あなたに首ったけ顛末記<その9・どうしようもないわたしたちが落ちながら歩いている>【小説】
あなたに首ったけ顛末記<その9>
◇◇ どうしようもないわたしたちが落ちながら歩いている ◇◇
(15800字)
<1>水野春臣は夜を歩く
(4500字)
「ああ、お客様だったんだ……んん、お客様、じゃないのかな?」
カオコおねえちゃん、と十緒子が呼んだその女性は、人指し指を頬に当てながら小首をかしげてみせた。
十緒子とはまったく系統の違う、おっとりとした、だが華やかさを持つ美人。十緒子の姉というからにはいくつか年上なのだろうが、言われなければそうは見えない