ワタクシ的典礼暦解説:前編
この典礼暦解説は私がかつてやっていたブログに2005年の年末に掲載したものに若干の加筆修正を加え、長めなので前後編に分けたものです。
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キリスト教のカレンダーを「典礼暦」といいます。典礼暦でぐぐってみればいくらでも情報はあるのですが、まあ、自分なりの整理をしながら典礼暦の一年をご紹介します。間違っていると感じるところとか、違和感とか、あるとは思いますがご容赦ください。・・・「意見の相違」や「宗派による理解の差」ではないあきらかな間違いは、コメントいただけると嬉しいです。多少の判断を加えて訂正を入れます。
では、はじめます。
待降節: クリスマスを準備する、だいたい11月最後の日曜日からの4週間、典礼暦の1年はここから始まります。 キリスト教圏で新学期が秋スタートなのは学校教育のバックボーンが神父の養成に始まっているからでしょうか。 秋から冬にかけて、穀物や狩猟の収穫の豊穣を感謝し、人類の救いのために神から「御子」が使わされたことを思い起こして、神の愛の深さについて考え、その愛を人々に告げ知らせるために活動する期間です。
降誕節: 「主の降誕」から始まり「主の公現」にいたる2週間。いわゆるクリスマスウイーク。 日本では25日にはクリスマスが終了すると思っている方が多いと思いますが、キリスト教圏では年明けまで家族で過ごして「家族の大切さ」をあたらめて感じる期間のようです。 いわばお正月休み全体がクリスマス。 ケストナーの「飛ぶ教室」やJ・K・ローリングの「ハリー・ポッター」シリーズなどを読むとわかりますが、「寄宿」が基本となるヨーロッパの学校では「クリスマス休暇」で家族に合うことはとても大切にされています。 歴史的に見るとこの時期にイエズスが生まれたという事実の証明はまったく無いようで、クリスマスは、キリスト教のヨーロッパ圏進出の際に現地の太陽信仰における「ユウル(冬至の祭り)」を吸収したものといわれています。キリストは永遠の命、死と復活の象徴ですので夏至からこっち弱まっていた太陽が力を取り戻し始める冬至はそのお祭りとしてふさわしい、とかそういうことらしいです。
主の降誕: いわずと知れたクリスマスですが、御降誕の徹夜祭(クリスマス・イブ)の方が有名になってしまいました。 本来は24日から25日に日付が変わるタイミングでミサを行い、そのまま降誕祭になだれ込みます。 待降節から聖堂には「キリストが生まれた馬小屋」を飾るならわし(イタリア語ではプレゼピオといいます)がありますが、クリスマス・イブのミサは、マリアとヨセフの待つ馬小屋に「幼きキリストの像」を安置するところからスタートします。 クリスマスウイークの間にこの馬小屋がだんだん賑やかになります。
神の母聖マリアの祝日: 元日は神の母聖マリアの祝日です。 「神の母であり、普通の人間である(処女懐胎の)マリア」様が正式に崇敬の対象となったのは5世紀ぐらいのことで、そこに至るにはなかなか複雑な経緯があるのですが、それはまた別の機会に。 この日は聖書朗読で「天使に導かれて羊飼いたちが彼らの主を礼拝に来る」箇所が読まれます。 したがって、馬小屋にはそれまでいた聖家族と牛馬に加えて沢山の羊と羊飼いが加わります。
主の公現: いわゆる三人の博士の訪問。馬小屋に三人の博士像を加えます。
天に王の誕生の印を見つけた博士たちがイエズスのもとに拝し、「黄金」「乳香」「没薬」の3つの贈り物を贈ります。「黄金」は力を「乳香」は聖性を表し、「没薬」は死を暗示しています。 だれだい?「没薬」を持ってきたのは!
この三人の博士、名をカスパール、バルタザール、メルキオールといいます。 それぞれの名前から「ヨーロッパ」「アフリカ」「ペルシア」と(当時の)世界中からイエズスが王として認められたことを表しています。 はい、ここで皆さん思い出しましたね。エヴァンゲリオンの3台のスーパーコンピューター「マギ(賢者の意)」の名前はここから取られています。
さて、この博士たちの訪問は、前日談と後日談があります。 どんくさいことにこの博士たち、当時のユダヤの支配者「ヘロデ」に「王様が生まれておめでとう」と言いに行ったりしたもので、ヘロデは己の座を脅かすものとしてイエズスを殺そうとします。 聖家族はエジプトに逃げてヘロデが死ぬまでそこにとどまりますが、イエズスを特定できなかったヘロデはイエズスが生まれたベツレヘムの2歳以下の子供を皆殺しにするという暴挙に出ます。 このあたり復活祭に語られる「出エジプト」の話と真逆の構造になっていて、なかなか意味深長なエピソードです。
年間第×主日: 「主の公現」から「灰の水曜日」までの間の日曜日は「年間第×主日」と呼ばれます。 要するにこれといって特別でない期間、ということですね。
前編はここで終了。後編はイースター(主の復活)を中心にお話します。
お読みいただき、ありがとうございました。
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