「2×4×4」の楽譜解説

四つの演奏ポジションを用いたマンドリン曲を作りやすくするため、またその楽譜を見やすくするために「四段譜」という記譜スタイルを考えました。
その四段譜で作るとこういう曲ができる、ということを示したのが「2×4×4」という曲です。

本記事では楽譜の1ページ目を閲覧できるようにして、簡単な解説をしたいと思います。


四段それぞれの役割

上から順に、b, a, A, Bという記号が振られています。
bは演奏者から見てナット(0フレット)よりも左側の弦、
aは左手による押弦位置よりもさらに左側の、ナットより右側の弦、
Aは通常の演奏ポジション、
Bはブリッジよりも右側の弦。
四つの段が四つの演奏ポジションに対応しています。
並び順は、演奏ポジションごとの右手の動きと対応させて違和感がない、と感じた順番にしています。(低い段ほど右ひじが曲がり、高い段ほど伸びる)

bとBは四角い音符で表現されており、フレットがなく弦を押さえてもミュートになるだけなので開放弦のG,D,A,Eしか音は使えません。

aは三角の音符で表現されており、押さえる場所が指示されているだけなので、実際に鳴る音は異なります。

Aは通常の丸い音符で表現されています。

アルファベット表記にした理由は、別の演奏ポジションだが関連性がある、ということを表すときに大文字と小文字が便利かな、と思ったからです。

具体的な記譜法に関しては、もっといい方法があるかもしれません。

四段譜の利点

マンドリンに四つの演奏ポジションがあるということは、遊び弾きなどしていれば多くの方が気がつくことだと思います。
しかしそれを一段の譜面に表そうとすると、演奏ポジションの指定がわかりにくくなり、他にも、すべての弦を同時に鳴らすといったことが表現できません。

四段譜の場合は、それぞれの演奏ポジションに対する記譜は完全に独立させることができるので、視覚的に、この音はどの演奏ポジションなのか、ということがわかりやすくなります。
そして、複数の演奏ポジションで発された音が伸びて同時に発音される、ということも可視化することができるようになり、マンドリンは最大で32弦を鳴らせる楽器である、という事実がよくわかるようになります。

最初は一度に四段を読むということに難儀するかもしれませんが、ピアノは二段、オルガンは三段の楽譜を普段から読んでいることを考えると、人間の能力的に難しすぎるということはないと思います。

四段譜はハサミであり、定規である

四段譜というツールを使うことによって、四つの演奏ポジションを用いる曲は格段に作りやすくなります。
それは例えば、ハサミによって紙を切りやすくなるように、定規によってまっすぐな線を引きやすくなるように、ある行動の難易度を下げ、挑戦ハードルを下げるような働きをします。

モダンな演奏曲では、調性やメロディといった要素から離れて、その一瞬一瞬の響きを楽しむようなスタイルが多く採用されています。
そのスタイルでマンドリン曲を作ろうと思った場合、四つの演奏ポジションを使うということは、いうなれば手っ取り早くモダンな感じにする方法の一つです。

この四段譜によって、モダンな曲が作りやすく・弾きやすくなればよいなと思っていますので、興味を持たれた方はぜひ挑戦してみてください。

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青山涼
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