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他者(身内)に時間を喰われていく…

 自分が聞いてほしいことがあるときに、相手がなにをしていようとおかまいましにいきなり話しかけてきて、しかも、内容について誠実に考えて返事をせよと要求してくる人がいる。
 多くは、夫 次男 妹 両親 姑等所謂身内であり、滅多にないがたまには切羽詰まった友人なども…。
 もちろん、お互い様・持ちつ持たれつであるから、私が聴くことが相手の思考の整理につながり、問題解決の糸口になるのであれば、とても嬉しいことなので、できうる限りそのときしていることを後回しにしてでも聴くように心がけている。
 問題は、その為に費やす時間の長さや話しかけられた時間帯と、その話の重要性と私がそのときやその日にするべきことの重要度・緊急性との釣り合いと、話してくる相手には他者に時間を割いてもらっているという認識があるかないか、だ。

 
 ちなみに私が、基本的に可能な限り、他のタスクを後回しにしてでも最優先して話を聴くことに決めているのは、長男が電話してきたとき。長男がわずか15歳で他県の高専に入学し、寮生活を始めたとき、この子からの連絡にはなにをおいても最優先で向き合うと決めた。
 今は遠くに住んで家庭を持っているが、たまに連絡してくる。着信履歴に気付くと、できるだけ早く連絡を返す。
 長男が連絡してくるときというのは、ほぼ例外なく相談相手が必要なときだ。そして彼が電話してくるときは、そのときでなければ時間がとれず、余裕がなく、そのときに対応しなければ間に合わないような切羽詰まった心境にあるから。相談してくる内容は、可能な限り問題点や聞きたいことが絞り込まれており、加えて多くは私自身がある程度専門知識を持っている分野に関する質問であることが多い。また、彼自身が、『他者の時間を使わせている』という意識を常に念頭に置いている。彼が大学の学部生だった頃、同じ研究室にいた博士課程最終年次だった先輩が
「他者に話しかけて自分の話を聴いてもらうときは、自分はその人の時間を使っているんだ。なのにろくろく論旨もまとめず、何が言いたいのかわからないような話を延々とするのは失礼だ」
と常日頃指摘し、そのことについては自分にも他人にも厳しかったのだという。
 まあ、そうは言っても親子だから、互いにたわいもない話もするわけだが、それも含めて互いに、心のメンテナンスとして必須なことなので。電話を切るときに、必ず、「ありがとう」と言ってくれるので、「いつでも聞くよ」と自然に返事が口をついて出る。


 次男の場合は、私が何に手を取られていようが関係ない。本人の頭の中で整理がついていない話を、行ったり戻ったり逸れたり繰り返したりしながら私のあとをついてきて破れ鐘のような大声で話す。何時間でも。ちょっとなにか取りに行ってすぐ戻るときなどはぶつかりかねない。相槌を要求し、ときに謎掛けを仕掛けてくる。
「えー?知らない。何?教えて?」
ではダメ。
「なんだと思う?いいから言って!!」
私が自分の仕事関係の調べ物をしていてもおかまいなし。ましてや、ドラマや映画のビデオ鑑賞中なら、観るのを諦めて電源OFFするしかない。
 まあ、いい。役に立つなら。
 ただねえ…。私が、彼に用事があって話しかけたときに、彼が自分の仕事関連の調べ物中だったり、リアルタイム配信を視聴中だったりすると、
『剣もほろろ』という言葉を使って短い文を作りましょう。
という、昔の義務教育時代の国語のテスト問題が書けそうな対応に遭う。
 なのに少し後に彼の用事が済んだというので、私は否応なしに、あおぎり高校の中では誰がいちばん好きでそれは何故かなどという演説を聞かされていたりするのだ。
 先日、次男の話があまりに長く続くので思わず知らず口をついて
「まだあるんかい」
という言葉が飛び出しており、
「あるよ!!」
と、逆鱗に触れてえらい抗議に遭った。
 だって私の時間がどんどんとられるんだもん。
 私は私のメンテナンスの時間が必要なんだもん。
 

夫は、次男と一卵性双生児のような性格だから、2年くらい前に3500円払って受講していた業務関連のZOOMセミナーの真っ最中に電話してきて(当日単身赴任中だった)、有料セミナー中であることを告げたにもかかわらず、
「ふーん。でね、でね!………………」
後半1時間は受講を諦めるしかなかった。顔出し受講が条件の少人数セミナーだったから、電話応対中の様子が丸見えなわけで、理由を説明して退席。まだ安価なセミナーでよかったがもったいなかった。夫が話をやめるときは、なにか自分の方にやりたいことや出かけたい用事ができたか、眠くなったか、だ。これまで何度夫の話の聞き役をしていていきなり
「でね、もう寝ていい?」
と言われたことか。

妹からの相談は、こちらからの提案についてはたたき台として否定する為の存在なので、
「どうしよう」
と言われて
「こういうのは?」
と答えると
「いや、でもね!」
と、言下に否定されることになっている。そのやりとりが、延々と1〜2時間ほども続く。否定されるために意見を訊かれるのもなかなか疲れるものだ。

 両親とシュートメには、相手の話を聴くという概念が存在しないので、こちらから目的があってかけた電話であっても、向こうが好きなだけしゃべって、不意に切られる。本来の電話をかけた目的は伝えられないままに。



 私は、noteに書く。書く作業により、考えを整理する。書く作業は私の場合推敲を伴う。ということは、いきなり誰かを相手にしゃべっても伝わるまい。
 誰かに話すときは、ある程度間まとめる。自分のかかえている問題は何で、相手に求めるのは何か。知識を教えてほしいのか、気持ちを聞いてほしいのか、意見を聞かせてほしいのか。


 …………………で、だ。
 
 私の身内の場合は、話し続けることで気持ちを整理するという目的が多いようだが、夫 次男 妹 両親  とシュートメよ。


少しは勘弁しておくれ。

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