【 PSYCHO-PASS】狡噛と宜野座、六合塚と唐之杜。の話。

唐突ですが、「PSYCHO-PASS」というSFアニメについての話をします。
しますが、筆者は頭が悪いのでシリーズの全てを語れるほど理解しているというわけではありません。SF好きを自称していますが、世界観が好きで雰囲気に酔うタイプなので、理解していなくても十分楽しんでいるのです。推理小説も全然犯人とか推理できないタイプです。ただ、ご存知の通り関係性萌えで狂うタイプのオタクなので、狡噛と宜野座の関係性にはゴロゴロと床をローリングして家中綺麗になるくらい萌えて燃えました。拗らせすぎだろあの二人。

今回は、その二人の関係性と、メインキャラ同士としては唯一の公式カップルである六合塚と唐之杜(どちらも女性)について比較して語ってみたいと思います。あまり並べて語る人を見たことがないんですが、対比してみるとしんどいものがあるので、この二組。
※当初、ツイッターで連ツイしようかと思ったのですが、とんでもなく長くなりそうだったので諦めました。

まずはこの四人のキャラ紹介を簡単(?)に。
PSYCHO-PASSをあまり知らないリア友&フォロワーさん向けの解説なので、作品知っている方は全飛ばしで最後の項目に行っていただいて大丈夫です。

■「二人」のプロフィール

狡噛慎也(こうがみ しんや)
シリーズの主人公格。シリーズ一期では厚生省公安局刑事課一係の執行官だったが、シビュラで取り締まることが出来ない免罪体質だった槙島を、あくまで法で裁くべきだと主張するもう一人の主人公である監視官の常守の制止を聞かずに殺害。逃亡犯になって日本を逃れる。傭兵として海外ゲリラを渡り歩いた挙句、外務省海外調整局行動課にスカウトされ、特別捜査官として日本に帰国。
愛想はないが強い正義感と良識を持ち合わせている、野生的な印象を与える男。元々エリート監視官だったので知性も高く、語る言葉には人を惹きつけるカリスマ性がある。「一流のアジテーターになれる」とさえ評されたが、本人には人を従えたいという欲がまったくない。
刑事として鍛えていた強靭な肉体に加え、傭兵稼業で戦闘のノウハウを学び直してきたので肉弾戦では向かう所敵なし。愛煙家。宜野座と違い、長いシリーズの中でもビジュアルの変化はあまりない。年々筋肉量が増えて行っているくらい。

宜野座伸元(ぎのざ のぶちか)
シリーズのメインキャラの一人。一期では厚生省公安局刑事課一係のエリート監視官だったが、学生時代からの親友で監視官同士のバディだった狡噛の執行官落ちを止められなかったことや、槙島事件の大きなストレスに晒されてサイコパスを悪化させ、目の前で父親が殺されたのを最後に自らも執行官落ち。その時に左腕も失って父親と同じ義手になる。その後は一係執行官のまとめ役的立ち位置で活躍。後に外務省行動課に引き抜かれ、狡噛と再びバディになる。
とにかくシリーズ通してはちゃめちゃに変化があるキャラクター。見た目も言動から受ける印象も。監視官時代には「狙撃の名手」という設定はあったものの、どちらかといえばヒステリックでどんくさい印象があり、二期で急に冷静沈着な強キャラになっていて視聴者を二度見させた。狙撃性能は相変わらず高く、弱点だった体術も狡噛と共闘出来るほどに強くなっていた。それはともかく、義手はもっと大事に使ってほしい。
ガミガミ眼鏡→眼鏡オフ襟足スッキリ→ポニーテール→お団子ヘア(ロン毛)→少し切って再びポニーテール と髪型の変遷が多いのも特徴。(宜野座の髪型でその話がどの時代の話なのかが大体わかるようにしている、とは監督談)
一期の頃は父親との確執があり、父親似の目元を隠すために伊達眼鏡をかけていた。前髪が異常に長かったのも、明言はされていないが多分そのせい。

