タイヤが軋む



潮騒が引いて
黄昏どきの海がふたりを朱く染めている
つないだ手から互いの心が通いあう
汽笛を鳴らして港に帰り着く舟あらば
帰らぬふたりのいて
一番星灯りての空に藍が満ちていく
港をめぐりめぐりての果てに君の黒髪揺らす潮風
いつしか星影ただよう夜になり
帰り難き思いに温もりを確かめ合う手と手
温んだコーラを飲みほして
波止場の先へそぞろ歩む
道化て転んでワン・ツー・ステップ
夕なぎ劇場のラストワルツ
君はほほ拭うて笑う
可笑しくも悲しくもあるよな顔して
僕を惑わす君の本音が欲しくて
闇に放った車のライトに灯台があって
それは白くて白くてどこまでも白いのに
逢えるかしら
つぶやく君の
あやふやな契りを憎み
偽りを滑るタイヤが軋む

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