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3.地平線プロジェクト(1)はじまり


地平線プロジェクトは、いわき市立美術館において発表する作品と、野外で行う「地球から地球を見る」というものだった。

日本では初の公立美術館発表ということもあり、蔡さんは発表に向けてかなりの数のプランを抱えていた。なにかひらめいたり、発想を思いついたりすると、すぐにメモしておくのだろう。そうしたプラン集を、私たちによく見せてくれたものだった。

蔡さんをバックアップする為に、気の合う仲間数名が集って、地平線プロジェクト実行会を組織した。理由は、彼のプランを実行するためには予算が全く足りなかったからである。

始めは募金を募ることも考えたが、募金で集る金額は数千万円もかかりそうなこのプロジェクトを満たすにはほど遠い話だったからだ。蔡さんはプランを練り、実行会がそれを実行する為の方法を考えることになった。
芸術が分かりにくいものでは、一般の人々の協力を得られないと話すと、蔡は次のような言葉を紙に書いてきた。

  この土地で作品を育てる
  ここから宇宙と対話する
  ここの人々と一緒に時代の物語をつくる

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この三行の中に、蔡の発想力と言葉遣いの鮮やかさを感じ私たちは感動した。こうして地平線プロジェクトは動き出した。

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蔡さんがいわきで住んだ、海をのぞむ家


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