六合塚弥生(くにづか やよい)
シリーズのメインキャラの一人。一期、二期共に一係の執行官。常に冷静な判断が出来て身体能力も高くアクションもこなし、更に分析やコンピューター操作もお手の物という死角のない優秀な人。後に、元軍人の須郷が一係に加入してきたり、宜野座がゴリラ化していったりして鉄火場の出番が減ってしまったので主にバックアップ担当として唐之杜のサポートに入ることが増えた。三期ではサイコパスが良化してジャーナリストとして社会復帰しており、外部コンサルタントの立場で事件捜査に協力している。事件の核心に迫ったことで事故を装って殺されかけるが、一命を取り留めた。
外見は黒髪ロングヘアで、パンツスーツも凛々しいクール系美女。冷たい人間に見られがちだが、優しい一面も持つ。同性愛者で、唐之杜とは肉体関係もある恋人同士。

唐之杜志恩(からのもり しおん)
公安局総合分析室総合分析官。とにかくなんでも分析してくれる超スーパーお役立ち金髪グラマラス赤いルージュの白衣の女神。チェーンスモーカーで、常に細いタバコをふかしている、男の夢の詰まったような美貌の持ち主だが、残念でした、唐之杜さんの恋人は六合塚さんですから!!!!(唐之杜はバイセクシャルだそうです)
データの分析だけでなく、医師免許も持っていて執行官の健康管理も担当している。公安局は唐之杜さんを働かせすぎ。
時系列的に3期後に当たる映画版(FI)では六合塚と同じく犯罪係数の低下が見られ、社会復帰が可能に。六合塚と寄り添っているラストシーンで視聴者は号泣しつつも、唐之杜なき後の公安局刑事課、大丈夫なんかいや、と心配になりますね。絶対大丈夫じゃないと思う。

■「二人」の辿ってきた道

恋人同士の六合塚&唐之杜と、腐れ縁とはいえ恋愛感情があるわけではない狡噛&宜野座を並べるなと言われそうですが、彼らの境遇はPSYCHO-PASSの世界設定の中での人間関係を考える上で、とても似通った問題を抱えています。
それぞれの(というか主に男たちの)歴史をを振り返って見ましょう。

※筆者はノベライズなどの派生物をほとんど読めていないので、基本的にアニメ本編(劇場版含む)からの情報のみになります。狡噛と宜野座の出会いはたまたま聞いたラジオにドラマが入っていたので一応知っています。あれ、公式設定ということで大丈夫、ですよね……?(本編の脚本家さんたちが書いているという話なのでいいのかな、とは思っていますが)

【狡噛&宜野座】
①学生時代(本編スタート前)

父親が潜在犯落ちしたことで周囲から露骨な差別を受け(色相が遺伝で決まるのでは、という偏見もあった)、同級生から暴力を向けられていた宜野座を狡噛が助けたことで始まった友情。「助ける」「助けられる」という関わり合いから始まったというのが印象的。

②監視官バディ時代(本編には回想シーンとして登場)
高等教育課程を共に優秀な成績で卒業した二人は、トップエリートの王道である厚生省に入り、公安局の刑事になる。最初は別々の係に配属(その際、狡噛は宜野座の父親である征陸を部下に持ち、彼を刑事として尊敬して「とっつぁん」と呼ぶようになる)されるが、後に同じ一係の監視官としてバディを組むことになる。
猟奇殺人事件『標本事件』で部下の執行官が惨殺されたことをきかっけに、狡噛が強烈な復讐の念に囚われてしまう。犯罪捜査にのめりこみ、名前しか分からない姿なき犯人「マキシマ」を追うことしか考えられなくなる狡噛。そのせいで強靭なメンタルを持っていたはずの狡噛の色相がどんどん曇り始めてしまう。
親友の様子に危機感を募らせた宜野座は必死で狡噛を止めるが、狡噛はそれを無視して捜査を続ける。最終的に取り返しのつかないほどに色相を悪化させ、遂には潜在犯認定されて施設に隔離される。
(宜野座は同じように大好きだった父親が潜在犯落ちして自分を置いて去っていったトラウマがあるので、本当ならここで宜野座も一緒にメンタル悪化させてもおかしくなかった。宜野座、ここは相当踏ん張った)

