07 柿の種の正解
柿の種ってうまいよねー。ひとたび袋を開けると、いつまでも食ってしまう。やめどきがわからない。
ぼくは柿の種そのもの(煎餅部分)よりも、ピーナッツが好きなので、どうしてもピーナッツから先に消えていく。そうすると、後半は豆を探しながら食べることになる。最初からビーナッツだけ買えよって話だけど、煎餅部分が嫌いなわけじゃないので、やっぱり柿の種を買う。
柿の種も、様々なメーカーから発売されているが、元祖は亀田製菓ということでいいのかな。目につけば亀田製菓のものを買うけど、そこにあんまりこだわりはない。
柿の種とピーナッツの配分にはひとそれぞれ好みがあって、どれが正解かはわからない。市販されているものが公式な配分だとするなら、柿の種:ピーナッツが7:3といったところだろうか。
ぼくがよく利用している新宿御苑前のバー「浮かぶ」では、駄菓子屋によくあるガラス瓶2つに柿の種とピーナッツをそれぞれ分けて入れてあって、柿の種を注文した客は自分の好きな配分で器に取ることができる。ぼくは本心では5:5にしたいところだけど、それもなんだか大人気ない感じがするので、ちょっと日和って6:4くらいにする。
柿の種を食べていてふと思うのは、種のことだ。ビーナッツは、見ての通り種(たね)である。ということは、柿の種の煎餅は「柿」であって、ピーナッツが「種」? つまり「柿と種」。
この疑問は即座に否定される。なぜなら商品としての柿の種は「柿」と「種」ではなく、あの煎餅部分が「柿の種」を模しているからだ。月型というのかな? ちょっとカーブした楕円の煎餅。それに辛じょっぱいオレンジのタレがまぶしてあって、いかにも柿の種然としている。つまり、柿の種はピーナッツがなくたって柿の種なのである。
じゃあ、ピーナッツの立場は!
柿の種の商品名をより正確に描写するなら「柿の種と種」ということになる。ならないですね。
あれはコロナが始まったばかりの頃だから2020年の夏だろうか。酒場が軒並み営業自粛を強要され、昼酒を楽しみに生きていたぼくと酒友キンちゃんは行き場を失った。それでどうしたかというと、浅草のスーパーで缶酎ハイを買って、隅田川っぺりのベンチで飲むことにしたのだ。
そのとき、スーパーのおつまみ売り場を物色していて見つけたのが、竹内製菓の「サラダ柿の種」だった。
名前に「サラダ」と付くことからわかるように、これは塩味の柿の種である。「なぜ日本のお菓子業界では塩味をサラダ味と呼ぶのか問題」というのも重要なテーマとしてあるのだが、その話をすると長くなるので、それはまたいつか。
とにかく、このサラダ柿の種が抜群にうまかったのだ。おまけに始末がいい。通常の柿の種に対して、常々あの辛じょっぱいタレは湿気に弱く、手指の汗で容易に溶けるし、うっかり酒をこぼすとそこらじゅうベタベタになってどうしようもないことが気になっていたぼくは、サラダ柿の種のサラリとした手触りにまずはハートを持っていかれた。そして一粒、二粒と口に入れ、ポリポリと味わううちにあの形と塩味の相性がとてもいいことに気がついたのだ。
これ、柿の種の正解じゃね?
そう思った。まあ何をもって正解とするのかは人によって違うだろうが、少なくともぼくにはこれが正解に思えた。大好きなピーナッツが入っていないことを差し引いても、だ。
問題は、まだそれほどメジャーな存在ではないので、浅草松屋地下の「北野エース」と、高田馬場の「オオゼキ」くらいでしか見かけないことだ。もっと普通にコンビニで買えるようになるといいんだけどな。
気が向いたらサポートをお願いします。あなたのサポートで酎ハイがうまい。