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マンション建替物語 番外編

タワーマンションの将来的価値と晴海フラッグ

  コロナ禍でも都心や東京湾岸地域のタワーマンションの売れ行きは好調で価格も下落予想に反し上昇を加速させている様である。なぜタワーマンションはこんなに人気があるのだろうか?その魅力について考えてみたが、
1)眺望 2)豊かな共用施設 3)利便性:都心からの距離、駅からの距離4)規模感 5)豪華さ 6)居住者のステータス
であろうか?しかし、2)ー6)は必ずしもタワーマンションだけの魅力ではない。大規模マンションにはこれらの魅力を備えた物件も多いだろう。となれば、現時点ではタワーマンションに特有の魅力は眺望であろう。眺望の良し悪しはタワーマンションの生命線であると言える。

 有明地区のあるマンションの北西向きの高層階からの眺望は他のマンションあ建物に遮られる事なく、レインボーブリッジ、東京タワー、富士山とタワーマンションの魅力的眺望3大スポットの全てが一望出来る。眺望は住んでみるとすぐに飽きると言われているが、このマンションの居住者に聞くと飽きることはないと言う。この眺望には確かに価値はある。全てのこのマンションの居住者は最上階のラウンジから同じ、いや、それ以上の眺望を楽しむ事ができる。同じく最上階のゲストルームからは圧巻の眺望が楽しめる。その他のいろんな共用施設が最上階に集められている。それが、このマンションの魅力である。しかし、全てのタワーマンションがこの様に眺望に恵まれている訳ではなさそうだ。

 タワーマンションが建ち始めた頃は全てのタワーマンションで眺望が楽しめたと思われるが、タワーマンションが今日の様に建て込んでくると状況は変わって来る。新しく建ったマンションに眺望が塞がれる。新しく建ったマンションもさらに新しいマンションに眺望を塞がれると言う現象が起こっているのではないだろうか。大変な人気のあると言われているパークタワー勝どきも東京湾が見える南側もレインボーブリッジが見える西側も既存のマンションに眺望が塞がれており、今後、建設が予定されている豊海のタワーマンションや晴海フラッグのタワーマンションにそのわずかな隙間さえも塞がれるだろう。開けているのは眺望的に魅力のない東側と北側であるが、それすらも保証されている訳ではない。むしろ、近い将来、別のタワーマンションが建設される可能性が強い。なのに何故これ程人気があるのか。地下鉄の駅と地下道で結ばれていると言う利便性が人気の元なのであろう。となれば、購入者は眺望をタワーマンションの最大の魅力とは考えなくなってきたのであろうか。

 外国の大都会の風景を思い浮かべれば、日本より先にタワーマンションの建設が進んでいるところが多く、高層建築がひしめいている。地震が無ければ、日本ももっと早い時代に高層建築の建築が進んでいただろう。耐震技術が進歩した現在、近い将来、日本の都市も外国と同じ様な景観になる可能性が高いと思われる。そうなれば、眺望は一部の恵まれたマンションの特権になるだろう。
 
 また、タワーマンションには管理費と修繕積立金と言う高額な維持費がかかると言う問題点もある。私は、現在あるマンションの建替組合の理事長としてタワーマンションへの建替を推進している。その一環として現在、管理費・修繕積立費の検証をしている最中である。そして些かショックを受けている。それは管理費・修繕積立金が予想していた以上にはるかに高額であり、その削減が困難であると言う事が分かったからである。タワーマンションには規模のメリットによる管理費用の軽減という側面もあるが、それ以上に1)内廊下の冷暖房費 2)高速エレヴェーターの保守点検費 3)機械式駐車場の維持費 4)Fix窓を含む清掃費 5)警報設備監視 7)コンシェルジュ等のタワーマンション特有の管理費用だけでも普通のマンションに比較して200円/m2以上の費用がかかる。修繕積立費も同様に高額になる。ただし、修繕積立費はデヴェロッパーの販売政策上、最初は非常に安く設定され、大規模修繕が近づくにつれ高額の積立金が徴収される仕組みになっている。マンション自体が高額であるため、これらの費用は取るに足らぬと思われている様だが、将来ボディーブロー的に効いて来るだろう。