③執行官&監視官時代
父親のことがあって、執行官に対し憎しみにも近い忌避感を持っている宜野座のところへ、かつての親友が執行官として部下に配属される。狡噛は宜野座に対して自分の執行官落ちで傷つけてしまったという負い目があり、宜野座は征陸にそうするように必要以上に狡噛に対してもキツく当たる。親友だった頃の二人はもういない──というのがこの期間。辛い。
再び一係の前へ姿を現したマキシマ(槙島)を追う中で、槙島がシビュラシステムで犯罪係数を測定することが出来ない特異体質である「免罪体質」であることが判明。シビュラの裁定を基本とする現在の刑法では槙島を裁くことが出来ない。新任監視官の常守はそれでも法をもって槙島を裁くべきだと主張したが、狡噛はシビュラが裁けないなら自分が罪を負ってでも裁きを下すと決心し、征陸から譲り受けた拳銃で槙島を射殺する。

④逃亡犯&執行官時代
槙島を射殺後、狡噛は海外へ逃亡。紛争地帯で生きていく為により実践的な戦闘技術を学び直す中で、生きる場所を奪われる人々を助け、ゲリラ活動に手を貸すようになる。
宜野座は槙島の張った罠にかかって爆殺されそうになるところを、父親である征陸に庇われて命を拾っていた。しかし、身代わりになった征陸は宜野座の目の前で死亡。宜野座自身も右腕を失う重傷を負う。
事件を追う中で元々悪化していた宜野座のサイコパスが、これが決定打になり潜在犯認定され執行官落ち。しかし、父親と狡噛という二人の拗らせ相手がいなくなったからなのか、憑き物が落ちたように穏やかな表情を見せるようになった。
後に、シビュラシステムの海外輸出に絡んだ任務で一係が東南アジアに出動することがあり、そこで一度、狡噛と宜野座は再会している。敵の傭兵のボスとの戦いにて共闘し、倒した上で宜野座は狡噛が落とした征陸のリボルバーを狡噛につきつけるが、撃つことはなく、逆手にして返した。その代わり一発殴った上で「二度と俺たちの前に姿を見せるな」と宣言して手打ちにしている。(ちゃんと生身の方で殴りました)
この態度だと、一見、宜野座は裏切った狡噛を許していないように見えるが、SS1では「親友が苦しんでいた時に力になれなかったことを後悔している」と本心を吐露している。

⑤外務省行動課特別捜査官&執行官時代
東南アジアで反政府ゲリラの活動をしていた狡噛を、外務省行動課の花城フレデリカがスカウト。実弾で武装したテロ(暴力)に対抗する暴力として特別捜査官の権限を得、日本へ帰国。
再会した宜野座は「二度と顔を見せるなと言ったはずだ」と激昂するが、合同任務ではブランクを感じさせない息の合ったバディプレイを見せる。
この任務をきっかけに宜野座と、もう一人の一係執行官須郷が外務省行動課へ狡噛と同じ特別捜査官として移籍することになった。

⑥外務省行動課特別捜査官&同じく特別捜査官
ついに、12年振りに再び狡噛と宜野座は同じ立場でバディを組むことになる。特別捜査官の身分は特例としてシビュラのサイマティックスキャンを受け付けないので、監視官無しでどこへでも行ける。
PSYCHO-PASS3のノベライズの描写を読むと完全にわだかまりが解けたわけではないが、それでもお互いを相棒として信頼し命を預けあっている様子が見られ、おそらく彼らの長い歴史の中では一番良好な関係性を築いているのではないかと思われる。
学生時代が一番純粋な友情だったのではという意見もあるだろうが、「助ける」「助けられる」から始まった関係性が、ここにきてやっと完全に対等になったと考えると、やっぱり今が一番健全なのでは。

長い!!!
ややこしい!!
拗らせすぎ!!!

