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未来をプロトタイピングするカオスなクリエイター集団Konel【前編】

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もし、人生の全てが予想可能で予定調和なものになっていたら、そんな人生はとても退屈だろう。

今回取材したのは株式会社コネル(Konel)の代表取締役の出村さん。Konelは不思議なものばっかり作っている会社だ。

例えばこちら「Braiin Music : NO-ON」。
https://no-on.jp/


これは
「脳波から音楽を自動生成する体験装置」
うん、ちょっと書いてて何を言ってるのかわからなくなるけど、そのまんまなのだ。

ところで、出村さんたちは一体なにを考えてこんな摩訶不思議なものを作っているのだろうか?

人生には予定調和を崩すエッセンスが必要

出村さんに「この会社は何をする会社なんですか?」と聞いてみたところ、登場したのがこちらの不思議な球体。

https://vimeo.com/321629233

「これはNASAの落雷観測データと接続された地球儀で、地球上のどこかに雷が落ちると緯度・経度をあわせてリアルタイムに生の雷を再現する雷玉という装置です。
僕たちはこういった不規則な現象を起こす装置をランダム家電と呼んで開発しています。」

すごい、よくわからない。
たったの100文字ちょっとに詰まっている情報量が多い。
一体なぜこんな変な商品(?)を作ったのだろうか?

「テクノロジーが進歩すると暮らしは便利になります。たとえば喉が乾く前に飲み物が勝手に席まで届けられる。
とても便利ですが、あらゆることが自動化されたり趣味に合わせたレコメンドされ続けると、予想外の出来事に出会えないし、予定調和ばかりな未来は面白くないと思い、予定不調和な現象を生活の中に注入する実験をはじめました。
まずは最も身近な予定不調和である自然現象を取り入れたランダム家電として雷玉をつくりました」

おぉ。
発想がすごい。

誰が「地球に落ちた雷を地球儀で再現しよう」だなんて思いつくだろうか。
さらに、それを”家電”と呼ぶだろうか。

雷玉がコジマに置いてあったら相当な違和感を放つだろうし、店員さんも困ってしまうんじゃないだろうか。

予定調和が過ぎると人間は"工夫”をしなくなる

しかし出村さんはこの「店員さんが困っちゃう」ような違和感こそが未来を生むために大切だと語る。

「店員さんが説明に困るような”便利じゃない機能”こそ、ランダム家電で立てた問いでもあるんです。
あらゆることが便利になりすぎると、人間本来の工夫する能力や、ひらめきの確率が損なわれるはず。
ランダム家電は便利でない代わりに、同じ空間にあることでぼーっと眺めていたり、物思いにふけったりできる。
キャンプにいって川の流れをぼーっと30分くらい眺めていたら、ハッと何か思いついたりする体験ありませんか?
あの感覚を家やオフィスの中でも再現できたらいいなと」

たしかに、テクノロジーが進歩して何でも自分の思い通りになる生活ができるようになったら毎日限界まで布団で寝ていたいし、食事も勝手に出てくるからそれで満足してしまうだろう。

そうすると人間が”工夫”をしなくなり、新しい未来が広がらなくなってしまうかもしれない。

「ランダム家電の場合は”予定調和は人間から工夫を奪ってしまうのではないか?”という問いから生まれたプロジェクトでした。
こんな風にKonelの中では”問い”がいくつもうまれ、欲望を形にするクリエイターが様々なプロジェクトを進めています。」

Konelのビジョンにはこう書かれている。
「好きか嫌いかを物差しにして、
自分が信じられるアイディアだけを生み出し、形にする」

出村さんは「予定不調和な未来」である方が予定調和な未来よりも「新しいアイディアや工夫が生まれる」と思っている。
そんな未来の方が好きだから、ランダム家電の雷玉をつくった。

なんだか少しKonelのことがわかった気がする。
けど、それで会社ってやっていけるんですか??

人数<肩書、マルチに活躍するクリエイターが集まるKonel

Konelには現在、30名以上のクリエイターが所属しているそうだ。しかし、普通の会社のように部署や固定化された職種がない。

「僕たちはこれまでもこれからも、何かに専門特化しない集団です」

と出村さんが言うKonelには複数の肩書を持つ人がたくさんいるらしい。

「デジタルクリエイターはたくさんいますがWeb専門ではないし、デザイナーもたくさんいますがグラフィック専門でもない。
人数は30数名ですが、名刺に書かれている肩書きを数えると40以上にのぼります。
今自分たちがもっているスキルだけでできることでは新しい挑戦ができないので、それぞれのメンバーがスキルを交換したり、外部の専門家から知恵を吸収して、どんどん肩書きが増えていきます。
デザイナーがプログラムを書きますし、エンジニアがコピーライトしたりしますが、凝り固まってないアウトプットが出やすくて面白い。
だからKonelには要件が固まった仕事より、課題すら見えていないけど”何か新しいことがしたい”というお題が集まりやすく、お題に合わせて毎回違うクリエイターがチームを成して取り組んでいきます。」

なるほど、だから世の中のよくある会社のように「Aさん=プロデューサー」「Bさん=デザイナー」と役割を先に決めなくても動いていけるのか。

でも、それって会社として大変じゃないですか?

「会社というものの捉え方の違いかもしれません。
一応僕は経営者ですが、メンバーのことを”雇っている” と捉えたことはありません。
Konelにいるメンバーはきっとフリーランサーとしてのソロ活動だけでも十分食っていける人ばかりですが、カオスな組織に所属してチームで活動することで、より面白く欲望を形にできると感じた人が集まっています。
実際、所属の仕方も社員だけではなく、フリーランサーや他社との兼業、インターンシップなど、その人にとって一番快適な関わり方を選んでもらっています。
僕は会社がやりたかったからKonelをつくったわけではなくて、毎日思いついてしまう新しいアイディアを最高な仲間たちと形にしつづけたいとおもって立ち上げました」

なるほど。
僕らは無意識に「会社=雇ってくれる先」と思っている部分があるかもしれない。
そうではなく「会社=やりたいことを実現するための器」と思えばKonelの不思議なプロジェクトが生まれ続ける理由にも納得がいく。

ところで…それでちゃんと稼げるんですか?

と、いうところで続きは後編!
こんなに自由なクリエイター集団Konelがいったいどうやって生まれて、これからどんな未来に進んでいくのかをお聞きします。お楽しみに!

漫画=長瀬宙夢(@nagase_hiromu
文=齋藤和輝(@Saito_M_D
編集=齋藤春馬(@st_hal_


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