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すべてが愛おしい景色になる日まで

全日本フィギュアスケート選手権、4日間、観戦に行ってきました。初出場の果敢な挑戦、引退生の全日本ラストステージ。みんな違って、みんないい。スケートを見るたびに沸き起こる想いです。

そんな中、推しはこんな目標を掲げていました。

最後まで自分らしく。滑り終えた後、幸せに包まれてほしい。彼の願いがかないますように。きっとできるよ。と祈りを持って会場へ向かいました。

SP前日の公式練習でステップが改良されていることに気づき、1ヵ月前に見たワルシャワ杯よりさらに進化していて、あまりのエモーショナルな振付に、公式練習の段階でもう胸がいっぱいになるくらいで、翌日への期待が高まりました。

心の壁のようなものを取っ払い、飾りの一切を削ぎ落とし、自らの内面をさらけ出す覚悟のようでいて……

7月末のアイスショーで初めてSPの演技を見た時の感想です。スマホのメモに残っていたのですが、その覚悟がさらに強くなっているように感じました。あふれる感情が音楽にのって、見るたびに感動を増す、彼の代名詞的プログラムに昇華されていく瞬間は、すぐそこまで来ていると思いました。

本番、笑顔の先生に送り出されてリンクの中央へ。ジャンプやスピン、進化したステップ、すべてが美しく、強く、エレメンツひとつひとつへの拍手の熱量がどんどん高まっていくのを肌で感じました。滑り終えるやいなや場内スタンディングオベーション。私は「歓声が降り注ぐ景色」を人生で初めて見ました。きらきらしていて、幸せに満ちたあたたかな空間は忘れられません。

そして1日空いてFS。こちらも公式練習で見たところ、ラストのコレオが手直しされて、さらに曲の壮大さにのって、彼のスケートが際立つ振付に進化していました。この短い期間でどんどん魅力を増していく姿は、とても頼もしかったです。どうか、最後まで自分らしくと祈る思いで迎えた本番は、SPのようにはいきませんでした。

SP・FS両方を揃えるのは本当に難しい。同じジャンプでも曲や振付が変わると、全然違うものなのだなと素人ながら思い知らされました。

ただ、ジャンプがはまらなかった中でも、プログラムの世界観は壊れなかった。最後まで自分らしく、攻め切った。予定構成を変えて、失敗したアクセルジャンプを再度跳びに行く軌道に入った時、0.01点でも積み上げる、もぎ取る、という強い気持ちは失われてないとわかり、爪が食い込むほど両拳を握りしめて、リンクを見つめていました。

さいたまスーパーアリーナの天井席から見たラストのイーグルは雄大で、体中から「これからも僕はいるよ」と叫んでいるようで、SPとは違った忘れられない景色となりました。

2021年1月から約半年間ひとりで練習してきて、今のクラブに移籍して、7月末のアイスショー直前に今季のプログラムができた……その時のエピソードを思い出しました。

 ようやく新たな拠点が決まった。この時点で既に7月に入っており、出演が決まっていた「THE ICE」(7月31日~8月1日)が迫っていた。時間が限られている中、樋口美穂子コーチに新しいプログラムと振付をお願いしたが「練習する時間ないんじゃない?」と返ってきた。それでも頼み込み「それならSPだけ。フリーは長いし慣らすにも時間が掛かるから」と樋口コーチに言われても、首を縦に振らなかった。「今シーズン、SPとフリー両方で美穂子先生の振付で戦いたいです」。強い言葉に、笑みを浮かべた樋口コーチは「その強い気持ちがあれば大丈夫」とGOサインを出してくれた。

スポニチ記事より

困難な道であることは承知の上で、この道を歩む決意をしたんだな。先生たちも一緒に戦う覚悟を決めてくれたんだなと。そう思うと、めちゃくちゃカッコいいな!って思います。今季は五輪シーズンというとても大切なシーズンではあるけれど、もっと先をも見据えているのかなと、またまた素人ながら思ったり。

