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16.険しい道のり

・日本への情報伝達

4月30日 AM3:00  ・・・東京事務局にあてたFAX

村田君へ

4月29日午後6時35分、古川君が各スポンサー様よりご協力頂いた補給物資を携えて、無事レゾリュートへ到着いたしました。村田君が日本でがんばっている事を聞きました。1日3時間位しか寝ていないという事も聞き、うれしく思いました。残念なのは、その努力が各方面にストレートに伝わっていないのが、悔やまれます。

一番気になるのは、今回、資金及び物資を快くご協力してくださったスポンサーに対する情報の足りなさ及び遅れだと感じています。そこで提案なのですが、現在わかっているスポンサーの所に前回の補給時に書いた私のレポートを「現地より」ということで、FAXしてもらえないでしょうか。

一人でやるのは大変なので、手分けしてやっていただくのが良いと思います。それと、前回北極点19Kmまで近づきながら、天候の悪化により、百数十km流されてしまったにもかかわらず、再度北極点にまさに到着間近である事等を簡単に付け加えてもらうとわかり易いと思います。

もう既にやっているかも知れませんが、大場さんは自分を理解し、応援してくれたところには、まめに手紙などを書いていたことを考えると、是非今やるべき事と思っています。

カナダ側から北極点を目指している河野兵市さんも、4月29日午後10時の時点で、北極点迄約80Kmに迫っています。決して競争するような意味ではありませんが、スポンサーの方にとっては、非常に情報のほしい、また、応援のしがいのある時期ではないかと感じております。河野さんチームは、NHKの取材班が既にレゾリュート入りして、北極点到達の撮影準備及び現地スタッフの取材等も活発に行っております。

私たち大場支援スタッフも自分たちができる範囲の中で、補給・記録・伝達という事を悔いのないようやっていくのが厳寒の北極で頑張っている大場さんへの励ましになると確信しています。できるだけ正確に尚且つ早くを心がけて頑張ってください。

ELT(イーパブ代替品)、スリーピングバッグがカナダ在住のビデオカメラマン蓮見さんの協力により、レゾリュートに今日届きました。スリーピングバッグは2~3週間で汗を含みます。5キロから10キログラムの水分を含んで凍ってしまうので、補給時に交換します。

ピーターさんに依頼して、ファーストエアー社へ5月3日か5月4日のいずれかに補給の予約をしました。初回補給時に要望があり、前回補給時に届けた「アザラシの生肉」を次回補給用にテリーさんに依頼しました。大場さんにとって、アザラシの肉はエネルギーのもとになるようです。

カナダ側から北極点を目指していた、ノルウエー・イギリスの2人組が、北緯85度を越えた所で断念し、今日テリーさんのところへ戻ってきました。当初7チームあったのが、残るは河野さん、オランダチーム、ペンギンチーム(女性リレーチーム)ポーラフリー(日本人を含む3名)の4チームです。北極点到達も簡単にはさせてくれないのを実感しています。

今日レゾリュート入りした古川君が持ってきてくれたタバコを河野さんチーム、オランダチーム、NHK記者の方々に少しずつですが配りました。こちらはタバコが1箱9$(900円)しますので大変喜ばれました。又、酒は売っておらず、古川君に持ってきてもらった酒を皆で楽しく飲みました。1本は河野さん、大場さんが無事帰ってきてからの祝いのためにとってあります。レゾリュートは、イヌイットへの酒の販売が禁止されているようで、手に入れることはできません。

北極のことについて、書かれている本がテリーさんの所にたくさんあります。皆ここでお世話になったようで、サイン入りの本です。別紙にまとめておきましたので、読んでもらうと北極及びレゾリュートの事が理解できやすいと思います。紹介してあげてください。


-山本由樹様-(※大場さんの北極冒険を連載した「女性自身」編集者)

FAXありがとうございました。今日古川君がレゾリュート入りしたので、鈴木君は1人部屋へ移りました。私は自分を手伝ってもらおうとは全く思っておりません。山本様、鈴木君の立場も十分理解をしています。あまり無理をしたり、頑張りすぎて補給の足を引っ張るような状態にならないでほしいだけですので、そこを理解してもらえれば結構です。風邪をひいた人間を補給機には乗せられないこともご理解下さい。

