見出し画像

7.補給の準備

・2回目の補給要請はいつか?  

4月7日

大場さんから依頼(初回補給時のメモ)のあった品物を、テリーさんに頼んで集めてもらった。食料については日本から追加で持ってきた物も十分あるが、大場さんの日記を読むとカロリーの高い食品を希望している。それを加味して数量を決めた。

オートミール2箱、バター450g、チーズ1kg、砂糖2kg、アザラシ冷凍肉10kg、ビスケット3箱、クッキー2箱、アメ、粉ミルク、パンは補給時に用意する事にした。

新たに用意するのは、カミック(イヌイットの靴)、鼻の凍傷のぬり薬、無線機、ピーターさんにはコールマン製のストーブ、ピーク1を頼んだ。私が日本から持ってきたのもピーク1だが、セパレートタイプだ。大場さんが使っているものとは違うものかもしれない。なぜなら一体型交換用のゼネレーターが、大場さんの補給部品の中に見つかったのだ。そのタイプを買ってくれるように頼んだ。

河野さんのサポートをしている真木さんもセパレートタイプは寒い、オーリングが問題になるかもしれないと言っていた。交換用のオーリングは、2つ予備が入っているので40日位は十分に持つと思うが、大場さんの要請を満たすためにストーブは2タイプ用意して選んでもらうことにした。

夕食時、ピーターさんが隣に座って大場さんの現在地を聞いてきた。私が英語をあまり得意でないのを考えて、話してくれているのが感じられ、うれしかった。「北緯88度位(北極点迄220km)まで進んでいるだろう」と話したら非常に喜んでくれた。

彼は私のいない前回補給時に機転をきかせて荷造りしてくれた。燃料10リットル、食料は3週間分を送ってくれた。彼は何人もの冒険者のサポートに携わっているので、信頼できる判断力をもっていると感じた。燃料は1日500cc使うので20日間持つ。食料も3週間分あれば、今までの大場さんのペースなら北極点まで十分持つと予想される。

ピーターさんにアルゴスデータを見てもらい、4月3日から再スタート(レゾリュートの日にち)すると、4月22日位までは食料・燃料とも大丈夫だろうと助言をもらった。

3日間の補給待ち時間を加えても18日間は歩ける。4月7日は、北緯87、48′28″にいる。北極点迄は242kmある。そこから計算すると…。

1日平均20kmを歩くことができれば、12日後には北極点に着く計算になり、4月19日前後が補給日になるだろう。

また、持ち日数は18日間なので、220km÷18日=12.2km/日

1日12.2km以上歩くことができれば、食料・燃料の問題はなく、北極点までは到達出来そうだ。心配なのは、鼻と指の凍傷の事。前回の補給機のパイロットの話によるとひどいようだ。テリーさんが薬を手配してくれているが、北極点の補給まで悪化しないといいが心配だ。

北極点を越えてからも河野さんチームの大西君(愛媛大学院生)の話によると、例年北緯84度(カナダ側)以北だと乱氷帯が少なくなるらしいが、今年は北緯86度を越えてもかなりすごく、河野さんも大変らしい。荷物は100kg.位を引っ張っているが、なかなか前進できないそうだ。彼らもソニーのビデオPC7を持っているが、寒い所でも十分動くそうだ。白金カイロは温度が低すぎて、役立たずだ。体につけていれば暖かいが、ポケットの中では冷たくなってしまう。

河野さんチームの話では、北緯86度まで行くのに、ツインオッター機(時速120マイル・180Km/h位のスピード)で7時間位かかり、高さ4000m位を飛ばれると、空気が薄く気力を失うそうだ。事前の段取りを十分しないと、臨機応変な仕事はできないようだ。必要な情報が少しずつわかってくる。


・事務局へのFAXより 


4月7日

無線機と凍傷のぬり薬を除いて、ほとんどの補給品が大場さんの要請通り揃いました。無線機についてはレンタルと新品の2通りがあります。レゾリュートには無く、イエローナイフにあります。
(イエローナイフはレゾリュートから飛行機で約1時間かかる町・週に1便しかない。)

イ レンタル品  デポジット  2000$(カナダ)
          レンタル料  350$/月×2=700$
ロ 新品(アンテナ、ケース付) 2700$(送料を含む)

レンタル品を頼みました。手に入るのは早くて4月14日、遅いと4月19日だそうです。できるだけ早く手に入れたいので、新品でもよいと頼みました。

後日レゾリュートで売れるとテリーさんは言っています。テリーさんは、忙しい中よくやってくれています。

皆が心配していた大場さんの今持っている食料の件、レゾリュートに残っている前回補給後の残量から推測すると、北極点までは間に合うように思われます。今後の課題は、補給場所が確定していることが、非常に大事です。しかし無線機が無いので、大場さんからのアルゴス発信機による補給要請が出てからでないと、決めるのは難しいと思います。

河野さんチームの人達の話を聞くと、カナダ側北緯86度での補給に、途中1回の着陸とドラム缶7本の機内補給をしたそうです。(人間は2人、補給物資は100㎏位)

北極点はもっと先ですので、北極点補給時には、天候等により積載重量を制限されることを懸念しています。

2、3日中にファーストエアーのグレックさんと打ち合わせをする予定です。北極点補給後の3回目の補給準備も考えなくてはなりません。ほとんどの消耗品・食料品等をこれから用意する必要があります。おいおい考えていきます。

それから、大場さんの資金は大丈夫でしょうか。前回の補給に使った費用を考え合わせ、残金がいくらか、確実なところを知りたいと思っております。

私はいたって元気ですが、時差ボケかちょっと頭の回転が遅いような感じがします。外はマイナス30度位です。雪の上を歩くと金属音がして不思議です。30秒もすると吐く息が髭について真っ白い氷になります。大場さんは毎日冷凍庫の中に入っているのだという事が実感します。


画像1

レゾリュートにて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?