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ブリリアタワー浜離宮の誕生物語(35)


第三章 マンションの完成を目指して

13. 住戸引渡しに向けて

1) 住戸引渡しまでのスケジュール

 2023年に入ると理事会の活動も急に慌ただしくなった。感覚的にはまだ先の事と思っていた竣工、住戸の引き渡しが急に現実的なものとなり、それまでの理事会のスケジュールが具体的になると身が引き締まる思いがした。
 3月、5月、8月に総会と説明会が予定され、その準備のため、理事会は月2回、時には3回それぞれ⒋5時間に及ぶ長時間の協議となった。実際にはそれでも間にあわぬほど討議事項は多かった。

2) 2023年3月臨時総会と説明会

 世の中のコロナ対策は徐々に緩和の方向で動いていたが、3月時点では時期尚早と判断して特に会場への来場は推奨しなかった。しかし、久しぶりにお会いする人も多く、参加者は今後、増加して行くだろうと思われた。 
(1)建替組合臨時総会
 議案は2023年度の事業計画及び収支予算の承認のみで平穏に終わった。
2戸の組合保留床の売却については文章にて詳細を報告した。
(2)インテリアオプション説明会
 長谷工インテックによりインテリアオプションの説明会は事業協力者の関連会社の事業ではあるが、組合事業には無関係であくまで説明の場を提供するだけと言う立場であった。
(3) 駐車場、駐輪場等の抽選申込の説明
 従来の平置き駐車場と異なり、車、バイク、自転車とも馴染みのない駐車方法になるため、できるだけ多くの組合員に使ってもらえるよう丁寧に説明してもらった。
(4)新管理組合役員選定手続き
 輪番制と立候補性のハイブリッド理事会は規約作成で最も熱を込めて議論した項目であった。管理会社よりの説明の後、時間をもらい、イトーピア浜離宮時代の管理組合の良き伝統を引き継ぐために是非役員に立候補してほしいと訴えた。

3) 2023年5月の総会及び説明会

 コロナが第5類に分類され、世の中の動きにも変化が見られる様なった。総会の参加者が増える事も予想し、マンション近くに大きめの会場を借りて準備した。まだコロナが怖いので参加は控えると言う知り合いもいたので、それほど参加者は多く無いかも知れないと思っていた。しかし、会場は知った顔であふれ、総会の開始時刻には空席が全く無くなるほどになった。会話も弾み、久しぶりに和やかな雰囲気の中での総会となった。会場予約の時間的な制約があり、総会後の懇親会が持てなかったのが残念だった。
(1)建替組合通常総会
 議案は2022年度の事業報告及び決算報告で両案とも承認された。
その後、松田平田設計により地震の長周期地震動に関して解説をしてもらった。理由は、石川県の地震で長周期地震動の階級が初めて新聞発表され、関心を持たれた人が多いのではと思ったからである。
(2)入居前手続きに関する説明会
 
① 引越しまでのスケジュール、② 内覧会の説明、③ 新管理組合への提出書類・管理関係について、④ 引っ越しの幹事会社の紹介と手続き関係の説明
 長時間にわたる説明会であったが、組合員の人達には、いよいよ竣工、引き渡しが迫っている事を実感してもらえたと思う。

