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月と六文銭・第十四章(11)<先行公開>

 田口たぐち静香しずかの話は続いていた。厚労省での新薬承認を巡る不思議な事件に武田は引き込まれ、その先の展開に興味を示していた。
 議員秘書の浜辺はまべ美里みさとは担当議員のほり敏夫としおの死に関係していると思われる米国男性から話を聞こうとスケジュールを合わせた。

~ファラデーの揺り籠~(11)

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 本当に来るだろうか。浜辺は確信はなかったが、会った時に会話をすべて録音しようとICレコーダーを用意し、時々使っていた探偵に遠くから写真を撮るよう依頼して、証拠集めをやってみようと思ったのだ。
 会う当日の朝、「21時15分に宴会場・楓にいく。一人で来るように」とメッセージが入った。外のカフェやファミレスでは人目があるからビル内なのはこちらにも都合が良かったが、遠くから写真が撮れない。ホテルの建物を出て行く時に探偵に連絡して、撮らせるか、尾行して仲間を割り出すか、となってしまいそうだった。

 その晩、宇都宮にあるホテル・セントラル・イン・宇都宮で飛び降り自殺があって、いくつかの宴会が中止になり、息子・堀昭夫の後援会合同総会も中止になった。仕切っているはずの第一秘書の浜辺美里が屋上から飛び降りて死亡したというのだ。
 厚労省に数年務めた後、父・敏夫の私設秘書として秘書のキャリアをスタートし、舌禍の為、何度か厳しい選挙戦を戦うことになったり、予算委員会での野党からの質問攻めにもあったが、それらを乗り切れたのは浜辺のお陰と言われていた。遺書は見つかっていなかったが、そんな関係の敏夫議員が突然亡くなったの受け、殉死したようにも思われる事件だった。

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