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ええもんつくってはるよ、ミズノさん。

「ミズノさん」と呼んでしまう距離感

わたしが応援する会社……すなわち推し会社、それは「美津濃株式会社」こと「ミズノさん」。

きっかけは私の人生を狂わせたフィギュアスケートアニメ『ユーリ !!! on ICE』である(これについてもいずれ書かねばならぬ)。

それまでいろんなグッズが発売されていたけど、私(たち)が一番欲していたのは作中でキャラクターたちが実際に身に着けていたもの、物語のなかで出てきたアイテム。それを叶えてくれたのがミズノさんだった。

放送終了から一年と渇望していた時期に、しかも勝生選手の誕生日(11月29日)に詳細が発表され、さらに「商品はこちらです!〇日から受け付けます!」だけではなかったのがオタク心を鷲掴みにした。

ツイッターを通じて制作状況を報告し、ファンの反応や要望を細かく拾って、実際シューズのサイズ展開が広がったりといろんな面でアップデートされていた。すごい!一方通行壁打ちじゃない!私たちとラリーしてくれるのか、この会社は!と感動した(これだけでも充分だけど、まだ序の口だったのは後々わかる)。

そして受注受付開始日は物語で重要な役割を担う勝生選手のコーチ ヴィクトル・ニキフォロフの誕生日(12月25日=スケートの日!!!)。どこまでファン想いなんですかというにくいスケジュール。

しかも前日2017年12月24日は現実世界の全日本フィギュアスケート選手権の最終日で、全競技終了後に行われた年明けの平昌五輪代表選手発表に合わせて、日本代表ジャージを身に着けた勝生選手のイラストをツイッターに投稿するというファンの想像を遥かに超えるクリスマスプレゼントまで用意してくれていた。

リアルに泣いた。ミズノさんが私たちの勝生勇利を日本代表にしてくれた。ミズノさんにかかれば二次元も三次元も関係ない。応援したい選手が目の前にいれば応援するのだ。

このイラストが投下された直後、ツイッターのトレンドに「ミズノさん」とさんづけで入っていたのが、これまでのミズノさんとファンとのやりとりを想い出させてさらに泣けた。

コラボ商品はネットでの受注販売だったので、初めてスポーツウエアを買う多くのファンはサイズ選びに苦労していた。すると旗艦店で類似モデルを集めて生地やサイズを確認できるようにしてくれるという神対応が発生。

私がシューズのサイズ確認をしに行ったときも、同志と思われるファンを何人も見かけた。閉店間際にもかかわらず店員さんは「踵をトントンしてくださいね」と、にこやかに試着につきあってくれた。この店で買うわけじゃないのに、ここまでしてくれるのかと。ありがたさと少しの申し訳なさが心に残った。

せめてもの感謝をと、靴下を買って帰った。丈夫で今も愛用している。

強火すぎる社風

企業だから商品売ってナンボの世界。商品発送で終了!でなんの問題もない。でも、ミズノさんはそれでよしとはしない。

コラボ商品発送前に商品お披露目会(通称:勝生勇利選手ファン感謝祭)を開催。

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これだけでもオタクの息の根を止めるには充分なのに(笑)、室内にアイスリンクを作る計画もあったと聞いて、もう強火すぎて氷もとける勢いである。

さらに勝生選手の誕生日にはお祝いメッセージボードを店舗に設置し、店内装飾も作品やキャラに合わせたカラーや商品を陳列して訪れるファンを楽しませてくれた。

もう受注が終わってる商品や非売品の日本代表ジャージを、店内の一番いい場所にど~んと。今一番売りたい商品を置くはずであろう場所に。

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ミズノさんは一貫して勝生「選手」と呼び、実在する選手と同等に彼を扱ってくれた。きっと実際の選手をサポートするときと同じようにコラボ商品も作ってくれたのだと思う。

そして店舗スタッフさんも含め、会社全体が作品を愛してくださって、本物だと思わせてくれた。実在する選手と接する大企業が、私たちが好きなものを同じように好きでいてくれる。私たちと一緒に楽しんでくれる。それが一番うれしかった。

しかしミズノさん、私たちの掴まえ方が尋常ではない。先のリンク計画もそうだけど、何かしてくれるたびに「大丈夫ですか?」と、ユーリを知らないお客さんのことを考えると心配になるくらいの勢いだから。

公式ツイッターの中の人がたびたびつぶやく「強火なので」という言葉のとおり、ミズノさんの勝生選手推しの気持ちは私たちと同じ、いや、それ以上に強火なのである。この会社、リアルに本気と書いてマジなのだ。

どういう仕組みでこんなに現場に自由にやらせてるんだろう?上層部はどう思ってるんだろう?と素朴な疑問がなくはない。強火体制について機会があれば聞いてみたいレベルで強火である。

終わりにしない関係性

この強火な気持ちに感謝の一心で、前屈しても指先が床につかないカチカチ野郎なのに、ミズノさんの店舗で行われているヨガ教室に飛び込んだ。もちろん購入したコラボウエアを着て。

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運動音痴でも運動を楽しむ方法はあるし、体を動かすことは楽しい。体育の授業前に緊張でお腹を壊していた中学生の私が聞いたらなんて言うだろう。

あのクリスマスプレゼントがあった翌年から全日本フィギュアスケート選手権は現地観戦する機会に恵まれている。コラボウエアに加えてインナーも追加購入して着込んで行った。

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インナーのブレスサーモはミズノさんの社風のごとく熱かった。

自信と誇りにふさわしい価値を

ネットショップを見たり店舗に行ったりしてあらためて気づいたのが、ガチのスポーツ人だけでなく、そうじゃない人でも利用できる、スポーツが好きな人すべてにひらかれたお店であり会社だなということ。

この時期だとブレスサーモのインナーやアウター、手袋など普段使いできる商品がたくさんある。ものによっては決して安くはないけど、店舗のスタッフさんやツイッターの中の人と接してきて、こういう人たちがいる会社の商品ならと信頼をくれる。お値段以上の価値を私は感じて買っている。商品そのものとそれが生まれるまでの過程も込みで買っているのだ。

安さだけを前面に出す商売ばかりでは、売り手も買い手も身を亡ぼす。売り手が自信を持って商品にふさわしい価格をつけて売ることが普通にならないと、買い手も良いものをふさわしい価格で買わないと、いろんな循環がおかしくなる。ただ安いから買うだけでは信頼関係は生まれない。安いだけで本物がない商品ばかりに囲まれて楽しく過ごせるわけがない。こんな当たり前のことに気づかせてくれたのもミズノさんだ。

今や甲子園の外野スタンドにそびえる看板のロゴマークにすらときめいてしまって……重症である。ま、ファンやからしゃーないね。

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