4) 8月の建替組合臨時総会、管理組合設立総会、入居前説明会に先立つ理事会での協議

(1)駐車場抽選結果と駐車場サブリース契約
 駐車場の申し込みは予想に反し、申込が殺到し、78台に対し47人のキャンセル待ちが発生しているとの報告を受けた。しかし、賃貸に出す予定の人まで駐車場を申込んでおり、賃借人が駐車場不要の場合、もしくは9月30日までに賃借人が決まっていない場合はキャンセルが出る事は予想されており、本当の駐車場需要ははっきりしない。
 駐車場に空きが出る場合に備え、駐車場のサブリース契約を締結する事を決定した。
(2)理事立候補者(管理組合設立総会議案)
 3月の説明会で新管理組合理事会の役員への立候補をお願いしたが、正直言って立候補者が出てくるかどうかは疑問であまり期待できないと思っていた。しかし、旧イトーピア浜離宮管理組合の副理事長が手を挙げてくれ、なんとか最低限は確保できたとホッとした。
 しかし、管理会社(候補会社、管理組合設立に関する協議には参加を認めていた。)より立候補者の締切にあたり、定員をオーバーする6人の立候補(権利者より2名、分譲住戸購入者より4名)があり、抽選で4名を選考したとの報告があった。この報告に理事会は紛糾した。理由は、立候補者が定員をオーバーする場合は総会で投票により選考するのが規則。8月の管理組合設立総会では分譲住戸の購入者が未だ契約を完了しておらず、投票ができないと言うのが抽選にて4名を選んだ理由だと言う。これは前例もあるとの説明があったが、管理会社が何度も総会を開く手間を省こうとしたのが理由であることは明らか。かかる重要事項を理事会の承認を得る事なしに勝手に決めるとはこの管理会社は基本動作ができていない。残念ながら管理会社の教育が必要と感じた。
 とは言え、分譲住戸購入者が組合員になるまでマンションの管理方法については想定していなかったため、8月の管理組合設立総会では管理規約を変更し、9月30日より3月に開催予定の分譲住戸の新組合員を含めた総会までは暫定管理組合を設立し、建替組合役員が管理組合役員を兼任する事を提案し管理組合設立総会にて承認を受ける事を決定した。そして来年3月の総会で投票により立候補者より4名の理事を選考し、同時に輪番制の理事4名の承認を得る事とした。ともあれ、定員をオーバーする立候補者が出た事は嬉しい誤算だった。
(3)新電力問題(説明会資料)
 
4年前に共用部、専有部ともに新電力を採用する事を決定した時とは電力事情が大きく異なっている。共用部の新電力は大きな変化は無いが、専有部のそれは料金の高騰もさる事ながら選択肢が極端に減った。
 共有部については料金を試算してもらった。かなりの上昇になっている。電気料金高騰により管理費を上げる管理組合が出ているとの話も聞いている。ただし、実際にどれくらい電力を使うのか、節電できるのかはやってみないとわからない。管理費の変更問題は新しい管理組合に任せる事にした。
 しかし、専有部の新電力については多くのマンション居住者にとって馴染みが無く、特に高齢の居住者は戸惑う事が多いと考え、シティーコンサルタンツには契約の結び方、電力会社の選択(特定の業者を推薦できないが2−3の優良な会社の推薦、新電力詐欺に対する注意喚起)の注意点等の丁寧な説明書の作成をお願いした。
(4)植栽管理契約と共用部火災保険の締結(管理組合設立総会議案)

(5)事業収支余剰金の組合員への払い戻し(建替組合臨時総会議案)
 事業収支が赤字になると組合員より費用の追加徴収を行わねばならない。しかし、事業がある程度進んだ段階で追加徴収を行い、反対者が支払いを拒否すれば、事業は頓挫する。従い、事業収支は赤字にならぬよう、常に保守的に運用しなければならない。そして支出が確定した段階では収支は黒字になるのが普通だ。そして余剰金(黒字)が発生すれば、その余剰金は組合員に払い戻すことになる。

 本件も事業収支はこの段階で東京建物の協力もあり(添付の第34号、 12、3)東京建物との協議参照)、支出はほぼ確定し、また収入面では組合保留床の販売益(53百万円)もあり、2.22〜2.40億円程度の黒字になると想定された。入居を控えた組合員の方は色々と費用がかかることが予想され、できるだけ早く剰余金を払い戻すべきと考えた。
 しかし、実際の入金は10月以降になるものも多く、キャッシュフローの問題があった。また、支出増となる可能性のある未引渡し住戸の競売等にかかる費用もこの段階では読みきれなかった。
 従い、住戸の引渡しの前後に1.21億円のみ組合員に払い戻し、残りは事業収支が確定次第、建替組合解散の時期に合わせ清算する事にした。第一次の払い戻しは20m2の1Rの所有者でおよそ30万円強でこれまで負担されてきた増床負担金や仮住居費用の補填には程遠い金額だが、これから必要になる引越し費用や管理費・修繕積立金の一次払い金の支払いの助けになれば幸いだ。

(6)東京建物とアフターサービス契約の締結(説明会資料)
 建物引き渡し後の不具合にかかる原始取得者等からの申し出の受付、工事負担者への連絡及び補修の手配等の窓口業務。定期補修の実施補助。
(7)東京都優良マンション登録(管理組合設立総会報告事項)
(8)その他

