見出し画像

23.補給直前の準備

・大場さんへのメッセージ(3回目補給時に準備)

天候悪化や何らかの事情により着陸できない場合、補給品を飛行機から投下しなければならない。大場さんと打ち合わせができないので、大場さんに伝えなければならない事項を書き込んだメッセージを補給品と一緒に入れておく必要がある。又着陸して大場さんと会えたとしても、着陸していられる時間は限られているので、漏れがない様にメモをしておく。打ち合わせの時間がなく、すべてのことを大場さんに伝えられない場合もあるので、必要最低限のことを書いたメッセージを大場さんに渡すため、以下の8項目についてあらかじめ用意しておいた。
1.ドロップアウト時のメッセージ 2.無線機について 3.ELTについて 4.ゴムボートについて(その1) 5.ゴムボートについて(その2) 6.韓国隊のそり 7.アルゴスデータ一覧表 8.今後の補給・無線交信・無線機予備バッテリー





1.ドロップアウト時を想定したメッセージ

遅くなりました。心配かけました。着陸できなかった場合、食料・燃料・凍傷の薬等、投下します。補給の要請は5月11日5:00(カナダ時間)、国際標準時(UTC5月11日10:00)に確認しています。小アルゴスは正常です。イーパブは確認なし。補給が遅くなったのは、天候(着陸地点)が悪いとの判断(ファーストエアー)で飛べませんでした。

・今後の事

1 歩く事が可能な場合は、小アルゴスを止め移動を開始して下さい。
2 体調が悪い・準備が悪い場合等で着陸しての補給もしくはピックアップを望む場合は、荷を投下した後も小アルゴスを発信したままにして下さい。良い天気の時を見計らって、また必ず来ます。その時大場さんは良い滑走路の所で待って下さい。
*今回壊れるおそれがありますので、ELT(イーパブと同じ物)・新アルゴス・無線機は投下しません。

・今後の補給について

氷の状態が相当悪い事が予想されます。荷を軽くして10日から2週間の時間をおいて補給するのはどうでしょうか。予算はあります。補給時のロスをなくすため、新しいアルゴス発信機でメッセージを送ってもらい、必要な時に無線交信をしたらどうでしょうか。
※別紙のように16種類のメッセージと緊急信号が出せます。 
無線機は補給の打ち合わせに必要です。この打ち合わせができれば、無駄に待つ必要がなくなります。

・無線使用について

私は補給翌日夜には、レゾリュートに戻っています。最初はテストも兼ねますので、ファーストエアー(コールサイン 69レゾリュート)を呼び出して下さい。モレルさん(女性)がでます。彼女はすぐ私を電話で呼んでくれます。30分位で行けるでしょう。時間はレゾリュート時間9:00から22:00(国際標準時14:00から翌日3:00)がいいと思います。

その後の無線連絡は、大場さんが決めてください。
 1 大場さんの望む時、先にアルゴスで知らせてください。
 2 2日おきか3日おきの歩き終ってから

・新アルゴス発信機について

小さいですが高性能です。テントの中で暖めて、2時間スイッチを入れれ
ば十分位置データが取れます。60日使って取れない日は、1日か2日だそうです。その日でもメッセージは問題なく取れたそうです。

画像1

アルゴススイッチ類


・凍傷について

別紙を見てください。薬は光文社の山本さんが手配してくれました。高くて良い薬だそうです。みんな1度に使っても問題ないそうです。私は大場さんが横断を終えるまで、レゾリュートにいますので、安心してください。無理をしないでできるところまでやって下さい。できるだけの応援をします。

                       5月15日AM2:00  志賀

カナダの柴田さんも手伝ってくれています。会えるのを楽しみにしていますよ。


2.無線機について


前回の無線機についてのメッセージ及び別に書いたメッセージは無視して下さい。なぜなら、今回持ってきた無線機には、5.281.5サイクルがありません。この周波数は、ファーストエアー社でいつも使っていますので便利ですが、セットできませんので、最初は大場さんからの呼び出し及びこちらからの呼びかけは、「B5210.0」の周波数を使います。

もし、他の人がこのチャンネルを使っている場合、チャンネル「A5031.0」に切り替えて使って下さい。どちらかで待ちます。

交信する時間は、カナダ時間21:00か22:00(UTC:国際標準時2:00か3:00)でお願いします。そちらからの電波が弱くてとれない時は翌朝、カナダ時間AM8:00(UTC:13:00)にファーストエアー社で交信する為待っています。

最初の交信及びテストは、補給した翌日の夜(カナダ時間)にしたいと考えています。その後はアルゴスメッセージの「1」をセットしてください。それによって無線機のスイッチをONにして交信待ちの状態にします。

