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仮面ライダー電王妄想スペシャル2:俺の名ははーろkk…いや、ユート。

こちらのSSは2007年12月27日に某mixiに投稿したものです。

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こちらからお読みください。

仮面ライダー電王妄想スペシャルhttps://note.com/manet26/n/n373539edd601

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じ~か~んのう~み~は~、お~れ~の~うみ~。

最初に言っておく。ネタがかーなーり、寒い。

なに、俺たちの仕事について教えろ?。えらそうだな、お前。
でも、まあせっかくだ。説明してやる。

タイムライナーは文字どおり時間の中を走る列車だ。
と、いうよりも正しい時間の流れにしたがって「ライン」を引いていく、それがタイムライナー、そしてそのラインがぶれたり、滞ったり、ループしたり、途切れたりすることがあったときラインを修正するのが、俺たちタイムライナー乗務員の務めだ。

ただ、ここでいう時間の流れというのは決して「実際に流れている時間」じゃない。そんなものはとてもじゃないけど手に負えないというか、実際の時間の流れがどうなってるのかなんて、俺は知らない。

俺たちがメンテナンスしているのは、「Tarot」のメインファイルサーバにメモリされたパーソナルデータによってストラクチャされているバーチャルワールドのクロックだ。

わかりにくいので漢字で書くと「共有記憶領域に蓄積された個々の記憶情報によって論理構築されている仮想電脳空間の時間の流れ」だ・・・余計にわからないかもしれないな。だいいち漢字で書いたほうわかりやすいとかいうのはアイツのたわごとだろう。毒されてるな、俺も。

さて、なんで「仮想電脳空間の時間の流れ」なんてものを俺たちがメンテしてるのか?それはこの「Tarot」が恒星間宇宙船団だからだ。

ああ、わかった、順を追って説明してやるから、ちょっと待て。

恒星間宇宙船というからには恒星と恒星との間を移動する船なわけなんだが・・・ここはいいよな?で、恒星間移動ってのは光の速度でも、ものすごく時間がかかる。どのくらいかっていうと、ええと太陽からわし座のアルタイルまでは16.7光年、こと座のベガまでなら25.3光年だったよな、デ、あ・・・ベガまでなら25.3光年だ、うん。

光よりも速い速度では動けないっていう例のあかんべをしてる写真が有名なおっさんの言ったことはいまのところ物理学上の常識になっているので、当然ながらこの船はもっと遅い。

しかももっと困ったことに、この船団には行く先がない。行く先どころか実は戻る先もない。恒星間宇宙船団「Tarot」は難民船なのだ。

生態環境が悪化の一途をたどり続ける地球に早々に見切りをつけた5900人もの人々が世界中から集まって新天地を目指す旅に出発してすでに船内時間で160年。船団は巡航加速で徐々に亜光速に近づいているから、ウラシマ効果を考えれば船外時間ではもっと、置き去りにしてきている地球では数百年が経過していると見てもいいわけで、もし戻った所でそこにはおそらく俺たちの知っている地球は存在しない。

ま~さ~に、ウラシマ「Tarot」ってわけだ。・・・おい、ここは笑うところだからな、ちゃんと笑え。笑わないと関節技をかけるぞ。

そういうわけで、俺たちはどこかに人類が暮らせる星があることを祈りながら、戻る所のない片道切符でどこまでも旅を続けている。

ああ、なんで「仮想電脳空間の時間の流れ」なんてものを俺たちがメンテしてるのか、だったな。

推進方式はバサードラムジェットだから燃料の心配はほぼないのだが、問題はそこじゃない。わかると思うが、乗組員全員に船内で街を形成し、生活させていてはとてもではないが閉鎖生態系の循環が追いつかない。そこで、恒星間宇宙船は一般に乗組員ほぼ全員の体を低温で保存、いわゆる冬眠状態にして最低限の生命維持を行いながら旅を続けているわけだ。

だが、この冬眠状態ってのが曲者で、どうやら全く刺激のない冬眠状態で半年以上が経過すると、脳の反応が極めて鈍くなりはじめ、一年程度でほぼ停止する。そうなってから冬眠状態から回復させようとしても、自律的に呼吸や心拍を回復させることはもう出来ない。そこで、全員の意識をモデル化したアバターをバーチャルワールドに展開、極めてゆっくりした時間軸の中で時を過ごさせることにより、その行動をフィードバックすることで脳に刺激を与えているんだ。

おい、付いて来てるか?

バーチャルワールドにおいては人々は様々な時間を生きている。実の所、脳に刺激を与え続ければいいのだからその内容はさほど重要ではないんだ。だが肉体を安定的に保つためには脳のさまざまな部位に刺激をあたえた方がいい。だからさまざまな刺激を自然に発生させるためにバーチャルワールドで生活している(=夢を見ている)状態にするのが望ましいらしい。

そう、この船団は5900人の夢見る人々を乗せて、あてどない旅をしているってわけ。

でだ、そんな巨大なバーチャルワールドを1台のサーバで維持管理することは当然ながら出来ないから、各船のサーバを並列にネットワークし、分散コンピューティングによるスケールアウトを行っている。だが…。

なに? ふん、そのとおり。わかってるじゃないか。
亜光速で飛行する宇宙船どうしをネットワークしたとして微妙な相対速度差が当然あるよな。この速度差が個々の船ごとにサーバのクロックの差異を生み、各船の間でやり取りするデータにジッタによる歪が発生する。ジッタはやがてメモリの読み出しに不整合を起こし、冬眠状態にある脳へのフィードバックに影響を出す。判りやすく言うと夢が断続的に途切れたり、つじつまが合わなくなったりする。

ああ。そうだ、そのジッタを取り除き、ジッタによる影響を受けたパーソナルメモリをデバックして脳に正常なフィードバックを返してやる。それが俺たち、具体的には「ハナ、ユート、カイ」という3つのデミヒューマンインターフェイスが実行している仕事だ。

わかったな?
(「ぼくのなまえはやんb…じゃなくて、あれ、なんだっけかな。」につづく)
https://note.com/manet26/n/nddbabba0d035/edit

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