5)2023年7月下旬 住戸内覧会開催

 7月下旬に住戸の内覧会を開催した。私より先に内覧会に行った複数の権利者より電話があり、「大変素晴らしいマンションになって感激した。これはあなたのおかげだ。」と感謝の言葉をいただき、私も非常に嬉しい思いがした。特に眺望が素晴らしかったとの感想が共通していた。しかし、初めてタワーマンションを見た人は同じような感想を持つのだろうと思っていた。当然、私はどのようなマンションになるのか十分知っていているので、そのような感動はないだろうと思っていた。
 実際に自分が内覧した時に受けた第一印象は、彼らとは違い下記の様に残念な点だった。
❶ 規模の小ささ。エントランスロビーや屋上スペースは思ったより小さく、迫力に欠けている。
❷ バルコニーの手すりが透明でなく、室内からの眺望が今ひとつ。更に手すりが135cmと高すぎた。もっともこれは都よりの要望(景観規制)で更に高くしろという要望を断り、交渉でギリギリの高まで削った結果ゆえやむを得ない。
 
 とは言え、これらの事は内覧前に分かっていたことで、あくまで最初に受けた印象に過ぎない。よく見ると、
① エントランスホールは小さいながら、手の込んだ仕上げになっている事がわかり、高級感がある。素晴らしい出来だと思えた。窓の外の緑の濃い植栽もきっと心を癒してくれるだろう。
② 自分の部屋からはバルコニーから身を乗り出さないと芝離宮は見えないが、部屋から見える都心のビルの光景はそれなりに素晴らしい眺望だった。
③ 屋上のスペースは大きく無いが、晴海フラッグ、豊洲市場、お台場、レインボーブリッジが一望できる眺望は非常に価値あるものだ。内覧後に電話をくれた権利者が感動したと言うのもよく分かった。今、話題の晴海フラッグのSky Duoからの眺望にも決して引けを取らないだろう。
④ 数少ない共用施設である、ビューラウンジとオーナーズスイートも、大きさこそ劣っても、高級感にあふれ質では決して他のタワーマンションに負けない仕上がりになっている。権利床の廊下の床・壁の仕様は想像していたより良く、屋上に続く分譲階のそれと比較しても遜色なかった。

ビューラウンジ
エントランスホール


屋上


 内覧途中で知り合いの権利者からも同様の感想と感謝の言葉をいただき、涙が出るほど嬉しくなった。改めて東京建物及び他の事業協力者の皆さんに感謝の気持ちが込み上げてきた。

6) 2023年8月 建替組合臨時総会開催、管理組合設立総会、入居前説明会の同時開催

 会場は前回と同じ会場しか借りられず、参加者が更に増えることを想定した場合、不安があった。従い、机を片付け、椅子のみの配置とし、人数の増加に対応した。参加者は前回より増加したが、なんとか全員を収容できた。
 二つの総会と説明会で内容が豊富で時間配分が心配だったが、なんとか4時間の予定時間のうちに無事終える事ができた。
(1)建替組合臨時総会
 この臨時総会の目的は剰余金の払い戻しのための規約変更であった。暫定的に1.21億円の払い戻しを行い、組合収支が確定次第、残りの剰余金を払い戻す事の承認を受けた。
(2)管理組合設立総会 
 9議案からなる長時間の総会であったが、もっとも重要な議案は分譲住戸購入者である新しい組合員が参加できる来年3月の総会まで建替組合役員が暫定的に管理組合役員を兼任するために必要な規約変更及び暫定的管理組合の承認であった。また、管理組合の活動を始めるのに必要な管理会社との契約、収支予算、長期修繕計画も承認を受けた。その他の議案は、9月30日からの管理に最低必要な事項の承認にとどめた。
(3)入居前説明会
 
増床負担金等の精算方法、引っ越しまでに必要な手続き、インターネット及びケーブルテレビの使用方法、共用設備の予約方法、新電力の契約等々を丁寧に説明してもらった。シティーコンサルタンツは新生活を始めるためのマニュアル(必要な手続き、器機の使用方法の説明書を保存し、今後必要な項目を追加できるよう)のファイルを作成し、配布してくれた。おかげで参加者よりは危惧していたような不安や不満はほとんど聞かれなかった。

7)問題点

 総会も無事終わり、あとは9月30日の引き渡しを待つだけと思ったが、総会後の理事会で4名の権利者と連絡が取れていない事が報告され、増床負担金等の精算ができず、引渡しが完了できない可能性がある事が説明された。1人は以前から報告されていた、認知症を患い判断能力がなく、後継者もいない老人であり、その対策は既に取っていた。しかし、他の3人については新たに発生した問題であり、早急な対応が求められる。
 権利者の多くは高齢者であり、かつ、建物の建設だけでも4年かかると言う長期にわたる建替事業では認知症問題や権利者の死亡という潜在的な問題点があることを改めて認識させられた。

以上

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