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20200129-透明人間の家

モデルハウスには透明人間が住んでいる。小高い丘の上で無垢材の吹き抜け階段がある家に暮らせたらよかった。現在プレイ中の人生ゲームにおいて勝敗を分けるマスのひとつはそれに違いない。あまりに物質主義的で資本主義的で高度経済成長期的で分不相応な望みだけれど、住環境というやつは私にとって幸福度を強く左右する要素なのだ。快く生き、適し活きる。正しく字の如し快適生活を夢見ているのである。近所に程広い公園があって、夏場は木々の隙間から汗ばむ陽射しが降り注ぐような。真っ白く舗装されたレンガ敷の緩やかな斜面を、三輪車に乗った子どもが必死に登坂しているような。いやまあウチ子どもいないんだけど。とっても食べやすい種なしぶどうだから。週末に乗る車はチンクエチェントくらいの気取りがちょうどいい。オリーブを縁側から眺めて有田焼のマグカップでホットコーヒーを楽しめればいい。DIYはしない。大型犬も飼わない。老いた両親を招いてパーティーもしない。毎日昼まで寝てやるのだ、良い家で。開放的なリビングから漏れる光で外を煌々と照らしてやるのだ、電球色で。透明人間はここにいるぞ、のうのうと。ホワイトカラーを睨め付けてブラインドを閉める。後には人影だけが黒くぼんやり残る。空虚な夢はそこで終わる。

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