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ブリリアタワー浜離宮の誕生物語(13)

第二章 建替決議承認まで

はじめに

 2016年6月に東京建物を事業協力者に選考し、マンション建替推進は新たなステージに入った。初めての区分所有者向けの説明会の開催にあたり下記のメッセージを伝えた。

 ”2014年11月の総会で管理組合理事会における新体制が発足して以来、準備段階として理事会は『自力』で走って10ヶ月で第一段階までたどり着きました。第一段階では建替推進委員会という『自動車』を手に入れ、更にスピードを上げて8ヶ月でゴールにたどり着きました。しかし、第二段階は建替推進委員会の能力の及ばない最も困難で長い道のりでです。そこで我々は事業協力者と言う新たな乗り物を手に入れました。今度は新幹線に乗ります。最も重要な事は、この列車に区分所有者の皆様が乗客として乗り込み、皆様の意向に添いスピードや経路や行き先を決定すると言う事です。東京建物と理事会は運転手です。シティーコンサルタンツ、松田平田設計や建替推進委員会は皆様の意見をまとめ、運転手に伝える車掌です。”

 当時は、2017年12月に約1年半で建替決議を上程すると言う予定だった。しかし、問題を先延ばしにすることは絶対にせず、常にスピード感を持って課題に取り組んだにも関わらず、実際の建替決議は2018年10月になり、およそ10ヶ月の遅れが生じた。建替推進を大幅に遅らせる様な致命的な問題は無く、この遅れは主に各種の行政の許可取得に想定以上の時間がかかったことによる。当初の見通しが甘かったということだ。ゴール地点を見誤った事にあるのだろう。もっとも、想定外である、新幹線の運行を遅らせる様な強風や大雨は頻繁に経験した。しかし、その都度、メンバーは一丸となり、遅れまいと全力で走った。

 第一章では時系列的に我々の経験した事を述べて来たが、拡大建替推進委員会では常に複数のテーマを同時並行的に処理して来た為、第二章では、時系列を超え、テーマ別に我々が経験した事を述べて行きたい。

1. 拡大建替推進員会の発足

1)事業協力協定書の締結

 拡大建替推進委員会の発足にあたり、東京建物と事業協力協定書を締結した。協定書では建替決議が可決され、事業主体となる建替組合が発足するまでに必要な経費は東京建物が立替え、建替決議が可決され建替組合が設立された後に組合がその費用を継承する事になった。また、建替推進が挫折した場合は、管理組合にその責任が無い限りは、その費用の負担の義務がない事が取り決められた。この事は未だ建替が検討中であり、決定していない段階でその費用を管理組合が負担する事には反対者の強い反発が予想された事より非常にありがたい協定であった。
 また、建替提案に基づき、設計業務を松田平田設計、建替推進コンサルタント業務をシティーコンサルタンツに委託する事が決められた。設計、コンサルは自分達で選考すべきだと言う意見も予想されたが、特に、設計、コンサル部門で自分達が希望する候補者も無く、費用負担の問題もあり、東京建物の提案を受け入れる事に異論は無かった。

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2)建替事業への参加者とその役割

 建替組合が発足するまでは事業主体は管理組合理事会であり、理事会より諮問を受けた建替推進委員会が活動の主体となる。東京建物は管理組合理事会の事業協力者となり、松田平田、シティーコンサルタンツ は理事会を支援する。建替決議が可決され、マンション建替組合が発足した後は、区分所有者である組合員(実質的には区分所有者の代表としての理事・監事)と共に東京建物は参加組合員として建替組合の構成員になる。
 これは円滑化法に基づく仕組みであるが、最後まで、区分所有者が建替事業の主体となる点が、敷地売却制度、等価交換方式と異なる点である。これこそが、より区分所有者にとって望ましい形で建替事業を推進するための大きな要因となる。2006、7年の建替検討の初期段階より建替推進の中心として活動されて来た委員は、年齢的、体力的な限界を理由にこの時点で委員を辞任された。恐らく、彼にとって建替は過去に提案されて来た等価交換方式のイメージが強く、事業協力者選考がゴールだと言う認識であり、後は東京建物に任せると言う認識であったのだろう。しかし、実際には漸く出発点に到達したと言うに過ぎなかった。

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3)建替え事業収支

 大雑把に言えば、事業の収入は組合が東京建物に売却する保留床の代金と組合員が支払う増床の費用の合計である。この収入で、建築費、転出補償費、調査設計費、その他事務費等の支出を賄うと言う仕組みである。支出が増えれば、保留床を増やす、保留床価格を上げる、増床費用を上げる等により収支バランスをとり事業を成立させねばならない。収入に限界があれば、工事費等の支出を減らし、バランスを取らねばならない。

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4)拡大建替推進委員会の発足

 2016年6月26日に従来の委員の他に事業協力者である、東京建物、松田平田設計、シティコンサルタンツの担当者が参加する第一回の拡大建替推進委員会を開催(ただし、簡略化のため今後、建替推進委員会もしくは推進委員会と略称する。)。総勢22名程度の参加者となり、第一、第三土曜日の月2回開催を原則とし、必要に応じて追加で推進委員会を開催する事とした(実際には建替推進決議が可決されるまでは月3−4回の開催頻度だった)。
 最初の推進委員会で事業者側より建替え推進のスケジュールが説明され、2017年12月に建替え決議、2019年1月に解体工事着工との説明あり。様々な行政の認可事項があり、その許可取得のため、予想して居た以上に時間がかかるとの印象を受けた。
 また、区分所有者とのコミニュケーションを図るため、「建替えニュース」を発行し、全区分所有者に配布する事を決定した。これまで、チャットワークと言うネット機能を使い、情報を伝達して居たが、ネットユーザー以外はこの情報にアクセス出来ないと言う限定的な情報伝達手段であった。これは推進委員会に事務を行うためのマンパワーが不足していた事による。この欠点が、事業協力者の豊富なマンパワーにより解決できる見込みが出て来て、本事業の推進がこれまでとは次元の異なるものになる事が期待できた。

以上



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