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【神川モノガタリ#2】「梨農家のムスメふたり」が二人三脚で営む梨のロースイーツ店|梨農園カフェここはな

実家である「安達彰梨園」の直売所に併設している「梨農園カフェここはな」さん。岩崎真理依さん(右)と尾川紗耶香さん(左)の姉妹が営む同店では、実家の農園で収穫された梨を使って、ロースイーツやカレーなどを提供しています。神川町の名産である梨を使用して、街を活気づけたいと挑戦するお二人にお話を伺いました。

神川の梨農家で育った幼少期

岩崎さん「私たちの祖父母の代から梨農家を始めたんです。なので、この梨農園は開業してから75年ほど経ちます。当時は、町おこしの一環で梨栽培がさかんに行われていたそうです。最盛期には、120件から160件ほどの梨農家が丹荘エリアに集まっていたと聞いています。私たちの梨園は両親に受け継がれましたが、近隣の多くの梨農家は年月が経つにつれて次々に廃業していきました。現在は、わずか40件ほどしか残っていません。

私たちも小さいころから、8月の梨シーズンになると梨を紙で包む作業などを手伝っていました。子どもがやっても役に立たないですよね(笑)祖母は直売所のお客さんに得意のぬか漬けをおすそ分けしたり、おしゃべりをしたり、直売所は近所の人との交流の場にもなっていましたよ」

離れてはじめて気付いた、この街の魅力

――実家である梨農園のことや幼少期の直売所での思い出を懐かしそうに語ってくださったおふたり。しかし、学生時代は早く都会に出たいという想いを強く抱いていたそうです。

岩崎さん「「こんな田舎嫌だ!」と思い、就職が決まると同時に飛び出すように神川を出ていきました。都会に出たいという想いがあったので、東京で福祉の仕事に就いたんです。憧れの東京での暮らしが始まりましたが、当時20歳だった私は、料理の仕方もなにもわからずまともに食事を取れてもいなかったので、すぐに病気になりました。食生活の乱れも大きな原因だったと思います。人の多さや空気の違いもあったかもしれません。

その時にはじめて、生まれ育った神川の魅力に気付きました。実家の周りには農家も多く、いつでも新鮮な野菜を食べれていましたし、空気もきれいで、町内には顔見知りが多かったので人とのつながりも強かったんです。神川を離れてから、こんなにもいい町だったのかと故郷の良さを改めて発見できました」

尾川さん「私は31歳まで神川町にいました。だからこそ神川町の良さが全然わからなかったんです。けれど姉と同じように、神川を出てから初めてこの町のよさがわかりました。自然豊かで、空気も澄んでいて、のどかな環境、そして野菜も沢山とれる。実は、私は野菜を買うという感覚をあまり持っていませんでした。野菜は収穫するか物々交換するもの。と捉えていたんです。また、町内会などもさかんで横のつながりが強かったため、町内に顔見知りが多かった。歩いていると誰かしら知り合いが声をかけてくれる。なので、子どもにとっては悪さをしづらい環境ですよね(笑)」

神川を盛り上げたい!姉妹でお店をオープン

「安達彰梨園」に併設する形で「梨農園カフェここはな」をオープン
直売所で梨を購入した人もゆったりできるカフェの店内

―—町を出たことで初めて神川町の魅力に気付いたおふたり。生まれ育った神川町を盛り上げたいという想いから、2022年4月に実家の梨直売所に併設する形で「梨農園カフェここはな」をオープン。

岩崎さん「ここ数年、近隣の梨農家が次々に廃業していくのを目の当たりにして、「このままではふるさとの景色がなくなってしまう」と姉妹で悲しくなったんです。あんなに盛り上がっていた「梨のまち」が衰退していくことに歯止めがきかなくなっているという焦りも感じました」

尾川さん「どうにかして町の衰退を食い止めたいと思いました。また、幼いころに直売所でお客さんと交流していたおばあちゃんの姿を思い出し、みんなで集える場所をつくりたい!という気持ちもあったので、直売所に併設するカフェを作ることにしたんです」


看板メニュー「神川梨のローケーキ」は老若男女みんなが楽しめるヘルシーなスイーツ

岩崎さん「カフェのメインメニューは、梨のロースイーツです。ロースイーツというのは、小麦粉、卵、乳製品を使わずに、生のナッツ、ドライフルーツ、メープルシロップ、ココナッツオイルなどを使用したものです。焼かずに冷凍庫で固めているので、アイスケーキみたいな感覚で食べることができます。7大栄養素が摂取できたり、血糖値の上昇を抑えることができるなど、とても健康的なスイーツなんです。上京した際に、不規則な食事によって体調を崩した経験から、栄養学を学んだので、そのことも商品開発に生かされています。ただ、ロースイーツの認知度はまだ低いので、販促には苦労していますね」

梨の廃棄を減らし、梨農家をサポートしたい

――ロースイーツをメインに展開するお店のメニューには、神川梨もふんだんに使用しているそうです。地元の梨農家を応援したいというお二人の気持ちが強く伝わってきます。

岩崎さん「お店のメニューには、従来であれば廃棄されてしまう梨を積極的に使用しています。多くの梨農家では、規格外、少し傷がついている、売れ残り、形が悪いなどの理由で、1年間手塩にかけて育てた梨を廃棄してしまうんです。味は基本的に一緒なのに、本当にもったいないなと感じます。そこで、このような梨を商品に活用できないかと考え、梨ケーキや梨ジュース、カレーやピクルスなどに使うことになったんです。
消費者の方は、こんなにも梨が廃棄されていることは知らないと思うので、もっと伝えてもいいと思ってます。そうすれば買いたいという方もいるはずだと思うんですよ。
カフェの売上は、町内の梨農家の苗木を購入する費用などにあてたいと思っています。新たに苗木を植えることで、次の世代につながるのではないかという想いから構想している取り組みです」

梨と神川町の魅力を伝えていきたい

尾川さん「今後の展望としては、近所の人が集ったり、直売所に梨を買いに来たお客さんたちがゆっくりできる場所にしていきたいです。あとは、アンテナショップとしての役割も担えればいいなと思います。神川町には知られていなくてもおいしい居酒屋さんとかも多いから、みなさんに伝えたい」

岩崎さん「それと「1年中梨を食べることができる場所」にもしたいです。梨のシーズンは8月から11月くらいなので、それ以外の季節は食べたくても手に入れるのが難しいのですが、私たちのカフェでは「晩梨(おくなし)」という種類を使用することで、1年中梨のスイーツを楽しめるようにしています。スイーツ以外にも梨を使ったレシピを継続的に考案していて、これまで累計30品目ほど作りました。梨のよさを活かした商品をこれからも考えていきたいです!」


取材後記

生まれ育った神川町への想いと、できることをとことんやろうとするお二人のエネルギーに圧倒されました。また、神川町を語る上で、なくてはならない存在である梨のよさをより多くの人に伝えていこうとする姿が非常に印象的でした。小さい子どもからご年配の方まで楽しめるという、看板メニューの「神川梨のローケーキ」は、ひんやりと美味しく、食べ応えがあるのに胃もたれはしない、なんとも新しい形のスイーツです。
神川と梨を堪能できる「ここはな」へ、ぜひ訪ねてみてくださいね。


店舗情報
〒367-0245 埼玉県児玉郡神川町植竹795
営業時間:土日 11:00~18:00(L.o.17:30)/ 金 11:00~16:00(L.o.15:30)
定休日:不定休(詳しくは、Instagramをご確認ください)
店舗URL:https://nashinoencafe-cocohana.com/


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