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ブリリアタワー浜離宮の誕生物語 (22)

第二章 建替決議承認まで 

7. 施設計画の変更と事業収支の改善

5)2018年7月 実施計画案

(事業収支上の問題点)
アスベスト除去費

 実施計画原案段階(2018年3月)ではアスベスト除去費は金額が確定せず、算入できなかった。その後、公募により9社から選考の結果、アスベスト除去及び地上部解体工事を東京ビルドに発注した。その費用が2.9億円に確定した事(アスベスト除去工事のみでは1.06億円)、及び、工事費が想定より下がらぬため、建築・解体工事費見通しが1.25億円増加し、再度事業収支計画の見直しが必要になった。

(対応策)
①保留床面積の増加

 3月の実施計画原案の発表時に転出率を確定するために権利変換/転出の最終の要望調査を実施した。その後も未提出者に声をかけ、全員よりの回答取得を目指した。その結果、反対者など極一部を除いた98%の権利者より回答を得た。未提出者、態度保留者は権利変換者とし、明確に転出を表明した権利者のみを転出率にカウントした。その結果、転出率は戸数、面積とも5.2%と確定した。
 また、保留床面積を増やすため、さらに住戸の集約を奨励した結果、62m2住戸は11戸に増え、そのため、55m2住戸は設定の必要がなくなった。これで最終的に、170m2の権利床を縮小でき、面積ベースでの権利変換率は106.0%まで減少できた。保留床売却額が増えた結果、他の支出の微調整と合わせ、事業収支のバランスを取る事が可能になった。

最終施設計画
 55m2住戸が不要となり、各タイプ間の不公平を解消できた。住戸配置の効率性を高めるため、3-17階までを全て同じ間取りの組み合わせにし、18/19階のみ不規則な住戸割り当てにする事になった。希望者が増え、1階層に収まりきれなくなった62m2住戸11戸を18、19階の2層に分け、17階までに不足していた1LDKを余剰の出来た18階に集める事で必要戸数を収める事が可能になった。これで必要戸数の効率配置と権利床面積の最小化と言うパズルの最後の1枚が収まった。1LDKタイプの所有者は角部屋取得というメリットはあるものの、階数については高層階が保証されず、現状との比較において不満が強かったと思われるが、18階に6戸の1LDK住戸を設置できたことは、ほんの少しでも1LDKタイプの所有者の不満解消に役立ったのではなかろうか。
 しかしながら、個別の間取りについては十分議論する時間がなく、それぞれのタイプの住戸に納得の行かない間取りが多く見られた。これは、「住戸選定に関する説明会」までに改良を加える事にした。

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8. 居住者優先住戸の設定

1)2018年3月 実施計画原案

 建替え推進委員会の討議の中で最も議論が紛糾した議案の一つである。私は1Rの所有者で年金生活をしている人の中には増床負担金の支払いに困る人もいると聞いていた。そこで、必要戸数を調査の上、居住者優先住戸を北西側低層階に設定することを提案した。シティーコンサルタンツは居住者、非居住者間の公平性の観点から居住者優先住戸は認めない意見であったが、弱者救済の提案には賛同してくれた。
 この問題に関連して、マンション内居住の委員から居住者の当然の権利として全ての居住者に優先住戸枠を設けるべきとの強い意見が出され、それに賛同する非居住の委員もあり、議論は紛糾し、複数回の委員会で時間無制限の議論が行われたが、議論は収束せず、最終的には多数決で決めざるを得なかった。その結果、
1R :上層階(17-19階)、下層階(3-6階)を除く全ての階層。
1LDK :12−14階の角部屋
62M2:19階
を優先住戸枠とする事に決まった。1R及び1LDK住戸では最も人気のある階層を除く事でかろうじて公平性を保ったが、62M2に関してはそれもない状況で各タイプの住戸の優先枠の割当てに理論的な整合性が無いのが気になった。また、『不満の最小化』と言う基本理念にも大いに反する決定であると言わざるを得なかった。しかし、これは長時間の議論の末に決めた事であり従わざるを得なかった。とは言え、後悔の残る決定であった。また、シティーコンサルタンツは非居住の区分所有者の反感を予想し、優先住戸設定を正当化する理由作りに大変苦労する事になった。

2)2018年7月 実施計画案

 実施計画原案段階では後味の悪い決定となったが、要望調査の結果、①居住者優先住戸に対する反対意見が強く無視できないと判断された事。②権利者の人気の住戸にはかなりの偏り傾向が見られた事。③住戸集約の希望者が増え、62m2住戸は1フロアーでは収まりがつかなくなった事が判明。
 その結果を受け、優先住戸廃止か見直しかを再度、議論した。やはり長期にわたる引越しを余儀なくされ、生活環境の変化に耐えねばならない居住者の苦しみを少しでも軽減出来る様に優先住戸の設定は必要との判断に至り、条件を見直しする事にした。
3タイプに共通する基本原則を設定)
人気の集中する階層は一般の権利者に開放し、優先住戸は中庸の条件(階層)に設定する。
各タイプの優先住戸)
+1Rは6−7階、及び、13−14階のみとし、人気のある低階層(3−5階)高層階(15−16階)は一般向けとし、また、中間層の8−12階も外し、対象住戸を制限する。
+1LDKタイプは変更なく12−14階とする。要望調査では殆ど希望の入らなかった階層であるが、現状と同じ様な階層として設定。
+62m2住戸は希望者が増え、2層必要になった事より上記の原則に照らし、18階を優先住戸、19階を一般向けとした。

 今回の決定は逆に居住者の視点から見れば、あまり優先とは考えられないかも知れない。しかし、居住者は優先権を捨て、一般向け住戸を競争により獲得することも可能としたことより大きな不満は出なかった。この決定はより『不満の最小化』に繋がり、公平感が回復できモヤモヤ感も解消した。

9. 住戸選定の方法

 最終提案である実施計画案作成にあたり、それぞれのタイプの住戸の必要数を確定するために要望調査を実施した。全ての区分所有者に回答してもらうために、提出しなかった権利者は住戸選定おいて劣後すると言うペナルティーをつけた。

 運に左右される抽選をできるだけ避けようとまず、希望住戸を提出してもらい、希望者が重ならなければ決定。重なった住戸を選んだ権利者は2次選定で希望住戸を変更でき(もちろん変更しないと言う選択もあり)希望者が重ならなければ、決定。希望者が重なった住戸を選んだ権利者はさらに第三次選定に進む。第三次選定でも希望者が重なった場合は、抽選で決定。抽選方法は住戸ごとに抽選をするのではなく、住戸選択の順番を抽選で決定し、その順番に基づき、希望住戸を選択すると言う方法がとられた。あまり馴染みの無い方法ではあったが、公平性を保ちつつ、抽選の事務作業を減らすことに適した方法であった。この抽選方法が一般的ではなかったため、誤解が生じたこともあった様だが、シティーコンサルタンツが丁寧に対応してくれたお陰で不満はほとんどなかった。

以上


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