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月と六文銭・第十八章(24)

 竜攘虎搏リュウジョウコハク:竜が払い(攘)、虎が殴る(搏)ということで、竜と虎が激しい戦いをすること。強大な力量を持ち、実力が伯仲する二人を示す文言として竜虎に喩えられ、力量が互角の者同士が激しい戦いを繰り広げることを竜攘虎搏と表現する。

 今回、武田がサポートした英国秘密情報部の案件で、中国側には別の策略があったようだった。陳恒心チェン・グースィンは同部に情報を提供すると言いつつ、実は中国軍の意向を受けていた。
 武田は中国人スナイパー・ティーシーと予想外の対面をしたが、ティーシーはこれを予想していたような節があった。

~竜攘虎搏~

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***在東京中国大使館***
 駐在武官・シン大佐はチェンが完全に退出したのを確認してからに話し掛けた。

「呉、姉妹への褒美は?」
「活動資金に追加して、香港の口座に入金してあります」
鉄矢ティーシーはどうなった?」
「はい、MI6に見つかりましたが、銃器不携帯の現地サポート要員だったようで、無事にそれを振り切って神戸まで戻りました」
「そうか、そのまま無事に出国してもらわないとな」
「は、南京組頭くみがしらに全面的な支援を依頼してあります」
「ありがとう、お疲れ様」

 世界中に張り巡らされている中華ネットワークは神戸にも支部がある。中華ネットワークの問題点は、所在国の現地法を遵守するよりも同胞を匿うことを優先するなど、中華街の内側などを勝手に治外法権にしていることだった。ニューヨークのチャイナタウンは特にひどく、その為、市当局はマンハッタンのチャイナタウン内での特定の商売を実質禁止していた。

 呉は会釈して大佐の部屋を出て、部屋の外で待機していた陳と合流した。二人は階段を下りながら親しくしゃべった。

「呉、気を付けろ」
「と言いますと?」
「秦大佐だ。
 アイツはお前に李姉妹を仕向けるかもしれんぞ」
「なぜです?
 私に何か不手際がありましたか?」
「ない、からだ。
 お前はよくやっている。
 いや、よくやり過ぎる。
 時には、あの美人な奥さんと時間を忘れるくらいセックスでもして、大佐の仕事を一つぐらいすっぽかせ」
「はぁ…」
「お前のためだ。
 間違ってもアイツの愛人を気の毒とか思ってはいかん。
 殺せと命じられたら、無慈悲に殺せ。
 飼い犬になれ。
 いいな?」
「はい」
「あの明華ミンファの李姉妹、お前でも敵わないかもしれんからな」
「そんなにすごいですか?」
「スピードと正確さは特筆に値する。
 俺は彼女らの動きに抗って、戦ってみようかと一瞬思ったが、二対一だったこともあり、その場で殺されるのはまっぴらだったから、今回は大人しく捕まった」

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 呉は複雑な顔をした。特殊部隊出身の自分には誰にも負けない自信とプライドがあった。
 しかし、自分を鍛えた元上官の陳劉生チェン・リウサン中佐にそうまで言わせる李姉妹は、ただのハニ・トラ要員ではなさそうだ、と呉は考え方を変えることにした。

 これまでの女性部隊というと軍事教練を受けているものの、基本的には色仕掛けで罠を仕掛けるハニー・トラップが専門だった。
 しかし、女性だけの暗殺部隊・明華は、要員選定から使う武器、知識・技量及び肉体的優位(要するにスタイルの良さ)においては段違いにレベルの高い部隊となっているとの噂だった。しかし、同じ特殊部隊員の呉にも全容が知らされることはなかった。
 そして、尾ヒレがついた話とは思っていたが、訓練期間中に手籠めにされそうになった李姉妹の一人がその教官を殺し、部隊食堂の天井から吊るして「見せしめ」にしたとの噂があった。本部直轄の特殊部隊でこのような不祥事は初めてで、本部でも対応に苦慮したとのことだったが、まさか上官を殺してタダで済むはずがないので、噂でしかないと呉は思っていた。

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***
 のぞみが目の前に置かれた金貨を加工したネックレスを手に取り、細工の細かさと重量感を確認していた。

「これ、どうしたの?」
「君に」
「どうして?」
「臨時収入があったから」
「そうなの?」
「名古屋式に言えば、資産の移転ということかな」
「じゃあ、哲也さんの資産を私に移転するために、金に換えて渡してくれているってこと?」
「まぁ、そう堅く考えず、臨時収入を山分けしているってことでいいんじゃないかな」
「ありがとう。
 純金よね、これ?」
「一応ね」
「きちんと保管しないといけないものよね?」
「錆びないようにしておけばいいよ。
 ほったらかしにしない限りは大丈夫だよ」

