損して損とった話

たぶんどこかで一度は聞いたことあると思うんだけれど

「ご飯行こーよー すぐそこに知ってる店あるからさー」
「いや、私はいいです......」
「いーじゃんいこーよ」

こんな感じでナンパされて困っている女性
そこに颯爽と現れて
「おー!〇〇ちゃん、元気?」
みたいに割って入って
「この人、知り合い?」ってナンパ男に言って
「なんだよ、連れがいたのかよ......」って捨て台詞を吐いて逃げるように去るナンパ男

女性が
「ありがとうございます!困ってたので助かりました......」
「いえいえ、ああでもしないとね笑 何事もなくて良かったです笑」
つってまた颯爽と帰る
スマートな対応にキュンとくる女性

みたいな
トキメキサクセスストーリー

ありますよね

で、これはさっき起きた出来事なんですけど



雨模様の曇天
よく行く喫煙所に来たら
赤いチャリンコにまたがった70くらいの男性と
50中盤くらいの女性が喋っている

男性は右手に缶チューハイを持っていて
顔真っ赤っか

男性「これからさ、、、お酒、、ご飯でも、、餃子の王将、、、、行こう、、、、」
女性「・・・・・・」

呂律の回らない口で、多分ナンパしてるんやろうなって思った
何言っても女性黙ってるし、これは困ってるだろ
って思ったんだよね

滅多に無い、夢にまで見た
トキメキサクセスストーリーチャンス

じゃん

《考えるより先に体が動いていた》

じゃん

割って入った

私「まぁまぁ、なんか困ってそうだし、いいんじゃないですか?」

男性が激昂してきたら怖いな、と思いながらさ
頭の中では興のそがれた男性がいなくなってくれることを期待しながら さ

そしたら、話しかけられてた女性がえらく怪訝な目つきで私のこと見てきて
あれ、思ってた目つきじゃない


そんでこっからよくわからない

男性がゴニョゴニョなんか言ってる

女性「この人はお酒を飲んではるから・・・・・・」
男性「あ、、お酒、、、飲みに行く?お酒飲めない?」
女性「お酒は・・・飲めない・・・飲めるようになりたかった」

飲めるようになりたかった?

え?これは普通の会話してるじゃん
もしかして、この女の人、男性が酔っ払って絡んできてるのをわかりつつもそのコミュニュケーションとか観察を楽しんでたん?

女性は可愛らしい帽子を被ってた
地面につくくらい長い灰色のスウェットを履いていて、裾が雨の地面で濡れて黒くなっていた
右上の歯が真っ黒だった
どういう感情かわからない顔をしていた


もうこの時点で関わったの失敗したと思った
直感的に、スピード重視のトキサクストーリーで、このグダリ加減、良くない未来しか想定できなかった


で、こっからマジで良くない


お酒飲めないって女性が言って、男性もちょっと諦める感じになって
そのままいなくなるのかと思ったら

男性「じゃあ、、、俺はもう行くけど、この女性、君(私)頼んだからね!、、、ね!、、、このあと、、、(うまくやるんだよ!みたいなニュアンスで)」

とか言いやがった

女性「いえ、私、この人(私)のこと知らない・・・・・・」

男性「おう、、頼んだよ!、、、」

なにがだよ


この時の女性の顔見てわかった

俺、このおっさんとグルみたいに思われてる

2人で揉めてるところに別のやつが割って入って救った感じにして
その恩で相手が断りづらい感じの状態で、その別のやつが本来の目的をふっかけるタイプの

マルチ的詐欺的ストーリー

おっさんが走り去った後、女性の誤解解きたかったんだけど
見たことないくらい深い呼吸でタバコを吸いきって、すごい速さで女性もいなくなった


隣の信号が青になって
車が一斉に走り出す

ブロロロロロロロロロ

俺は立ち尽くした

これが本当のマルチエンディング
ってやかましいわ



おわり



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