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食洗機/一周忌/1970

5月12日

朝6時を少し回った。近所の24時間営業のスーパーとコンビニを梯子して息子たちの朝食を購う。長男は苺のフルーツサンド、次男はファミリーマートのチョコクリームが挟まったクロワッサンが食べたいのだという。
スーパーの入り口で電源だけ入ったスピーカーが低音を吐いている。昼間はずっと軽快なスーパーのテーマソングが流れているおかげでこのノイズには誰も気付くことがない。脈拍の2倍ほどのテンポの、指先でマイクを叩いたときに似た音を延々聞いているとだんだん急かされるような気持ちになって、自然と足も早まる。
ここのスーパーの苺サンドは毎朝2つしか売り場に出てこない。この時間ならまだ2つとも残っているだろうと思ったらラスト1つだった。日曜日の早朝、おそらく5時台に買われていったであろうサンドイッチの片割れのことを思う。真っ白な食パンに挟まれ、生クリームを周囲にまとった小ぶりの苺の断面が3つ並んでいる。2つ入り375円。誰が買うんだこんな高いの。

家に帰ると玄関にむっとする空気が漂っている。靴箱をリフォームした際に元あった鏡を取り払ったため玄関用に姿見を新調したのだが、昨日の深夜から降り出した雨の湿気も相まってその梱包の段ボールがいやな匂いを発しているのだ。
えー、ハズレの段ボールって率直にうんちの匂いがしないですか。僕はこれが本当に苦手で、例えば犬のうんちやおしっこなんかはもうそういうシンプルにくさいもの、くさくて当たり前のものとして捉えているのでまだ我慢ができるんだけど、くさい段ボールってそうじゃなくて、「自分、生活必需品ですけど」ってスンと澄ました顔をしながら、しっかりうんちの匂いをさせてくる。
お前、ほんとさあ、何なんだ本当にお前は。

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一昨日の夜、食洗機が聞いたことのない警告音を発して、うんともすんとも言わなくなってしまった。メーカーに修理を頼むと最短で日曜、つまり本日の午前中には訪問してもらえるとのことだったので、二つ返事でお願いした。食洗機があるときとないときでは食器を使う勢いに雲泥の差が生まれる。だって、ない場合、最終的には自分の手で洗わないといけないんでしょう? それなら、そんなの、できるだけコップもお皿も使わない方がいいじゃないですか……。
この2日で、一度の食事に使う食器の数に消極的になると、それに比例して卓上の華やかさが劇的に落ちるのだということを強く実感した。

華やかさを欠いた食卓の例

修理の人が来るのに玄関に段ボールやら梱包材があるのはちょっとね、ということで、玄関からリビング、キッチンまでしっかりめに家の片付けをして、髪を切りにいくついでに、くさい段ボールをリサイクルボックスに放り込むことにした。
8時半、いつも利用している1500円カット前に到着。9時営業開始なので流石に先客は居らず、開店と同時にサービスを受けて15分で退店することができた。帰りがけ、近くの古紙回収ボックスにくさい段ボールを放り込む。ミッション完了である。

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午後からは昨年亡くなった祖母の一周忌の法要に参列した。身内だけの非常に小規模な法事。ゴールデンウィークにも一緒に遊んだ、もうすぐ2歳になる姪が僕のことを下の名前呼び捨てでインプットしてくれていて面白かった。
営業先でもそうなんだけど、痛風発作の体験談は親戚周りに対しても鉄板でウケまくる。ある年代以上の人々とは健康診断の数値と薬、あと痛みの話をするだけで厚い連帯を生む。幸いにしてあれからあのヤバい痛みは訪れていないが、多分もう十分元が取れているのではないだろうか。

今回お経をあげてもらった住職がいうには、法事の場では故人の思い出話をすること、あとは故人の孫たち、ひ孫たちが健やかであること、それ自体が良い供養になるのだそうだ。
祖母との思い出として、父と叔母が若かりし頃の祖父母に連れて行ってもらったという大阪万博の話を聞いた。僕の祖父はベジータみたいな人で、自分の子供(僕の父のことだ)とすらほぼ手を繋ぐことがなかったんだけど、流石に死ぬほどの大混雑だった万博会場でははぐれないように手を繋いだんだそうだ。いやそれ祖母の思い出じゃなくて祖父の思い出じゃないか。
祖母が健在なうちに、そんな祖父との馴れ初めとか、どんなデートしたとか、もっと聞いとけば良かったかなと思う。父や叔母はそんな話むず痒いだろうけど。
仏間でお経をあげて、お墓に参って線香と花を供えて、折りをつつきながら小宴をして、解散。

あ、食洗機はちゃんと直った。出張修理費込みで15000円くらいしたけど、新調したら35万円くらいかかるらしいので安いものだと思う。なんか調べたら食洗機って普通に使っても10年が寿命らしいんだけど、洗い物に年間3.5万円払っている計算になる? 100年壊れず動いて欲しいんですけど……?

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余談です

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