[編集者座談会]『Melt』Vol.2の振り返りと漫研の行方(後編)

『Melt』Vol.2の制作に携わった編集部の学生が、制作の感想や編集後記には書けなかったことを座談会形式で語り合いました。(後編)

参加メンバー:佐藤タキタロウ(洋画コース4年)、和田裕哉(文芸学科4年)、足立大志朗(文芸学科4年)、鈴木龍之介(文芸学科4年)、佐藤雪名(文芸学科3年)、中居望々香(プロダクトデザイン学科2年)、山田風人(日本画コース1年)
構成:編集部

〈前編はこちら〉


違和感を良いものとして捉える

鈴木:ここからはサークルとしての漫研というか、そういう話をしていきたいと思うんだけど。どうでした? 実際入ってみて。

山田:編集後記にも書いたんですけど、最初は漫画を描きたいと思っていました。でも描いたことないし描き方も分からないからちょっと間に合わないなあと思って。じゃあ何しようかなと思ったら、編集が募集されてるよというのを知ったので、これに入って編集作業をすれば、漫画が出来上がっていく様子も見れて勉強できるなと思って。漫画をネームの段階から選ぶのもあって、どれが面白いかとかそういう自分の判断が信用できないというか、漫画に関しては読むだけの人なので不安があったんですけど、さっきの話でもあったように、会議で意見が割れて、色んな漫画の評価の仕方があるんだなと知れたことは、いい勉強になりました。

雪名:年の近い人たちと一緒に作業したり、文章のことでなんやかんや言ったり、のびのびとできたし、あと何より人数が多いですよね。みんなでこうやってワイワイ編集について話せるのってすごく嬉しいことだなって思ってますね。

鈴木:年が近いとね、まだ反論の余地があるというか、年上の人から言われると含蓄があるから、どうしても正論のように聞こえちゃうからね。

中居:私も編集後記に書いたんですけど、漫研に入るのすごい迷ったんですけど、編集だけでも参加していいよってのが私の中で決め手になりました。漫画も批評も書けないんですけど、編集やりたいという気持ちだけあって。もしこれが普通の漫研みたいに創作と編集の両方を求められる感じだったら私は参加できなかったなって思います。

和田:3年生以下はスタートからコロナ禍だったわけじゃん。サークルも、存在はしてるけど活動してないとかで、大学のイメージと違わなかった? 俺らの時はもっと色々なサークルが動いてて、毎週本館とかで活動してたんだけど、コロナで壊滅的になっちゃって。人数の多いサークルやチュートリアルは残ったんだけど、学生だけがやるようなサークルは完全に無くなっちゃったんだよね。そういう中で漫研がスタートしてるってことはどう映った?

雪名:すごくしたたかなサークルだなと。

山田:自分何個かサークル掛け持ちしてるんですけど、全然活動してないところもあるので。サークルっていうと大学生活でやりたいことの1つじゃないですか。だから普通に活動できて本当によかったなと思います。

中居:入学した時にTwitterでサークルも色々調べたんですけど、あからさまにコロナ禍で活動が止まっちゃったようなアカウントがたくさんあって悲しいなと感じました。漫研はそういう中でも立ち上げて色々なところにポスターを貼っているのが活動的でいいなと思ったし、実際今1番活動してるサークルなんじゃないかなと思ってます。

和田:それは自信を持って言えるんじゃないかと思います。小さい規模で動いてるサークルは結構あるかもしれないけど、この規模で組織体制を整えてっていうのはあんまり無いんじゃないかな。もう1個、3年生以下に聞きたかったんだけど、サークルって部員同士が仲良くなる側面ってあると思うんですよ。仲良くなるために飲み会とか新歓とか。でも、そういう「仲良く」はできないじゃん、漫研にいると。会議とか、仲良くなっちゃうと言いたいことが言えなくなっちゃったりするから。面白くないと思ってる漫画を、関係崩したくないから「これ面白いよねー」って噓ついて、実際は納得できないよりは、その場で喧嘩腰になった方がいい。最終的に「良いものを作る」っていう目標だけ共有してる人たちが集まるサークルもあっていいと思うし、僕はそっちの方が芸工大には必要なのかなって思うので。だって、みんなあんまり仲良くはなれなかったでしょ。

一同:(笑)

