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その後の轟轟戦隊ボウケンジャー:ロケット・サマー(後編)

こちらのSSは2007年05月05日に某mixiに投稿したものです。

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こちらからお読みください。

ロケット・サマー(前編)
https://note.com/manet26/n/n28bb7e34e122
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大胆にも宇宙へ向かうゴーゴーボイジャーに密航するという離れ業で明石暁とともに地球を旅立った西堀さくらは、意外と早く地球へ戻ってきた・・・懐妊したのだ。
当時存命だった牧野先生から、その事実を告げられたボウケンジャーチームの間ではふたりの(主にR18な)間柄について、様々な憶測が流れたものである。

曰く「さすがに明石もだだのボウケンバカなだけじゃあなかったってわけだ」
曰く「宇宙空間にもコウノトリっていたんだなーww、いて、ナンだよ殴るなよ」
曰く「さくらさん、どうやってチーフを追い詰めたんだろ(遠い目)」
曰く「愛ですよ、愛。愛と勇気があれば不可能は無いんですっ」

まあ、菜月としてはその辺の経緯についてはだいぶ経ってからさくらに聞いて知っているのだが・・・ひと言で言って「チーフ、ダメダメじゃん?」ってことと「無重量状態でのアルコール摂取は危険」ってことだけ言っておこうと思う。

いずれにしろ航宙船という放射線の直射をバンバン浴びる環境が妊娠・出産はもちろん子供の成長にも与えるリスクを無視することはできないという判断から、さくらは地球へと帰還し、女児を出産。その後5年間を地球上で過ごすことになる。この間は、明石も金星や火星の探索などのショートレンジでのミッションを数多くこなし、比較的よく地球に戻ってきていたが、さくらの子育てがひと段落したところで、夫婦そろって深宇宙ミッションに出発することになる。

亜光速の長期間ミッションともなれば、多少なりとウラシマ効果の影響は無視できない。現に地球時間で12年ぶりに帰還する明石は、実年齢でいまだに40代半ば、地球時間との差異は20年に及ぼうとしている。
おそらくはさくらとの年齢差も含めての気遣いであろうこの短期ミッションの連続について、菜月は・・・へー、意外と温情主義なのね、サージェス、と感じたのだが真相は知らない。

さて、「菜摘」と名づけられたこの女の子が真人の母親である。
父親譲りのボウケンスピリッツと母親譲りの直情的行動力を併せ持つ彼女を実質的に育てたのは菜月と真墨であった。ちなみに7歳のときに明石たちに送られたビデオレターには「両手に高々と伊勢海老を持って、みっしょんこんぷりーとっ!!と叫んでいるずぶ濡れの菜摘の姿」が記録されている。ふたりの教育や推して知るべしである。
もっともそのレターが届いたとき、さくらはカイパーベルトの真ん中で正体不明の大型生物と格闘戦を繰り広げていたのだからどっちもどっちではあるのだが。

皆の期待通り、菜摘は当時はアタック、トランポ、レスキューの3チーム体制だったボウケンジャーの一員となった。ポジションはなんとアタックユニットのチーフ、すなわちボウケンレッドである。
その後、菜摘はあるミッションで出会った青年と電撃結婚し、真人を生むことになるのだがこの辺は話すと長い上にあんまり面白くないので割愛して、さくらの話を続けようと思う。

真人が生まれてまもなくしたころ、さくらは再び地上に戻ってきた。・・・そして二度と宇宙に出ることは無かった。理由は、放射線障害による悪性腫瘍、すなわち癌である。
もともとゴーゴーボイジャーによる宇宙プレシャス探査ミッションでは、その役割上、明石がパイロットおよびロボットアーム等の操作、さくらがEVA(船外活動)というケースが多かった。結果、より多くの放射線被爆を受けているさくらに障害が起こりやすいことは自明であるが2人体制である以上リスクは覚悟の上、ということにならざるを得なかったのだ。

癌の治療は辛い。
しかも数箇所で同時に進行していたさくらのケースでは当時の医学でも完治は困難だった。真墨や映二たちはサージェスの様々なプレシャス応用技術をさくらに提案したがあきらかにリスクが大きすぎる、1回しか使用できないアイテムである、などの理由から拒絶された。
・・・まあたしかに癌が治っても満月の夜になると狼になるとかいうのでは社会生活がおぼつかない。

病床でやつれたさくらに手を握られて言われた言葉を菜月は思い出す。
「菜月、菜摘を・・・それから真人を頼みます。あの子達を育て、その子孫をも見守ることであなたも幸せであってくれるとうれしいのだけれど・・・」

きっと、さくらは気づいていたのだろう。菜月がこれから過ごすであろう永劫の時間をどんなに怖れているかということを。そして、菜月には真墨との子供は望むべくも無いのだということを。

実は、真墨と菜月の間に子供が出来ないであろうことはかなり早い段階で判っていた。
もともといわゆるアレの周期というものが絶望的に読めないということでサージェス内の医師に相談したのがきっかけであったのだが、そもそもレムリア人である菜月の体には謎が多すぎた。
Mr.ボイスから「被験体扱いするようで申し訳ないんだけど・・・」という言葉つきで精密検査を提案されたとき、猛反発する真墨を抑えて検査に臨んだのは、やはり真墨の子供が欲しかったからだと思う。

だが、検査の結果は全く逆の結論となった。レムリア人と現人類のDNAマップはほぼ同一だが、レムリア人の卵子に現人類の(具体的には真墨の・・・)精子がどうやっても受容されない。生殖細胞自体を加工してするプランも検討されたのだがこれも失敗。そもそも加工したDNAを挿入した生殖細胞で卵割が起こらないのだ。これではどうやってもお手上げである。
(なお、明石の探査により、カイパーベルトの内側の随所でレムリア文明にきわめて近い遺物を発見できることが判明し、現人類創生のはるか昔に築かれたレムリア文明は外宇宙から到来したのではないか?というテーマが急浮上していることを付け加えておこう。  We are not alone. )

「光ったっ!」
「おい、来たぞ。」
「明石、聞こえるか。そろそろリアルタイム交信が可能なはずだが」
そのとき強いノイズの混じった交信が入った。
「ああ、よく聞こえる。こちらゴーゴーボイジャー。パイロットは明石暁。状況はオールグリーン。まもなく着水体勢に入る。   ・・・・・・みんな、帰って来たぞ」

ゴーゴーボイジャー帰還。
みんな笑顔で明石を迎えに行こう。それでいいよね、さくらさん。

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ここで終わっておけばいいのですが・・・、なんか思いついてしまったのでもう一寸続きを書きます。感動的に終わりたい方はここまでにしておいてください → https://note.com/manet26/n/n6ac4b8a5e81b

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