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SIRモデルに基づく新規感染者数の推移分析:オミクロン波のピークは2月4日ごろか

この記事は1月30日までのデータを用いた計算結果に2月2日までの新規感染者数の報告値を加えたものです。

現在私が使用中のSIRモデルにおいては人と人との接触削減率εが最も重要なパラメータである。これは実態に乏しく、つかみどころのない変数ではある。しかし感染が拡大すると、人々の自律的行動変容や国・地方自治体からの規制によってεは次第に増加し実効再生産数を低下させる。

現在流行中のオミクロン波は2022年に入って急拡大したのですでに一ヶ月経つ。この間の新規感染者数の報告値からSIRモデルに基づいて接触削減率を計算した。以下の図は東京、大阪、広島、福岡、鹿児島、沖縄の各都府県、および日本全体について算出した接触削減率の経日変化を示している。

各都府県の接触削減率の変化:この変化をべき数式や線形式で近似して新規感染者数の推移シミュレーションと予測計算を行った。削減率が66%を超えれば新規感染者数は減少に転じる。

いずれの都府県においても、感染初期には約40%の削減率から出発して次第に上昇している。ブースター接種が遅れている我が国においてはワクチン有効接種率(2回目接種の有効性を考慮しても1月で15~17%)は重要な寄与をしないので、接触削減率の増加のみが感染伝播の抑制に対する唯一の手段である。第1波以降の経験より接触削減率は最大70%程度までは達成されることがわかっている。一方、オミクロン株の世代時間を2.1日、基本再生産数を3.6とした場合、実効再生産数が1となり、新規感染者数の推移においてピークが達成される接触削減率は66%と推算される。

沖縄県の場合、1月11日に66%の閾値を超え、現在は約68%を維持している。従って、日々の新規感染者数は1月11日のピークを経て現在減少中である。広島県も1月21日に閾値を超えたが、現在は66~68%付近を変動しており新規感染者数の急激な減少には至っていない。

一方、東京都、大阪府、および福岡県は、1月29日現在、削減率63%程度まで上昇しているが66%の閾値まであと5日程度かかると考えられる。つまり、2月3日か4日に削減率は66%に達し、実効再生産数が1となってこれらの都府県の新規感染者数の推移はピークに達すると考えられる。

以下に6都府県と日本全体について、2月2日までの新規感染者数の報告値と1月30日現在で行ったシミュレーションによる計算値の比較を示す。計算に際しては削減率の変化をべき数式などで近似した。

東京都の新規感染者数の推移:ピークは2月4日と推定される。
大阪府の新規感染者数の推移:ピークは2月3日と推定される。
広島県の新規感染者数の推移:ピークには1月21日に達したと推定される。
福岡県の新規感染者数の推移:ピークは2月3日と推定される。
鹿児島県の新規感染者数の推移:ピークは2月4日と推定される。
沖縄県の新規感染者数の推移:ピークには1月11日に達したと推定される。



補遺

接触削減率の算出:SIR式の一日ごとの積分形より日々の実効再生産数ならびに接触削減率を求めた。このままではバラツキが大きいので、問題の日とその前後3日ずつ、計7日間の接触削減率の平均値を求めた。結果を以下に示す。

1日毎に算出した削減率(青)と7日平均(赤)

平均の削減率を線形式やべき数式で近似し、新規感染者数の経日変化の計算(過去の報告値のシミュレーションおよび将来のプレディクション)に用いた。直近の将来予測に対する近似式の外挿レベルは、東京都の場合、下図のようである。また、接触削減率の上限は70%と仮定した。

1月20日から30日までの削減率とそのべき数式近似:外挿すると2月4日に削減率66%が達成され、新規感染者数の推移上ではピークとなる。


ここで使用したSIRの概要は以下をご参照ください。


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