21世紀人間

Twitterで回ってきたRTが気になって、晩飯を食べながら「26世紀青年」を観た。面白かった。

とある平凡な軍人がコールドスリープの実験台にされ、事故で500年ほど放置される。その間に世界は知識階級が子供を産まなくなったせいで低知能の人類が増え、500年経つころにはマジのバカばかりになっていた。500年後の未来で目覚めた主人公がなんやかんやあって「世界一の知能を持つ男」として国家運営に巻き込まれることになる... みたいな話。

小説家になろう!みたいなのでよくある内政チート物かと思いきや、周囲の人間はド平凡な主人公の言うことを1%も理解できないほどの低能ばかり。知識の有無でなんとかなるレベルを越えている。

なんせ「植物がよろこぶ!」って広告に書いてあるという理由で畑に水ではなくゲーターレードを撒くようなやつらである。水は「トイレでうんこを流すためのもの」という扱いで、乳幼児でさえゲーターレードを飲んでいるのだ。

...あらすじはここまでにしておいて(気になったら観てほしい)、現代の人類も性質としては作中の民衆と大差無いんじゃないかなというのが今回の話。

例えば、「塩分の摂りすぎは身体に悪い」ということはみんな知ってるけど、それが何故かを知ってる人ってほとんどいないんじゃないか。それどころか、「OOを食べるだけでダイエットできる!」という謎の理屈を信じてる人もたくさんいる。

人類の99%以上は、「どっかの偉い誰かが言ってる」というだけで、ありとあらゆる理屈を信じちゃってるんじゃないだろうか。

26世紀青年の作中でゲータレードもどきを売ってる会社は、設定上世界人口の半分が社員として所属する一大企業らしい。「世界中がそう言ってる」というのは、「植物にゲータレードを撒く」という行動に至る理由になりそうな気がする。

人間は誰だって、「答えが既にあるならそれについて考えることを避ける」性質を持っていると思う。そうでないと人類は発展してこれなかったし、これからの発展のためにも必要な性質である。既存の答えをすべて疑ってかかっていたら、人間の寿命程度では技術を進歩させることができない。

ただ、作中のように「既存の答えがガラっと書き変わる」「答えが書き変わったことについてほとんどの人が疑問を持たない」ような状況になったとき、その性質はマイナスに転化する。その答えに疑問を持って検証し、正しい答えを見つけてそれを新しい常識として広める~なんてことができる特異個体が出てこない限り、永遠に間違え続けてしまう。

作中の民衆の性質の中で救いとなったのは、「バカだけど道理は分かる」という知能を持っていたことだ。主人公は作中の常識に逆らって物事を進めようとしたために民衆からリンチされることになったが、主人公のやり方によって事態が好転したことが分かるや否や彼らはすぐに主人公を認めて開放した。常識に反する事実が起きた、それだけで自分たちの持っていた答えを新しい答えにアップデートすることができていた。

「自分の考えを柔軟に変えられる」というのは、現代の人類でも一部しか持ち合わせていない高レベルな性質である。その性質を全人類が持ち合わせていたら大抵の宗教戦争は起こってないし、ヒトラーも毛沢東も教科書に載るようなことはしなかっただろう。

長々と書くのもアレなのでこの辺にしておくけど、「頭がいいってなんだろう」「バカってなんだろう」「はたして僕はこの民衆より頭がいいと言えるのか」みたいなことを考えさせてくれるいい作品だった。

21世紀の人間である僕たちは、作中の26世紀のバカより上等ですか?答えが出せた人は教えてください。

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