 武田にとっては後味の悪いアサインメントだった。当初の目的、ギリー少佐がUSBメモリを持って大使館に無事に到着したので、アサインメントは無事完了した。それに対して、報酬が払われた。また、中国のスナイパーとの対決についても考慮され、追加報酬が出された。
 しかし、武田が納得する結果ではなかった。ティーシーと呼ばれるスナイパーを取り逃がしただけでなく、面が割れた=素顔を見られたのだ。
 のぞみの胸元で輝く金貨を見る度に反省をし、気を引き締めることになるだろう。

「のぞみさん、服を脱いでごらん」
「え、今?」

 武田は答えず、のぞみが動くまで大人しく待った。

「どうしたの?」
「君の体を見たいんだ」
「え、いつも見ているけど?」
「今、見たいんだ」
「う、うん」

 のぞみはソファから立ち上がり、武田の前に立ち、ブラウスのボタンをはずし始めた。のぞみは習慣でブラジャーは右胸から外し、手で隠し、次に左胸を外すのだ。これはのぞみの体の特徴からくる習慣だった。
 心臓が左胸にあることから、女性の中には一定数だが、左の乳房が右のものに比べ大きく厚みがある者がいる。のぞみの場合、右に比べ左の乳房はいちカップ近く大きく、アンバランスな上、市販のブラジャーではどちらかのカップに合わせると他方の乳房のカップが合わなくなってしまうのだ。小さい方に合わせると他方がパツパツに、大きい方に合わせると他方がブカブカでカップがズレてしまうことに。
 下着が合わず、ずっと悩んでいたのぞみは武田にフィッティングに連れて行ってもらい、体型と乳房の形に合ったものを選んでもらえた。幾つもある組合せから、左右のカップの形を乳房の形に合わせることにより、自然なシルエットと抜群のフィット感も得られた。
 のぞみは姿勢も良くなって、自分に自信が持てた。武田のお陰で胸の形の悩み、自分の自信のなさ、姿勢の悪さからくる暗い印象も大幅に改善していた。そんな自分にしてくれた武田をのぞみは本当に好きだった。
 スカートはファスナを外すとパサッと落下した。

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「おいで」
「う、うん」

 ソファに座る武田を跨ぐようにのぞみが近付いた。武田は右手を伸ばし、自然に左乳房を包んだ。

「やわらかい」
「あん、あったかい」

 同時に口にした言葉は互いが気にしていることを表しているようだった。
 のぞみは武田の手の柔らかさ、あたたかさ、そして、優しいタッチが好きだった。
 武田はのぞみの胸の柔らかさが好きだった。武田はのぞみの左胸をプルプル振るわせた。

「あん、なーに?」
「プリンとどっちが柔らかいかなぁ、って思って」
「それはどんなプリンかにも…あん!」

 武田は唇を寄せて、のぞみの左乳首を包み、舌で先を突ついた。

「はぁん」

 武田の左手はのぞみのショーツのクロッチ部分を通過し、敏感な部分に触れた。

「私も、触る!」

 のぞみはズボンの上から武田の男根を握って上下に摩った。武田はしたかったようで、すぐに硬さを増した。胸を揉まれ、顔が上気して、うっとりしている中でも、のぞみは丁寧に武田のベルトを外し、ズボンの前を開け、下着も引き下げて、男根を露出させた。
 武田がのぞみの敏感な部分と潤いを供給し始めた女性の部分の両方を丁寧に愛撫し、準備を進めた。

「はぁん、準備、万端?」
「そうみたいだね」
「じゃあ、待たせないで!」
「腰を降ろしておいで」

 のぞみは言われるまま腰を下ろしてきた。クロッチをずらしているため、正面からはショーツを履いたままに見えるが、上半身は裸だった。

「ん、ん、はぁ~。
 なんか大きくない、今日?」
「のぞみさんがよく締まるからじゃないの?」

 のぞみは視線を下げて、体が接しているところを見た。もう武田の男根は完全に自分の中にあったので、形状は確認できなかった。しかし、いつもより大きく、いや、太く感じた。

 騎乗位の良さが分かるようになったのぞみは上手に腰を前後に振った。息が荒くなり始めた頃、スクワットの姿勢に切り替えて、武田に腰を打ちつけた。のぞみの喘ぎ声と共にパンパンパンという音が部屋に響いた。
 武田から見える景色といえば、リズミカルに揺れている胸と、唇を噛む色っぽいのぞみの表情だった。
 そして、胸元で揺れる黄金のコインは午後の柔らかい日差しを乱反射させていた。

第十八章『竜攘虎搏』・完

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