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日本語の大疑問

忙しい先生のための作品紹介。第55弾は……
 
国立国語研究所編『日本語の大疑問 眠れなくなるほど面白いことばの世界』(幻冬舎新書 2021年)
対応する教材    文法など
ページ数      262ページ

原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★★★☆
レベル       ★☆☆☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★★★☆
教員へのおすすめ度 ★★★☆☆

作品内容

 本書は、国立国語研究所に寄せられた日本語についての疑問について専門家が答えたものです。国立国語研究所のWebサイトや刊行物に掲載されている記事から40の疑問を取り上げ、一冊にまとめています。内容は、身内についての敬語の使い方や「思う」と「考える」の使い分けといった、何が正しいのかが気になるものから、「やばみ」などの「み」の由来や絵文字・顔文字とスタンプの違いといった、日常の言語について分析したものまで、多くの種類があります。言葉についての多種多様な疑問を、専門家の立場から易しく解説した一冊です。
 本書は国立国語研究所が編集したもので、疑問に答えているのも、その分野に詳しい専門家たちです。簡単な参考文献もついており、興味を持った読者はさらに知識を深めることができます。

おすすめポイント 文法だけじゃない! 日本語学の魅力

 日本語学(国語学)には、多くの研究分野があります。学校では文法が主ですが、その他にも音声・音韻や語彙、外国語との比較など、分野はさまざまです。
 本書では例えば、「令和」という言葉について音韻学的な分析を試みています。元号はなんとなく漢字二文字が多い、と思う人も多いでしょう。しかしさらに細かく見ていくと、「令和」の韻律(リズム)は「明治」「昭和」などと同じで〈2拍+1拍〉という構成です。元号には、この〈2拍+1拍〉と〈2拍+2拍〉(「大正」「平成」など)が多く、〈1拍+2拍〉などは少ないことが指摘されています。これは元号に限らず、日本人がどのようなリズムを好むか、という問題と深く関係があるのだそうです。
 このように、音声学の視点から分析すると、文字だけではわからない、深い規則性が見いだせるというのも、面白いポイントです。
 日本語は私たちにとって身近だからこそ、いろいろな角度から興味を持ちやすくもあります。その興味に応え、広げ、深めてくれるのが本書の大きな特長です。

活用方法

 本書は、教科書で体系的に学ぶ国語の内容のどこかに入るわけではありません。そのため、「この授業をする時におすすめです」とは言いにくいものです。しかし、国語の教員をしていると、何かと日本語についての疑問をぶつけられることもあるのではないでしょうか。そのような疑問に答えるための参考書として、本書が使えそうです。また、日本語や言葉についての感覚に優れた生徒には、本書を薦めるのもよいでしょう。何かを集中的に詳しくなれる、というよりは、教養として広く浅く知識を広げられる一冊です。
 また、本書は国立国語研究所のWebサイトにある連載コラム「ことばの疑問」や、同研究所の刊行物「新『ことば』シリーズ」というシリーズから抜粋したものです。気になる人には、このサイトや本も薦めてみると、さらに知識が広がるかもしれません。

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