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キツネノテブクロの咲く頃に【長編小説】

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2年前に書いた短編をリライトして長編小説にしました。冒頭の注意書きは、いくつかのマンガを読んだときに見かけた注意書きを真似たものです。2年前の駒井もいまの駒井も、言いたかったのは…
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2024年5月の記事一覧

「キツネノテブクロの咲く頃に」第1話 #ファンタジー小説部門

~ あらすじ ~  背に翼を持つ一族の中で「ボク」だけが鏡にうつらない。だからママは「ボク」を嫌いで、でもいつか鏡の中に「ボク」を見つけたら、ママは「ボク」を撫でてくれるかもしれない。  「ボク」の七番目の姉である「わたし」は『鏡にうつらない子はほかにもいるのよ』と弟に言う。弟を連れ一族の城を出て旅に出るが、その目的は『鏡にうつらない子に会いに行く』だけではなかった。  旅の終着点である「魔女」の家で「ボク」が知る、鏡にうつらない理由、そしてママの過去と、二人の事実とは―

「キツネノテブクロの咲く頃に」第2話 #ファンタジー小説部門

********* キツネノテブクロの咲く頃に<2>ボクは鏡にうつらない(2) (約6200字)  たくさんの、火。  城の窓や、庭園の大きな木のあちこちに火がついて、燃えている。  見上げた空はもう朝の空なんだけど、まだちょっとだけ夜がのこってて、そこから、まんまるで大きな白い月が、城と火とボクを見下ろしている。  ボクはまた、ここに来てる。ボクはこれが、夢の中だってことを知ってる。この城は、いまボクがいる城じゃない。前に、ボクはちがう城から来たんだって、兄さまか