雪名:でも漫研としては正しい在り方だと思います。

タキ:多分みんなどれだけ漫画の話をしたことがあるかという話でもあると思うんだけど。基本的に違うことを言うのよ、人によって。だから、違うことは絶対に悪いことじゃないんでというカバーだけは常にしてるし。違うところから面白いものが生まれるから、読んだ時に違うことを発見するのが大事っていうのが漫研的コンセプトで。ここまで見てる限り美術科と文芸学科にある大きな違いっていうのがあって、美術科はもっと個人と個人の距離感が広いなーと思ってる。特に教え方が描いている中で何かを見つけようっていう方針で、どんどん見ることや読むことから離れていく節がう美術科にはあるよね。そういった時に読んで違和感を見つけようと、美術科の人にこそこういう活動に触れてほしいなと思うし、その違和感を良いものとして捉えてくれるなら僕は嬉しい。それをどんどん見つけるためにこういう活動に顔を出してほしいなと思う。

中居:プロダクトとかも、個人の制作はみんな一生懸命やってるしクオリティ高いですけど、グループワークになると遠慮というか「それちょっと違くない?」と言いづらい雰囲気で困ってました。編集会議ではみんな全然遠慮してなくて、じゃあ私も遠慮しなくていいかと思いました。

タキ:さっきの話に共通するところがあるんだけど、文芸の特殊さってあると思うんだ。どこの学科とも近いよね。図書館の上にあって、元々図書館がどこの学科からも行きやすい場所に立地しているわけで。美術科って図書館側に行く用事が基本的にないから、デザイン工学部側の人たちのこともよく分かってないし。文芸棟で漫研のことをやる時にようやくデザイン工学部の人が通るとか知り合いと会うとか。他学科と交流する機会が漫研を通して増えたのはあるよね。それは文芸の人が気づいてないであろう文芸の魅力だと思う。

足立:地政学的な意味でのMelt(融解)だね。

批評がコミュニティを強くする

タキ:やっぱり批評に触れるっていうことはやっていってほしい。他人の思考を見ることで、自分のなかで確定した、一つのマンガの知らない一面を見ることができる。平面から立体になる。それをたくさん知ることができる面白さっていうのがある。『Melt』は入門編だよね。

和田:特別寄稿の2人はプロだけど、学生は挑戦するっていうこと目的としてやっていいと思うんだよ。プロが読んだら及第点さえ与えられないくらいかもしれないけど、やらないよりはやったほうがいいし。

タキ:ここで声を大にしたいのは、芸工大生が作っているものはプロから見たら及第点すら与えられない。

和田:学生が作るものなんて、プロや世間的評価からすれば全部基本「ゴミ」なので、「ゴミ」作ってうだうだするな、と、よくゼミでは言われる。泣きながらうなずいてる。

タキ:先生がそれを言えない時もあるよね。本来、学生のレベルは達してないことを認め合って、でも挑戦して、ステップアップするっていう。

和田:99%の「ゴミさ」の中に1%の光る作家性を育てていく。それが卒業するまでに2%、5%、10%くらいになればいいよねって話もされるんだよね。

タキ:っていう謙虚さがあればこそ、『Melt』って手に取ってもらえるし、1%があるだろうってプロレベルのもの見る場所じゃないわけですよ。卒展とかも。それを自分の作品に生きるとおもうし、文芸の人は美術科の作品見てほしいし、美術科は文芸の人の作品読むべき。

鈴木:校正を通して、何回も読んで、書きたくなったよね、批評が。

和田:まさに序文で書いた狙い通りだね。批評がコミュニティを強くする。

タキ:本当はサークルというか人が集まる機会というか、仕事をするみたいな理由とか、そこを大きくした活動としてみんなに集まってもらったじゃん。そこに常に仕事があるっていう理想があって。サークルとして一番健全で理想的だなって思うことは場所があること。今回は文芸棟を場所として勝手に集まって勝手に解散して、いろんな名目を使ったけど、でもまあ本当は場所欲しいよね。
 
和田:今は『Melt』の制作がメインだけど、これからはコミュニティとしての側面がもうちょっと強く欲しいので。
 
タキ:それは定例会みたいな縛りじゃなくて、今この作品が熱いからこの作品について話してみようぜとか。そういう場所として。
 
和田:そこから芽が出て、今後の企画に繋がっていくと良いね。
 
〈おわり〉

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