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独断的聖書解説:復活徹夜祭「エクソダスだよ!全員撲殺!」

はい、聖土曜日(Holy Saturday)でしたね。


教会は主の受難と復活をしのび、祭壇の飾りを取り除き、ミサもささげることなく、一日中復活徹夜祭の準備をします。日が没すると(古代ユダヤでは日没で日付が変わります)イースター。真っ暗な中で復活のろうそくと呼ばれる大ろうそくに火がともされふたたび「キリストの光」に世が照らされたことが高らかに宣言されます。


ちなみに英語圏で聖土曜日をBlack Saturdayと呼ぶ習慣は、この「世界がキリストの光に照らされていない日」ということを表しているんですね。
さて、復活徹夜祭のミサではいつもより多めに聖書が朗読されます。
旧約聖書の創世記から2つ、出エジプト記からひとつ、イザヤ・バルク・エゼキエルの各預言書から4つの7箇所が指定されています。すべてを朗読することが望ましいとされていますけれど、正直ものすごーく眠くなるので、だいたい3つを選ぶのですが、出エジプト記 14 章の朗読は省くことができないとされています。
そう、モーゼが海を割るシーンで有名なアレです。だけど、ぶっちゃけると小学生のころから毎年コレ聞いてますと、なーんか違和感あるんですよね。

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時にヱホバ、モーセに言ひたまひける。
汝なんぞ我に呼はるや、イスラエルの子孫に言て、進みゆかしめよ。汝、杖を掲げ手を海の上に伸べて之を分ち、イスラエルの子孫をして海の中の乾ける所を往かしめよ。
我、エジプトびとの心を頑なにすべければ、彼等その後に従ひて入るべし。我、かくしてパロとその諸の軍勢およびそ戰車と騎兵に囚て栄誉を得ん。我がパロとその戰車と騎兵とによりて栄誉をえん時、エジプトびとは我のヱホバなるを知らん。
ここにイスラエルの陣営の前に行る神の使者、移りてその後に行けり。
即ち雲の柱その前面をはなれて後に立ち、エジプトびとの陣営とイスラエルびとの陣営の間に至りけるが、彼がためには雲となり暗となり是がためには夜を照せり。是をもて彼と是と夜の中に相近づかざりき。
モーセ手を海の上に伸ければ、ヱホバ終夜強き東風をもて海を退かしめ海を陸地となしたまひて、水遂に分れたり。イスラエルの子孫海の中の乾ける所を行くに、水は彼等の右左に垣となれり。
エジプトびと等、パロの馬、軍、騎兵、みなその後にしたがひて海の中に入る。
暁に、ヱホバ火と雲との柱の中よりエジプトびとの軍勢を望み、エジプトびとの軍勢を惱まし、其の車輪を脱して行に重くならしめたまひければ、エジプトびと言ふ。我らイスラエルを離れて逃ん、其はヱホバかれらのためにエジプトびとと戦へばなりと。
時にヱホバ、モーセに言ひたまひける
汝の手を海の上に伸べて、水をエジプトびととその戰車と騎兵の上に流れかへらしめよと。
モーセすなはち手を海の上に伸けるに、夜明におよびて海はもとの勢力にかへりたれば、エジプトびと之に逆ひて逃たりしが、ヱホバ、エジプトびとを海の中に擲ちたまへり。
即ち水流かへりて戰車と騎兵を覆ひ、イスラエルの後にしたがひて海に入りしパロの軍勢を悉く覆へり。一人も遺れる者あらざりき。然れどもイスラエルの子孫は海の中の乾ける所を歩みしが、水はその右左に垣となれり。
斯くヱホバ、この日イスラエルをエジプトびとの手より救ひたまへり。イスラエルはエジプトびとが海辺に死に居るを見たり。
イスラエル、またヱホバがエジプトびとに為したまひし大なる事を見たり。是に於て民ヱホバを畏れ、ヱホバとその僕モーセを信じたり。モーセおよびイスラエルの子孫、この歌をヱホバに謡ふ。
(出エジプト記 14章15節~15章1節a)
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…長いけど実況風にしてみますね。


さあ、エジプトを脱出して紅海の端までたどり着いたモーセとユダヤの民。しかし目の前の海を渡ることができず立ち往生しているところに迫るエジプト軍。
ここで神様のターン!
昼は雲の柱、夜は光の柱となってモーセとユダヤの民を導いてきた神の使いが、濃霧になってエジプト軍の進軍を邪魔している間に、神様、一晩中強い風を吹付けて海岸線を歩けるようにした!。
某スペクタル映画じゃないので「まっぷたつに海を割る」ような派手なマネはしてません。あくまでいつもより多めに潮を引かせて海岸を渡れるようにしています。神様やること意外と合理的っす。
それーってんで渡り始めるユダヤの民、それを追いかけるエジプト軍。
ここで全軍が海に入っちゃったのは確かに愚策ですが考えてみてください。朝になって濃霧が晴れてみたら潮が目いっぱい引いてて、追いかけている連中が海岸線を全力で逃げていたわけで、まあそりゃ追っかけるでしょう?。ここは「彼らの心を頑なにする」って宣言した神が、状況を作って心理戦をかけているわけです、あら戦術家!
さらにここで神様のダイレクト攻撃。1台ずつ戦車の車輪を外しにかかります。めっちゃ個人戦やん。…てゆーかまあ、海水含んだ砂地に戦車で突っ込んだらナチュラルに車輪とられるよね、神様、ホンマに活躍してる?ハナシ盛ってね?
んで、最後。ユダヤの民がわたり終えたところで波が戻ってきます。
一晩中強い風を吹付けて引かせた波も戻すのはそんなに大変じゃなさそう。波にのまれるエジプト軍。必死に海岸を上がってこようとするところに神様待ち構えてたー。引っつかんで海中にどぼーん、一人も逃さずにどぼーん。全滅するまでどぼーん。馬もどぼーん。
波間に漂うエジプト軍の遺体の山に、ユダヤの民もさすがにドン引き!…かと思いきや「スゲー!神様についてきた俺たち勝ち組じゃん?ラッキー!歌っちゃおうゼ!」って意外と単純なのねキミたち。


正直な感想、たしかにスゲーんだけどなんかいちいち行動がセコい上に執拗な感じがあんまり応援したくないキャラかも。しかも鼻にかけてる感じがイヤ。創世記で6日で世界を創って7日目にいちにち休む余裕っぷりと同じ神様に思えない。


…あした晴天なのに雷が落ちて僕が死んでたら察してください。ハッピーイースター♪

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