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「イズムの伝承」と「ビジョン」が導く新しい形

東京で乗りなれた電車を待っていたら気づけば発車しそうで、何年かぶりの全力疾走もむなしくホームに取り残された森です。

いつもより5両、車両が減ってました。自分の目の前に来てくれると思ってました。「慣れ」ってこわい。
日常は常に変化しています。スマホや音楽に夢中になってないで、いつも乗ってる電車もバスもちゃんと見ててね。置いてかれないように。


心を満たす「体験」と「時間」を提供してきたFISHMAN

特徴的なメニュー、空間、流す音楽やイベントもさることながら、FISHMANでは「その場にいる時間」と「体験」を通して、お客さんに「気持ち良い気分」になってもらうことを大事にしてきました。

つまりお客さんの「心」を満たすサービスです。

僕のそういう店づくりに影響を与えたのは、28歳まで修行したフレンチレストラン「クイーン・アリス」での経験と、会社の社長が「石鍋裕さん」だったことも大きいと思います。

受け継いだ「石鍋イズム」

「クイーン・アリス」は、東京の西麻布に本店を構えていたお店で、現在は横浜のみなとみらいに店舗があります。

クイーン・アリスの社長だった石鍋さんは、当時「鬼の石鍋」という呼び名がつくほどめちゃくちゃ厳しい方で、最初は20人くらいいた同期も気づいたら僕1人になっていました。
最終的に僕はここでソムリエとマネージャーを務めることになります。

その厳しさと同時に、石鍋さんは当時のフランス料理の常識を覆す“先端的な考え”を持った方でした。
ソースが主流だったフランス料理に「これはわさび醤油の方が合う!」なんて言われていた方です。

そしてクイーン・アリスでは、コースで何万円もして当時の日本人にとっては「別世界」だったフランス料理を、5000円で提供できるようにしたんです。

料理の質を下げた?それともサービスや空間が劣悪なのか?

そんなわけはありません。

メニューの「システム」を変えただけです。

コースを一本に絞り、フレンチレストランで一般的だった「内容がすべて決まったコース」ではなく、前菜など「料理を自分で選んでもらうスタイル」をとっていました。
そうすると良いものが安く手に入るのでコストコントロールができ、食材の質も落ちない。

空間や演出も決して劣悪なんかじゃなく、むしろ器やカトラリーにはひとつ何万円もするものを使って「フランスの高級な家にいるような空間」をつくりあげていました。
出す料理にはほどよく話のネタになるようなものを選んだり、最後は華やかなデザートで盛り上げたり。


「自分たちは、病気じゃない人の医者」「心の痛みをなおしてあげなきゃいけない」なんてもこともよく言われていました。

「心地よい空間で美味しい料理を提供する」というあたり前の概念を超えて、「質の良い時間」「感情をゆさぶるような体験」を提供していたということです。

「高級な」という意味ではない、心を満たす「ハイクオリティーなサービス」です。


コロナショックを経た僕が今、目を向ける先

これまで、そういう石鍋さんの「イズム」を受け継ぎ、僕の店では「そこで過ごす時間と体験」を大事にしてきました。
しかし今、僕がこの「コロナショック」を経て見ているのは、もっと先になります。

「一歩先の未来」に近づくため、現在フィッシュマンに「本物の接客」とビジョンに向かっていくための「人材育成」をする方々に入ってもらっています。

11年やってきたフィッシュマンでなぜ今、「接客」や「人材育成」を強化するのか。

それは大繁盛の中クローズした「パロマグリル」時代からの僕の失敗が関係しています。

要は「人」の部分です。

次はそこについてお話します。

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