【六合塚&唐之杜】
①執行官&分析官(執行官の一種)

二人の出会いは厚生省に執行官として所属してから、なので狡噛と宜野座に比べるとぐっとシンプル。
どういう出会いでどうやって愛情を育んで行ったのかは(少なくともアニメの描写だけでは)分からないが、一期が始まった時には既に肉体関係のある恋人同士だった。六合塚が感情をあまり表面に出さないこともあって、この二人の関係が刑事課(特に一係)の間で公然のものだったのかどうかは謎。
一期〜二期の長期間、この関係性は変わらず。(宜野座が最初のポニーテールになった頃まで同様)

②フリージャーナリスト&分析官
二期は監視官執行官問わずシリーズの中でも屈指の殉職率で、おそらく生き残った面々も相当メンタルを曇らせたと思われるが、六合塚は逆に色相を劇的に改善させ、なんと一般市民として社会復帰出来るまでになる。これは歴史にも例が非常に少ない特殊な例なのだそう。
色相が改善した原因などにはいっさい作中で触れられていないが、六合塚はメインキャラの中でも相当の古参で、長年凶悪犯罪に対処し続けてきたにも関わらず、なので本当に例外中の例外。他のメンバーとの違いは同じ執行官の中に恋人がいて、その恋人との関係性が良好だった為、だったとしたら大変皮肉。
なぜなら、色相改善で社会復帰するということは、潜在犯である恋人、唐之杜との別れを意味するから。
フリージャーナリストとして外の世界にコネクションを作り、公安刑事課ともコンサルタントとして繋がりを持ち続けて行き来を続けられるようにしたのも、恋人との繋がりを切らないようにする為だったのかも。粘り強く遠距離恋愛を続ける二人に、奇跡が起こる。

③フリージャーナリスト&一般人(まだ無職)
なんと、六合塚に続き、唐之杜までも色相が改善。潜在犯認定を外れ、社会復帰が可能に。
二人揃って、となると、やはりこの二人に限っては色相改善の原因が、お互いへの愛情で精神が常に安定していたから、である可能性は非常に高い。(色相の改善が見られた頃の唐之杜が、「好きな人と街を歩いてみたい」というささやかすぎる願いを口にしたの、胸がギュッとしましたね……)
恋愛というものは、決していつも安定した穏やかな関係性ではなく、嫉妬や疑念、喧嘩もするし逆に恋愛感情のせいで精神が安定しないタイプの人間もいる。それでもこの二人はそうではなかった。どんなに残酷で人間が信じられなくなって、苦しくて泣き叫び出したくなるようなめちゃくちゃな犯罪現場で死と隣り合わせで生きていても、お互いが心の支えとなって癒し合えていたのだとしたら。それは本当に凄いことで、ベストカップルと言わざるを得ない。
お二人様、どうか末長くお幸せに……!!!


■「二人」の対比

で、ここまで書いて何が言いたいのかというと、狡噛&宜野座の「二人」と、六合塚&唐之杜の「二人」がハッキリ対照的な点についてです。

共に色相が「落ちる(黒に近づく)」ことでようやく真の相棒になり、戦場という居場所を得た狡噛と宜野座

共に色相が「上がる(白に近づく)」ことで二人で生きて行く場所(公安局の外の世界のマンション)を手に入れた六合塚と唐之杜

男同士だから? 女同士だから? ゴリラだから? 頭脳派だから?
対照的になってしまった理由は分かりませんが、ともかく、まあ、両方とも幸せそうなので別にいいんじゃないかな、と思います。
特に男連中の方は、もう、すったもんだなんて言葉では言い表せないくらい色々ありましたから、どうか、いい歳なんでもうあんまり子供みたいな意地張って喧嘩はせずに(笑)今度こそ、生涯の友として良好な関係を続けてほしいですね!

おわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?