お金ではない報酬と格差

「お金について考える」というちょっと面白そうなお題があったので、連続投稿になるがタイトルについてちょっと書いてみる。

最近、こんな記事を読んだ。

企業として上流、中流向けに上のようなサービスを提供することは合理的だと思う。まず、上級品は原価が高い分上に乗せられる利益の額も大きくなるので、追加サービスを提供する原資を用意できる。その上で、「無料サービスをハックしようとする品性の低い集団」を高確率で排除できる上流、中流向けにサービスをすることで、リスクの低い運営ができる。そもそも上流中流は平均的な民度が高いので、リスクマネジメントにかけるコストを減らせる。結果、そこそこ儲かるみたいなイメージ。

ただし、小売店に上の記事のような「下流区別」が蔓延すると社会的にはちょっと困ったことになる。簡単に言えば「収入あたりの支出比率が小さくなる」からだ。

例えば牛乳。世の中には1L100円の激安牛乳も多分あると思う。そして、上流~中流の人達が買う牛乳でも1000円はしないだろう。高々400円くらいだ。下流の人達の平均所得を200~300万、上流の平均所得を2000万とするとザックリ10倍違うが、牛乳の値段は4倍にしかならない。

食品以外にもそのようなギャップは沢山あると思う。この上さらに付加サービスを無料にされると上流中流の支出比率は減り、消費税その他の税収は減っていく。社会としては困ったもんだ。(そもそも消費税とかは逆進性があるってずっと言われているが)

そうなると上からの税金の回収どころは所得税や固定資産税しか無いのだが、その常識も崩れつつあるのではないか、という思いがある。

なぜかというと、いわゆる給与所得以外の「直接金銭を渡さない報酬」を作ることができるからだ。

例えば「会社が生命保険や収入保障保険に勝手に入ってくれる」とか「会社の資産を家でも使わせてくれる(車やPCなど)」とか「海外出張に家族を連れていかせてくれて、旅費も全部持ってくれる」みたいなやつ。

これらの所得に税金をかけるのは難しい。というより支出についてできる限り税金がかからないようにする点において会社はプロなので、お上による回収が相対的に難しくなるというべきか。結果として、「収入はそこそこだけど実態として上流の生活ができる」ような状態を作ることができる。

こういうことができる企業は基本的に大企業に絞られる。小中規模の企業では節税対策コストが相対的に高くつくし、一般的に社員の平均給与も低いので個人のメリットが薄い。

累進性のある税金を取らないといわゆるトリクルダウンは機能しないし、税収が減れば下流を支援するための原資も少なくなってしまう。つまりは格差が拡大するわけで。。。

まとめると、「格差を広げる要因はサービスだけじゃないよ」「税金のかからない報酬の比率を上げることで社会がハックされてるよ」みたいな感じか。

僕の予想ではこういう動きは加速する。日本にだってとっくに「高所得者しか居住が許されない町」みたいなのが存在しているし、サービスや報酬だけじゃ済まなくなっていくだろう。

最終的には過去の階級社会が復活するんじゃないかな。上流の居住地を中心に自治権を確保したりする動きも出てくるだろうし、そうなると民主主義的な革命は起こせなくなる。そして現代では「人数で革命を起こす」ことはそもそも難しい。人間一人で他人1000人を爆撃できる時代だ。

過去の階級制度は上流が下流を世話してくれるというメリットがあったから奴隷制などが成り立っていたのだと認識しているが、上のような状況になったらそれはもう植民地に近い。そしてそれを回避する方法も思い付かない。

民主主義に僕ら下流の手が届く内に精一杯足掻くという遅延戦術を取らないといけない場面だが、日本だとそもそも下流の投票率が低かったりするから始末が悪い。みんな、ちゃんと考えて選挙行こうな。

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