結果であった。

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1LDK住戸 
 色々なタイプの間取りがあり、好みの問題もある。従い、自分がこの住戸に当たったら嫌だなと思う住戸を無くす事に検討の主眼を置いた。最も嫌だと思った間取りは南西角部屋だった。40m2と狭い事、及び、部屋が三角形になっている事が主因でデッドスペースが多く、非常に狭苦しいLDKになっていた。色々とアイデアを図面に描き、それを正式な図面にして検討する事を何度も繰り返したが、制約が多く満足のゆく間取りにはならなかった。しかし独立型キッチンを諦めなんとかダイニングとリビングを分離できる間取りになった。建替に反対されていた老夫婦がこの住戸を選ばれ、抽選で当たり大変喜んでおられたと言う話を聞いた時は嬉しかった。(右図が実施計画案、左図が最終版)

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2LDK住戸
 原案では北西の中住戸(1803号)のリヴィングの間口が非常に狭く、小寝室の間口よりも狭いくらいで非常に使い勝手が悪そうだった。また、南側住戸の犠牲になっているように思われ、抽選でこの住戸が当たった人は非常にショックを受けるだろうと思われた。他の間取りと同じく、何度も図面を書き直し、南側住戸との入り組みを修正し、中住戸の間口を広げ、更に中住戸の廊下を短くし、リヴィングを2.8畳分も広くする事もできた。また、南側角住戸(1804号)もリヴィングのデッドスペースが無くなりより広く使える良い間取りになったと確信できた。(右図が実施計画案、左図が最終版)

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 住戸選定に関する説明会の後に希望住戸の受付を開始した。できるだけ抽選を避けるため、3度にわたり希望住戸を変更できる機会を設けた。しかし結果的には凡そ1/3の権利者が抽選に進んだ。公平性を保つため、間取りを何度も見直したり、効用比の検討を重ね、条件の悪さは価格で補なった。その結果、どの住戸が当たっても納得出来るので、それなら抽選でより良い条件の住戸にチャレンジする事を選択された結果ではなかろうか。私自身も抽選に回り、その結果、くじ運は最悪だったが、それでも取得できた住戸に不満はなかった。

4)2019年4月 建替組合の設立

 区分所有者に2018年11月に建替組合設立同意書の提出を依頼し、組合設立の準備を始めた。

(1)理事・監事の選任

 組合設立に当たり新たに理事を公募したが、立候補は無く、建替推進委員会のメンバーが中心になる事になった。建替決議までと決めて活動しておられた委員もおられ、2名の委員が辞退された。また、今後は必要に応じてウイークデイに会議の開催もあり得る事から仕事との関係で常に出席が難しいと判断された人も含め、3名の委員に、理事ではなく、アドヴァイザーとして貢献していただくことになった。7名の委員と東京建物から1名、管理組合理事会から1名の計9名の役員候補を決定し、組合設立総会での承認を受けることにした。(1年後にアドヴァイザーより1名が理事に就任し、役員が10名になる。)
 しかし、9名の役員候補は決まったが、監事は不人気で、なり手が無く、私に監事候補の選任を一任された。
 建替組合は単なる管理組合ではなく、100億円以上の資金を扱う事業主である。従い、不正はもちろん、また、その疑いを持たれることさえも許されない。監事は素人では務まらないと考えた。そこで、会計事務所の経営者であり、経理の専門家である管理組合理事会の副理事長を務められていた方に小生の考えを説明し、納得頂いて監事候補になる事を承諾いただいた。また、会計以外、理事会の活動そのもの監査も重要である。そこで、マンション管理士の資格を持っておられる推進委員会の前副委員長に同じく監事候補になってもらう様お願いした。その方は税務署勤務の経験もあり税務に詳しく、また会計にも精通しておられ、まさに監事の適役であった。また監事の重要性を理事会理事や区分所有者に認識してもらえる様に監事を副理事長格と位置付けた。
 総会で役員候補の承認を受けた後、三役(正副理事長)の他、理事では建築の専門家に建築担当をお願いし、会社経営者の理事には会計を担当してもらい、また、2020年にはWEB会議の導入に伴い、アドヴァイザーの1人に理事に就任してもらい(理事の増員)IT関連を担当してもらった。各理事が自分の得意分野を担当する少数精鋭の建替組合理事会が誕生し、名実共に建替組合が管理組合・建替え推進委員会に替わり建替事業を担当することになった。同時に管理組合は清算の準備を始め、管理組合はそれまで積み立てていた修繕費他を組合員に返還した。その額は1m2の専有面積あたり6万円強になり、最低面積の1Rでも120万円強になった。これは管理組合理事会の前K理事長初め先輩役員の皆さんの良好な管理と努力の賜物であり感謝である。

(2)建替組合設立総会(2019年4月7日)

 役員の選任の他、下記議案の承認を得た。
①建替組合定款及び規約
②2019年度事業計画及び収支予算
金融機関の指定
 住宅金融支援機構を選定基準とし、貸出金利等これを上回る条件の金融機関を選定する場合は理事会での決定に任せる。
転出補償金の貸付制度について
 転出補償金の支払いは権利変換計画の認可後でないと実行できず、権利変換申請の遅れにより転出補償金の支払いが遅れる事になった。そのため、転出希望者には事業の円滑な推進を図るため転出補償金の貸し出し制度を創設する。貸付方法等については理事会で定める。
⑤解体工事会社の選定
 東京ビルド社と工事請負契約を締結し、2019年6月末の従前住戸の明け渡し完了後、直ちに解体工事に着手する。
⑥管理組合からの継承事項
(略)
全ての議案が承認され、建替組合が誕生した。

以上

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