                      5月16日PM4:30  志賀


3.ELTについて

ELTが発信されると世界中の救急隊及び軍隊が動きます。イーパブよりも強烈ですので注意して下さい。

補給時に使うと数百万円の罰金をとられます。ELTの電波は、ハイジャック、シージャック等の被害にあった時使われる信号と同じです。

イーパブ発信は始末書で済みましたが、これは駄目ですので間違ってスイッチが入らないよう、くれぐれも注意して下さい。

ELT発信の仕方

1 アンテナを伸ばす。
2 スイッチをON(右側に倒す)にする。
3 電波は3日間発信されます。
4 場所がわかります。

テストの仕方

1 テストはTEST側(左側)でON側にはしないで下さい。
2 テストは5秒以内でお願いします。
3 ランプが点滅すればOKです。(バッテリーも十分にあります。)


4.ゴムボートについて(その1)

ゴムボートは、レゾリュート屋外に3日間放置。その後空気を入れて実験済。空気注入後も同様。使用可能と思われる。(1回だけテスト)ピーターさんの話では、北極海で使った人がいるそうです。

注意事項

1 最初はボート側の弁がかたく引っ付いており、そのままでは空気は入らない。暖めて指で広げて口で空気を入れ、入り始まったらポンプを使うと楽に入った。20分から30分で空気は入る。補給品に白金カイロを入れたので、これで口を暖めるといいかもしれない。

画像2

          
2 空気を入れた後、確実にフタ(キャップ)を閉める事。強く押す必要がある。その後ボートの上から力を入れて、フタが取れない事を確認してください。

3 2人用のボートなので、ボートに荷を乗せて、そりは軽くしてひっくり返らないようにして下さい。ロープでそりを引いたらどうでしょうか。

4 とがった氷に十分注意して下さい。穴が開くと危険です。

5 1回使ったら2回目が大丈夫かはテストしていない。補給時毎回新しいものを持って行く準備がしてあります。

6 使うかどうかは大場さんが判断して下さい。無理はしないで下さい。


5.ゴムボートについて(その2)

注意事項

1 ゴムボート(レジャーボート)は、とがっているものがない所で空気を入れて下さい。今回補給したブルーシートを下に引いたらいいと思います。

画像3

2 別紙*1・2とありますが、今大場さんが引いているそりは1人で乗ったらひっくり返ると思いますので、着陸できなくて韓国隊のそりが補給できない時は、1の使い方がいいのではないでしょうか。

6.韓国隊のそり

画像4

画像5


7.アルゴスデーター一覧表


①シグナル№ ②メッセージ ③内  容 ④受信№

①0 ②すべて順調 ③問題なし ④000

①1 ②無線交信したし ③至急交信したし ④017

①2 ②停滞 ③停滞+№15=ピックアップ ④034

①3 ②補給待て ③翌日の指示を待つ ④051

①4 ②補給早める ③補給の準備・№15信号の翌日補給 ④068

①5 ②滑走路発見 ③翌日の天候を見て補給 ④085

①6 ②滑走路なし ③№3か№15のメッセージ必要 ④102

①7 ②天候良し ③着陸のための天候 ④119

①8 ②天候悪し ③着陸のための天候 ④136

①9 ②体調悪し ③体調悪い+№15=ピックアップ ④153

①10 ②準備悪し ③- ④170

①11 ②無線機壊れた ③アンテナ・ヒューズなど ④187

①12 ②氷状態悪し ③動きとれず/コース変更 ④204

①13 ②ボート必要 ③新ボート(FRP)必要 2.0m×1.2m 15kg ④221

①14 ②至急補給頼む ③緊急を要する(ドロップオフでも良い)④238

①15 ②ピックアツプ ③緊急ではない ④255


*大事なメッセージから送ってください。
*2つ共大事なメッセージの時は、重要なメッセージから1時間半ずつ送ってください。

8.今後の補給・無線交信・無線機予備バッテリー

*今後の補給について

今回の補給後、ピックアップを除いてもう1回の補給ができる予算があります。ペミカン等はありませんが、米・その他食料は用意できるでしょう。
今のレジャーボートよりも大きいゴムボートも用意する予定です。


*補給後の無線交信について

補給した日の翌日の夜9:00に5210の周波数でやりたいと考えています。その後は何もなければ、3日毎夜9:00に待ちます。アルゴスメッセージNO1が出た時は、当日夜9:00に待機します。
今回補給時、飛行機から大きいリードの位置を確認したいと思っています。(但し雲があると見えない)翌日の交信時に報告します。くれぐれも気をつけて下さい。又会えるのを楽しみにしています。


*無線機予備バッテリーについて

リチウム電池が用意できませんでした。アルカリ電池も温度がある程度温まれば問題なく使えますので、予備にして下さい。現在使っているリチウム電池もまだ十分大丈夫だと思いますが、念のため次回交信よりは手短に使いたいと思います。

また、アルゴスメッセージで「NO1」を発信した夜だけ使うことにしても良いと思います。この事については、補給翌日の夜9:00に無線で打ち合わせたいと思います。乾電池を入れる時にプラスとマイナスを間違えないように入れて下さい。間違うと無線機が壊れる可能性があります。入れ方は裏蓋に書いてありますが、バネがついている方に平らな方(マイナス)を入れて下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?