無菌状態にいる大場さんに風邪を移す事は非常に大変だという事。これは各チームとも自覚をしております。あまりプレッシャーをかけて、私の助言を素直に聞いてもらえない状況を懸念しているだけですので、ご安心ください。全てはここ1週間位にかかっています。鈴木君へのご指導、宜しくお願いします。

今回、古川君が女性自身の記事のコピーを持って来てくれたのを拝見致しました。その後の記事ができましたらFAXしていただけるとうれしいです。前回、山本様初め、いろいろな方からのメッセージは既に前回の補給時に投下しております。

追伸 事務局へ

無線は、朝9時、夜9時45分の1日2回、10分位づつ、こちらの補給準備状況を発信しておりますが、まだ交信できていません。前回空中投下した無線機が壊れていなくても、大場さんの方の無線機出力が弱いため、現在の位置ではこちらへ届かないと思います。大場さんが聞いてくれる可能性があるので、毎日続けています。

レゾリュートは今、まったく暗くなりません。時差ぼけの古川君に付き合って夜更かしをしてしまいました。外の気温はマイナス18度・・・・
毎日少しずつ暖かくなっているのを感じます。


・北極点へ2チーム同日到達の可能性

4月30日 PM9:35  ・・・東京事務局にあてたFAX

4月30日PM7:00より、大場さんの北極点到達と河野さんの北極点到達が、ほぼ同じ日になるのではないかという事で、話し合いを持ちました。ファーストエアー社のチャーター便に余裕がありません。というのは、河野さんチームは、食料に不足の可能性があり、5月2日の予約を入れておりました。その後、天候の回復と順調な河野さんの足取りで、現在北極点まで60㎞付近にきております。

ちなみに、1日20㎞を歩いております。大西マネージャーの予測では、5月3日に北極点に到達する可能性が十分です。この事から、これ以上到達が遅れる場合は、食料のドロップオフ(投下)か、5月3日に到達の可能性なら北極点でピックアップを予定しています。

そこで、大場さんはというと、4月30日現在、北極点まで46.4㎞のところまできております。4月30日のペースでは、1日19㎞(4月29日15:30から4月30日13:30)の距離をかせいでいます。このペース(1日15㎞)で歩きますと5月3日午後には十分北極点到達の可能性を持っております。

ところが、5月3日または5月4日に大場さんの予定が入っており、1機ずつのフライトは困難な状況です。そこで北極点到達が同日か若しくは、1日前後の違いであれば、河野さんと大場さんのチームで飛行機を相乗りで行くことを決定いたしました。相方より2名ずつ乗り、北極点へ向かう予定にしております。

大場さんスタッフから2名、河野さんスタッフより2名になりました。この時期のフライトは、天候の悪化が懸念されるほか、5月4日を逃すと6日7日は一杯で、その後にしかフライトスケジュールを取れません。上記内容は、5月1日の両者の歩行結果を確認した上、決定することになっています。

また、蓮見様(ビデオカメラマン)には、今日の日中に北極点へのフライトが5月4日前後になることをFAXしております。こちらのスタッフの許容は2名ですので、私以外の人選については、デジタルハウス様・光文社様での人選にお任せします。河野さんチームは、大西マネージャーとNHKカメラマンの林様が行くことを予定しております。宜しくご検討下さい。

ただ心配なのは、前回北極点まで19㎞と迫りながら、百数十㎞流されたいきさつもありますので、あくまでも現在の進行状態からの予測ということを御理解下さい。私の考えとしては、大場さん、河野さんの両者に一番良い補給又はピックアップができる事を主に決断いたしましたので、わかって頂きたいと思っています。

又、大場さんがロシア側から、河野さんがカナダ側からそれぞれ出発して、時を同じくして北極点に立つことができたら、こんなにすばらしい事はないのではないかと両者の北極点到達を願っています。こちらレゾリュートで多くのアタックチームの中で感じることは、いかに北極点までの道のりが険しく困難であるかの思いです。大場さんが今後継続して歩くかどうかは別にしても、一区切りの北極点到達を間近にして、胸がどきどきしている現在の心境です。

上記スケジュールが決まった場合、あさって5月2日には中継地点のユーレイカに宿泊を予定しています。テリーさんの所への連絡は、古川君が担当していますので、小アルゴスの発信があり次第、事務局よりテリーさん、ファーストエアー社への連絡をお願いします。今後の動向についても、できるだけ早めにFAXしますので、各方面への連絡を宜しくお願いします。
                                
                              志賀忠重

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