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マンガMee人気作家の漫画の作り方を大公開!『誰か夢だと言ってくれ』みっしぇる先生インタビュー【作画編】

マンガMee公式noteでは、デビューを目指すみなさんへ、面白い漫画作りのヒントになる情報を発信中。マンガMeeで活躍する人気作家さんに、漫画家志望者なら気になる漫画作りのアレコレを教えてもらうインタビュー連載を公開しています。

今回は、累計発行部数140万部突破(※電子版を含む)の大ヒット作『誰か夢だと言ってくれ』を連載中のみっしぇる先生と担当編集にお話をうかがいました!

  1. 連載立ち上げ編

  2. ネーム編

  3. 作画編

と、全3回にわけて掲載してきました。第3回となるこの記事では、みっしぇる先生の作画のこだわりについてお届けします。

第1回、第2回はこちらから▼


パッと見の印象に納得するまで修正を

——インタビュー連載も最終回ですね。今回は作画について教えてください。『誰か夢だと言ってくれ』(以下『誰夢』)の作画作業はどのくらいの時間をかけていますか?

みっしぇる 約30〜40ページの1話分を、液晶タブレットを使って9〜10日程度で作画しています。

背景を含めたペン入れを1日4ページ行うことをノルマにしているので、8〜9日間でペン入れを頑張って、最後の2日でアシスタントさんに1人入ってもらって、2人で仕上げをわーっとしている流れです。

——普段使っているペンや、お気に入りのトーンなどを教えてください!

みっしぇる 『誰夢』を描く時は、こんなペンやトーンを使っています!↓

——作画環境は、いつデジタルに切り替えましたか?また、液晶タブレットはいつから使い始めたんですか?

みっしぇる デジタルに移行しはじめたのは、デビュー作『シャルロッテ!』の連載が終わって、『かみさまマンション』という作品を描いている途中あたりからです。

板タブレットを趣味用で連載前から持っていたのですが、なぜか当時は「漫画といえばアナログ!」という謎のイメージがあり……。『かみさまマンション』の途中からだんだんデジタルの方に移行しだして、線画まではアナログでやって、トーンの作業はデジタルでやっていたりしました。

液晶タブレットは知り合いの漫画家さんと作画作業しながら話していた時、その方に「みっしぇるさん、そんな安い板タブレットを使っているんですか!?」と言われたのをきっかけに買いました(笑)。本当に安いものだったので……(笑)。

趣味で漫画を書いているならまだしも、仕事として漫画を描いているなら性能のいいものを買ったほうがいいし、感覚がアナログに近いからおすすめと言われて、だったらちょっと高いけど液タブ買っちゃえと。感度が全然違くて驚きました。それから、何度か読みきりなどで練習しつつ、『ダサ彼!!』からはネームも含めオールデジタルになりました。

ソフトはしばらくComicStudioを使っていましたが、 今はCLIP STUDIO PAINTで描いています。

——作画工程の中で、一番好きな作業はなんですか?

みっしぇる やっぱり、大コマのかわいい顔をペン入れ(※下書きで描いた絵をペンで清書する作業)をしている時が一番楽しいですね。かわいい顔や泣き顔のアップシーンは、描いたあとに画面を一回閉じて、もう一回開いて、パッと見で「かわいい〜!!」と思うまで修正を繰り返します。

アプリって、スマホをシュッとスクロールして読むじゃないですか。だから、パッと目に入った時の印象を大事にしたいと思っていて、頑張って何回も描き直しています。目が慣れてしまうと、かわいいのかどうかもよくわからなくなっちゃうので……。

エッチなシーンも、そういう意味ではかわいい顔がいっぱい描けるので楽しいです。連載立ち上げ編でもお話ししたように、毎回描きながら恥ずかしくはなっていますけれど(笑)。そういうシーンは、おへそ、足指、足裏、腰なども色気が出るように意識して描くようにしています。


限りなく違和感を無くしたい——

——パッと見の印象の大事さは、ネーム編でもおっしゃっていましたよね!他に作画作業で意識していることはありますか?

