見出し画像

彼女とわたし

3日前の夜、彼女に電話して、一昨日の仕事終わりに電車で向かいました。

彼女は彼女で、誰がどう考えても一大事の真っ最中にいましたが、わたしはそれを無視しました。彼女の大変さを気遣うよりも、自己中心を優先させました。それで嫌われてもいいと思ったのは初めてかもしれません。

半年以上ぶりに会った彼女は、あいかわらず危なげで。

彼女の家にはわたしよりもよっぽど付き合いの長い友達や叔父がいて、てっきり彼女とその恋人だけかと思っていたわたしは戸惑いましたが、彼女の恋人は長い散歩に出ていると聞き、安心もします。

しばらく取り止めのない話をして、恋人はもうどこかに泊まっているのではないかと話しはじめたころに帰ってきました。べろんべろんで。
軟体動物かと思えば、今度は過呼吸を起こし、次には叫びはじめました。

驚きはしましたが、彼女や恋人を取り巻いている状況を考えればそうなるのと無理はないかもしれない、と考えることもできました。

でも、彼女がその恋人を慰めたり介抱しているのを見て、わたしは自分が考えていたことを現実にすることは不可能だと、諦めてしまったんです。彼女に対する感情はほとんど変わっていないし、恋人を妬む気持ちも変わらずあるけれど、彼女の型枠にはまることも、型枠を変えることも溶け合わせることもできないと思い知りました。

翌朝、彼女とわたしは少しだけ2人になったときに彼女は聞きました、変わらないのかと。
わたしは上手く答えられず、2人の間に入ることはできないということはわかったとだけ答え、マスク越しにキスしました。思っていたものと違って、不織布の感触しなかった。

帰りの電車や、家に帰った後に考えましたが、感情がわからなくて、ぐちゃぐちゃはしているけれど、表面にあるのは無です。日記を書こうと思ったけれど、言葉も浮かびませんでした。そのくせ頭だけは冴え冴えして眠気は一向にこない。

そして、寝不足の頭で出社していつも通り働いて、お昼休み。
でも、いつもと違ってお弁当にウィンナーがあると思っても楽しみの気持ちが欠けらも起こらないことに気がついて、自分が落ち込んでいることをやっと理解しました。落ち込んでいるし、悲しんでいる。でもやっぱり失恋かどうかは断言できませんでした。だってわたしが知っている失恋の感情とは微妙に違うんだもの。でもやっぱり失恋なのかしら。卒論でも生活でも愛や愛情については平均以上に考えているはずなのに。

いつも、気がつくのが遅すぎて。
あの時ちゃんとわかっていれば、マスクを剥ぎ取ってやったのになぁと、会社の休憩所で息を整えました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?