  タワーマンションの将来的な眺望の劣化、高額の維持費と言うネガティヴな問題について述べたが、これは将来的な変化を見通した上で価値を評価すべきだと考えたもので、決してタワーマンションの価値を否定するものではない。タワーマンションには都心居住の利便性という何事にも変えられない大きな魅力がある。

 一方、コロナ禍は新しい働き方、生き方、家族との過ごし方を提起することになった。これらの変化にはコロナ収束後も引き継がれる習慣、生活様式も多くあるだろう。コロナ後には新しい、多様な生活様式が生まれるだろう。そうなれば、また、住居に求めるものも変わって来る。恐らく、住居選択の基準は、駅への距離などと言う中途半端な基準ではなく、都心居住の利便性か、周辺の住環境と居住性かに2極化するのではないだろうか。私の長女夫妻は共働きで4歳と1歳の二人の子供がいる。都心に近い1LDKのマンションに住んでいたが、二人目の子供が出来た事、また、二人とも在宅勤務になった事より2LDKに引っ越した。しかし、それでも狭くて、在宅勤務には不十分で80m2以上の広さのある3LDKのマンションの購入を契約した。しかしそれでも今後も続く在宅勤務の事を考えれば十分とは言えず、今、4LDKへの変更を模索している。もちろん、こんなに広いマンションを都心のタワーマンションに求めるだけの財力は無い。この様に、コロナとそれに伴う生活の変化はは確実に人々の住居選考の基準に大きな変化を与えている。

 将来的に住戸の需要は2極化すると予想したが、それは都心の利便性を追求したタワーマンションと、郊外の緑豊かな住環境に優れ、十分な広さのある住居になるのだろうか。私は現在多摩ニュータウンに住んでいるが、その様な需要が増え、永山、多摩センター地区の団地再生につながればと願っている。そんな私が最近非常に興味を持ったプロジェクトが晴海フラッグである。決して郊外ではなく、むしろ都心である。しかし、緑豊かな空地とゆとりある建物の配置や都心への移動の不便さは郊外の団地に似ている点も多い。多くの建物はタワーマンションではないが(タワーマンションもあるが)冒頭で述べたタワーマンションの魅力が全て揃っている。おまけに緑が豊かで広い空間にも恵まれている。眺望は低層階であろうと多くの建物が面している、南、西、北方面全てが半永久的に保障されている。北側の豊海地区には将来、高層建築が建つだろうが、運河の眺望は保障されており、高層建築が建った場合でも十分距離があり、圧迫感はないだろう。何よりも豊かな緑地が貴重だ。家族と過ごす時間も楽しいだろう。郊外のニュータウンが都心に建設されるのだ。このようなプロジェクトは今後私が生きている間にはもう二度と無いだろう。しかし、マンション評論家からは非常にネガティヴな意見が多数発せられている。その最大の問題が最寄駅への距離だ。勝どき駅まで徒歩20分が問題視されている。しかし、彼らは何でも否定的な意見を書けば売れると考え、常にネガティヴな意見を誇張して書いているのでは無いかと思いたくなる。

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 晴海フラッグの購入者に聞けば、多くの人が混雑で評判の勝どき駅から地下鉄を利用しようと思っていない事が分かる。若い人の中には、自転車通勤を考えている人もいる。確かに、東京駅まで30分もかからないだろう。また、都バスでゆっくり座って通勤したいと考える人もいる。実績がなくて、その便利さはよくわからないが、BRTも十分使えそうだ。何よりも今はリモートワークの時代になりつつある。通勤手段は大きな問題ではない。むしろ色んな選択肢がある事がメリットとなるだろう。偶然ではあるが、コロナ後の世界の変化を予想したようなプロジェクトと言える。
 勝どき駅まで地下道で駅徒歩1分のタワーマンションか、徒歩20分だが緑豊かで住環境に秀でた都会の団地か。これらのプロジェクトの成否は近い将来の住居選考の傾向を占う材料になるだろう。晴海フラッグの販売が中断されている現在、パークタワー勝どきの人気が非常に強いが、晴海フラッグの販売が再開された時はどうなるか楽しみである。

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