みっしぇる 原稿を完成させるギリギリまで推敲を行っています。ネームが通った後でも、セリフの長さだったりコマ割りは直前まで微調整をしていることが多いです。ネームを考えている極限状態だと気づかないことも多いので……。

ネームから原稿でこんなに構成が変わることも
『誰か夢だと言ってくれ』©︎みっしぇる/集英社

仕上げ(※トーンを貼るなど原稿を仕上げる作業)の時に、線の描き直しもたくさんしています。眉毛はもっとこうしたほうがいいとか、顔はもっとこっちのほうがいいとか。それでも掲載された後に「表情はもっとこうしたらよかったな」「ここのコマ、なんだかな」と思うことは毎回あります。

あとは、手ですね。「限りなく違和感を無くしたい」という気持ちで原稿を描いているので、例えば手のアップを描く時は自分の手を写真で撮って模写しています。実際に手はこんなふうに曲がるのかなとか、コーヒーカップを描くにしても「左利きだから取っ手はこの位置に来るよな……」とか。パッと机にモノをおいたらどんなふうになるのかなど、そういうリアリティにはこだわっています。

エッチなシーンでもそうです。「この体勢になったら手はここに置くよな」とか。できる限り読む時のノイズを排除したいので、変な体勢にはならないように気をつけています。

——模写されているんですね。デッサンや模写などは漫画家になる前から描かれていたんですか?

みっしぇる 漫画家になる前はデザインの専門学校に通っていたので、その時にデッサンの練習をよくしていました。

あとは、一時期「30秒ドローイング」をやっていましたね。30秒でポーズを切り替えて、ひたすらスケッチブックにデッサンをしていました。


“完璧” じゃなくても大丈夫

——『誰夢』の作画にあたって、苦労したことはありますか?

みっしぇる ショートギャグ漫画を連載していた時は、少女漫画雑誌で連載している割には絵柄が少女漫画っぽくないな、と悩んでいました。『誰夢』を描くに当たって、その悩みを本格的にどうにかしなきゃという局面にぶつかって、その調整が大変でしたね。

はじめに『誰夢』のキャラデザを考えた時、小夜の髪型はツンツンしていたのですが、編集部から「髪の毛をかたまりで描くよりも、線数を多くしてサラサラさせた方が少女漫画らしさがでる」とアドバイスをもらったり。男子の目をもっと大きくとか、ペン入れをするとどうしても絵柄が平たくなっていたので「下絵のタッチのままペンを入れて」と教えてもらったこともよく覚えています。

あと、わたしは手ぐせで描くとかわいい系の顔に寄ってしまうので、樹など、攻めの顔を描くのは今でも苦労しています。

——少女漫画っぽさについては、連載立ち上げ編でもお話ししていましたね。絵柄に憧れる先生はいらっしゃるんですか?

みっしぇる 中村明日美子先生が大好きで、憧れです。繊細で、儚い空気感が本当に素敵で、あの雰囲気を目指して描きたいとずっと思ってます。

とはいえ、そう思っていてもやっぱり描きたいものと描けるものって違うので「爪の形を丁寧に描こう!」みたいなこだわりを、中村先生の作品に影響を受けて描いていると思います(笑)。

——爪の形ですか!?

みっしぇる はい。爪は描くか描かないかも人によって分かれると思いますが、爪があると手の向きもわかりやすいんですよね。個人的に大事に描いている部位です。

影響を受けたという文脈でお話しすると、襟足の描き方なども好きなジャンプの作品に影響を受けているな、と読み返して思うことがあります。

——次から注目して読んでみたくなりました!(笑) 読者からの反響で自分の絵柄について気づいたことはありますか?

みっしぇる 読者さんからお手紙で「かわいい絵柄ですね」と言ってもらった時に、ちゃんとかわいく描けているんだと安心しました。

自分としては連載立ち上げ編でお話したように、BLにしても少女漫画にしてもどっちつかずだと思っていたので……。絵柄に一番自信がなかったので、樹などかっこいい登場人物に対しても「かわいい」と思ってもらっていて、本当によかったです。

——それでは最後に読者の方に一言お願いします!

みっしぇる 『誰夢』は本当に色々と手探りで、不安なことばかりでしたが、思った以上に沢山の方に読んでいただけてとても光栄です……。「あの時、思い切ってストーリー漫画に挑戦してよかった!!」と今ならすごく思えます。

連載が始まって2年経っても、未だに手探りなことは沢山あるので、今「何かを描こう!」とチャレンジしている方にも、決して “完璧” じゃなくてもなんとかなるんだな……とこんなわたしを見て、少しでも思っていただければ幸いです。

色々と話しましたが「こういうところにこだわってるから意識して読んでほしい!」とかは全くなく、純粋に『誰夢』のストーリーやキャラクターたちを楽しんで、可愛がっていただけたらそれだけで幸せです。ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

——最新コミックス8巻は10月25日発売です!お楽しみに!

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第1回、第2回はこちら▼

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取材・文/戸田帆南

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