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9年ぶりの釜山(2)

 QUEEN BEETLEは赤かった

 9年間で変わった釜山と変わらない釜山の話を続けます。話は前後しますが、まず変わっていたのは高速船でした。私たちは釜山に行く時には新幹線で博多へ行き、博多港から釜山までBEETLEという高速船で向かうのを習慣にしていました。なにしろ釜山は港町ですから、船で出入りするのが相応しい。とても旅情があるし、ロマンチックです。その高速船が、今回、QUEEN BEETLEという真っ赤な洒落た大型三胴船に変わっていました。定員は約2.5倍になったそうです。オーストラリアで造られたそうですが、JR九州の船ですから、デザインは有名な鉄道デザイナーの水戸岡鋭治さん。外観だけではなく内装も格好いい上に座席もゆったりしていて実に快適な船旅でした。残念ながら速さは増していませんでしたが。

博多港国際フェリーターミナルで
スタンダードクラスの船内
釜山港国際旅客ターミナルで

 西面でデジクッパを食べる

 次は変わらない釜山の話。今回私たちは、釜山の繁華街で、釜山駅にも海雲台に行くにも便利な西面(ソミョン)に泊まりました。家内が予約したのは、今回初めて泊まる、ソラリア西鉄ホテル。昨年ソウルで泊まったのと同じ系列のホテルです。どうやら昨年泊まって気に入ったようです。日系ホテルはなにかと安心ですから。西面の街は、ロッテ百貨店や地下のショッピング・モールを含めて、記憶のままであまり変わっていませんでした。今回は西面で三泊しましたが、夜遅く到着した最初の晩を除いて、二晩続けて夕食をとったのが、ホテルから近い西面デジクッパ通りでした。デジクッパ(テジクッパとも言う)の有名店が何軒も並んでいる観光客にも有名な通りです。ここも昔のままでした。

 以前、西面に泊まった時に行った店は「慶州(キョンジュ)朴家クッパ」という黄色い看板の店でした。たしか、朴槿恵さんが大統領に就任した年だったと思います。店の外から覗いたら朴槿恵さんが訪れた時の写真を飾ってあったので入ったのだったと記憶しています。今回行ったのは、初めは「松亭(ソンジョン)3代クッパ」、二晩目は「浦項(ポハン)クッパ」でした。どちらも有名店です。デジクッパというのは豚肉で出汁をとった淡泊なスープに好みの味噌やニラや塩辛などの薬味を入れて自分好みに味を調えるものなので、店によって味が違うということはないはずなのですが、家内はポハンの方が気に入ったようです。店の雰囲気もあったと思いますが、粗雑な舌の持ち主である私には両店の味の違いはわかりませんでした。

ソンジョン3代クッパの店頭で
同店のデジクッパ
ポハンクッパの店頭で

 というわけで、西面デジクッパ通りは昔とかわらなかったなと思って帰ってきたんですが、帰宅後に過去の写真を見て驚きました。どうも店の配置が変わっている。かつては浦項、朴家と松亭3代が3軒隣同士だったようなのに、今回はそれぞれ離れていた。店舗も大きくなっているようです。昔と変わらないと思っていたこの通りにも、どうやらドラマがあったようです。そうですよね。もう、前回来てから10年以上経っているのだし、その間にはコロナ禍というものがあったんですから。

2013年のデジクッパ通りにて

 釜山駅から国際旅客ターミナルへ

 次は変わった話。釜山国際旅客ターミナルに着いた時はもう夜で、周囲の景色はよくわからなかったんですが、それでもターミナルから釜山駅まで動く歩道のある空中回廊でつながっているのを見て、時間の経過を実感しました。私たちが記憶しているターミナルはまだ北港の埋め立て地に完成して間もない頃で、釜山駅との間には何もなくて、釜山駅に行くにはシャトルバスに乗るかスーツケースを転がして歩くしかありませんでした。ところが、博多港へ帰る際にじっくり辺りを観察してみると、なんとここにも巨大な塔のようなビルが2本も立っているではありませんか。他にも建設中のビルがいくつかありました。確かに9年前、この埋め立て地が、将来、釜山の副都心になるという予想図を見た記憶がありますが、どうやら計画は着々と実行されているようでした。それにしても、この2棟のビルも巨大ですね。後で調べたら60階あるそうです。高さは約200メートル。もっと高く見えました。名称はヒョプソンマリーナG7。レジデンスなので、私たちも宿泊できるそうです。高層階からの景色はさぞ素晴らしいでしょうね。内部には図書館もあるとか。それにしても大きい。釜山駅前から見てもビルの頭頂部が覗いていました。というわけで、今回の釜山旅行は終了。釜山は大阪・関西万博の次のEXPO2030の開催地に立候補していましたが、サウジアラビアのリヤドに敗れました。オイルマネーの力というより、アジアで二回続けての開催は難しかったようです。いずれ釜山はまた立候補するでしょうが、たぶん、私たちはその万博をこの目で見ることはできないでしょう。万博なんて開催しなくても、釜山は十分魅力的な都市だと思います。

2015年 旅客ターミナルから釜山駅をのぞむ
マリーナG7
釜山港国際旅客ターミナル
変貌した釜山駅前の広場から後方のマリーナG7をのぞむ

 福岡・天神で考えたこと

 私たちにとっては釜山と福岡はワンセットなので、最後は福岡の話題を。釜山から博多港に戻って、福岡で一泊しました。翌日、午後には新幹線で大阪へ戻る予定なので、午前中に天神に行きました。建築ファンの私は、現在、福岡・天神地区で進行中の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」にかねてから関心があったんですが、この日はその最初の成果というべき「福岡大名ガーデンシティ」を見物に行きました。いやあ素晴らしかった。これはこの地にあった大名小学校の跡地を再開発した複合施設プロジェクトなんですが、リッツ・カールトン・ホテルが入居したタワービルの門のようになった下層階の隙間を抜けると緑の芝生広場(人工芝ですが)が拡がっていました。なによりも驚いたのは、そして感動したのは、小さな子供達がその芝生の上を楽しそうに歓声をあげながら走り回っていたことでした。なんと、小学校の旧校舎の後に保育園が入居しているんですね。しかも、この複合施設にはオシャレなレストランだけではなく、公民館や老人の家といった施設まで同居していたんです。最高級のホテルと保育園が同じ場所にあるだけでも驚きなのに。実に素晴らしい。これぞ新しい都市計画のモデルだと思いました。ところで、ホテルの入ったガラスのビルの高さはというと、たった111メートルしかないんですね。いや、日本はもうこの路線でいいかと思えた瞬間でした。

大名ガーデンシティ
案内表示にワクワク

 

  

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