【記事解説】『生成AI「ただ乗り」へ危機感 無断学習の歯止め案、国がパブコメへ』へのコメント
ニュースコメント(生成AIと著作権法)
著作権法30条の4柱書きは、「著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。」と定めています。「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」(非享受目的)とは、端的にいえば音楽や絵画といった著作物を鑑賞等をする目的でないような場合をいいます。もっぱら著作物を享受する目的で情報解析のために複製等を行う場合や、著作物を享受する目的と非享受の目的が併存する場合には、法30条の4は適用されず、権利者の許諾なく情報解析のための複製等を行うと著作権侵害となります。
この点、文化庁は昨年12月に公表された素案について1月15日に修正版を公表しました。実質的な内容に変更はございませんが、例えば、生成AIによってWEBニュース等の創作的表現が含まれる記事を学習するために複製する際、当該WEBニュースの創作的表現をそのまま出力することも目的としている場合には、当該複製行為は著作権法30条の4の非享受目的の利用とは認められない、といったことを明確にしています。
また、特定のイラストレーターAの作品である著作物のみを学習データとして追加的な学習を行うことにより、あたかもAの作品であるかのような生成物をAIが容易に作成することができることへの懸念も従来から指摘されています。開発学習段階においては、単なるアイデアレベル「作風・画風」が共通しているにとどまらず、表現レベルにおいてもイラストレーターAの作品群に創作的表現があると認められる場合には、意図的にイラストレーターAの作品似た生成物を作成するためにイラストレーターAの作品を学習することはやはり法30条の4の非享受目的の利用にはあたりません。また、生成・利用段階においても、AIが作成した生成物が、イラストレーターAの作品の「作風・画風」の共通に留まらず、表現レベルにおいてもイラストレーターAの作品の創作的表現を直接感じられる場合、生成行為や利用行為は著作権侵害になります。
弁護士 梅澤隼(松田綜合法律事務所)
2016年12月弁護士登録。2021年から2023年まで経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課にて任期付職員として勤務。著作権関連法務、個人情報プライバシー関連法務等に注力している。
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