見出し画像

とりとめなき56

宍粟しそうにいた。暑い。春の失踪だ。真上から照り炙られて死相が出ている。こんな事では師匠の失笑を買うてしまうが、それはそれで宜しい。さてこの天道、方位に当て嵌めるならば夏春夏が適当だろうが、如何せん春は何処にも見当たらぬ。北極星は頼りにならんから、これには天文博士も困ったものである。ほれ、藤も枯れておる。結局、ここ数ヶ月探し求めた春昼は見付からなかった。現れぬものに後刻もなにもない。云わく、春の夢の如し─ だ。春は酒呑も、やうやう瞼おちゆく今際...

RGのWorld Tour Final『Live in Japan』は小学生の頃、車中で見た。親父の買ったDVDか何かだった。映像は一曲目、玉置浩二『田園』に乗せて国際マラソンあるある、それから帰省ラッシュあるあるを歌い上げる場面から始まる。あるある云々は置いておくが、初めて聞いた『田園』のリズムは我が血肉の中に確りと種を植え付けたのであろう。一年ほど前まで、オッサン連中と店へ出掛けたときは『田園』一本担いで切り抜けてきたものだった。久々に聴いて思い出した。

ホタルイカを酢味噌で。ホタルイカ、ホタルイカ。口に出してみると足穂を読みたくなるのだから面白い。呑みすぎて、火照るといかん、寝たる床─

語呂合わせに内蔵されている、センス(意味-秩序-意識-世界)の解体とサウンド(音声-身体-深層意識-異界)への集中という二つの相補的機能は、ヒューモアもしくは自由の甘受とマジックもしくは超越への飛翔という二つの志向を同時に生み出すのである。単純化していえば、それは幼児の力がもたらす正直さ、快活であり、未開の力の発露なのだ。

『神界のフィールドワーク』
鎌田東二/青弓社

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?