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『センスの哲学』千葉雅也

本書のパワーワード=餃子は音楽


ドゥルーズの「差異と反復」に依拠しながら「センス」という曖昧なものを千葉さん独特の仕方で紐解いていく。


純文学もゴダールも抽象画も、音楽、リズムだと思って楽しめばいい。繰り返されるもののなかから差異と逸脱を見つけて楽しむのだ、と。確かに私自身、映画を研究していたとき、ショットの数や長さ、カメラと対象物との距離、編集の仕方など、ストーリーに引っ張られすぎないよう注目するようにしていたな、と(しかし、それがなかなか難しいので何回も何回も観る羽目になる)。それを音楽や絵画にも応用すればよいのだと改めて気付かされました。絵画って観るの難しいよね。あと写真も。


千葉さんのライトな本は『別のしかたでーツイッターの哲学』、『勉強の哲学』、『現代思想入門』と読んできたけれど、回を追うごとに読みやすくなってきていて、千葉さんご自身も、こういう本を書くときの文体など相当に研究されているのだろうなと推察。


一方、一貫して自己分析の方法として、自分の年表作りや影響を受けたものをできる限り具体性を持って書き出していくという手法は変わらずで、気になっていたのに私全然やってなかったなと思い出しました。反省。


センスを分解しつつ、芸術の見方や楽しみ方、軽ーく哲学や芸術史もさらえる、なんだかお得な一冊でした。

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