実はFS表彰式が終わった瞬間、耐えられなくなって人目をはばからず、年甲斐もなく泣きました。泣きながら駅へ向かいました。すぐに駅構内に入れずベンチに座っている間も、ずっと涙が止まらなくて、こんなに胸が苦しく、悔しく、直接会ったこともない、ただ一方的に応援してる人のことで、あんなに泣いたのは初めてのことでした。

2019、2020年も悔しいなという感情はあったけど、泣けなかった。今年の悔しさは去年までのものとは全然違う悔しさだった。

試合が終わった翌々日、まだ前を向ききれず、胸の奥のトゲが抜けないもどかしさを抱えていたのを察してくれたかのようなタイミングで彼のSNSが動きました。

なんて強い人なのか。応援してるはずが、いつもこちらが励まされてしまってる。何度転んでも、何度つまづいても、立ち上がって前へと進んできた姿を思い出させてくれた。立ち上がるたびに強く美しくなって氷上に立ち続けているじゃないか!忘れてたわけじゃないけど、はっきり言葉にして出してくれたことは、めちゃくちゃ効きました。私の胸の奥のトゲを吹き飛ばしてくれるような、強くなった姿を次の試合で見せてくれると信じています。

それでも5日経った今もまだ正直この感情を整理できずにいます。見ると苦しくなるワードや写真はそっと早送りしてしまう。心が狭いというか、大人じゃないな、とも思う。FSはまだ映像を見られない。そういう自分にまた別のところで落ち込んでしまう。

ただ、ひとつ言えることは、歓びも悔しさも、この感情はすべて推しがくれたものだと思うと、今はまだちょっと辛いけど、きっといつか「あんな日もあったね」と言える日が、すべての感情が愛おしいと思える日が来ると考えられるようになりました。

今こそ原点に立ち返り、彼が選んで進む道を、遠くからだけど追い風になるような応援を心がけながら見守っていきたいと思います。「応援ありがとうございます」と言ってくれる彼の心根に恥じない自分でいなくちゃと。

新しい自分を見せたいと作ったふたつのプログラム。試合を重ねて今ではもう彼の代名詞プロといっても過言ではないSP「Yesterday」。静かな情熱が最後のコレオで解放され、曲の雄大さを超えていくようなFS「これからも僕はいるよ」。今季(まだ後半残ってるけど)新しい景色をたくさん見せてくれたふたつのプログラム。まだまだ見ていたい、進化していくと確信できる、特にFSは完成形を見たいと願ってやまないです。

それにしても選手たちは本当に難しいことを極限の状況のなかでやっている、難しい技術と美しい世界を両立させているんだなと。SPの後のインタビューで、極限の状況の一端を垣間見たような、全日本がどれだけ大きな舞台なのかということも改めて思い知らされました。

そんな心理状態を乗り越えて、あの歓声が降り注ぐ景色を見せてくれたのだから、もっと強くなれる。この大舞台で得たかけがえのない経験は、次のステージへ進んでいく糧になる。手にしたものは確実にある!と思いました。

推しはとても剛直で麗しい人だなと思います。スケートも人柄も。会場でバナーを振る時、誇らしい気持ちとともに、背筋が伸びる思いがします。推しに恥じない自分でいたいと、バナーを振るたびに思います。

もっと高くもっと遠くへ跳べるようにと願いを込めて、飛行機内から撮影した写真で作ったバナーと所属の中京大学スケート部のバナータオル。

2021年。草太選手にしか出せないスケート、しっかりと見せていただきました。新しい景色をたくさん見せてくれてありがとう。スケートに向き合う姿に、いつも力をもらってます。素敵なスケーターがたくさんいる中で、私の心を震わせ掴んで離さないのは、あなたのスケートです。

新しい環境で新しい先生たちと新しい種を蒔いた2021年。
2022年が大輪の花を咲かせ、幸せに包まれる年になりますように。
どんなときも、いつだって、ここから応援しています。