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プロ志望者は絶対に描いてはいけないマンガ。

専門学校でマンガの描き方を教えていると、思いもかけず学生から学ぶ事があります。
もちろん、学生が私に講義をしてくれるという意味ではありません。
「マンガを描けるのが当たり前になっている自分」には気付かないことを、学生の行動を通して「えっ?」と気付ける事があるということです。

専門学校には、すでにマンガを描いている「ガチ漫画家志望者」から、マンガなど描いたことがないという「マジ素人」まで様々な学生が入ってきます。

私の授業は①マンガ表現の基本を身につけること、②ストーリーを組み立てる基本を学ぶこと、③ストーリーマンガを描くトレーニングをすることがメインになっています。
「何が描かれているか」を「分かりやすくするための表現」の授業にほかなりません。
何のためにそんなことをするのかといえば、プロを目指すのである以上「読者」を意識し、描いたマンガを読みやすく伝えるという役割があるからです。

もうお分かりいただけたと思うのですが、「プロ志望は絶対に描いてはいけないマンガ」とは、読者不在のマンガです。
なんだ、当たり前じゃないかと思われたと思いますが、これができないで「マンガ家になれるものならなりたい!」と思っている人って案外多いのです。


授業を通して一通りの知識が頭には入っていても、初心者は作品を作り上げることで精一杯になり、学んだ知識は何処へやら、出来上がった作品は「読者不在」の独りよがりなマンガになっていることがほとんどです。

長年の授業を通して気付いたのは、学生達は①②③を「マンガを描くための基本」と考えているらしいことに気付きました。
その事自体は間違っていないのですが、問題は「何のためにそれを学ぶのか」がスポッと抜けているのではないか・・・という点です。

こんな事がありました。
ネームチェックの際、何が描かれているのか、何を見せたいのかがとても分かりにくいこのようなネームが学生から提出されたのです。

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