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如雨露

2年前から会社の屋上で植物を育ている。 ここ数か月、私とは直接関りのない協力会社のタイ人スタッフが、反対側のスペースで菜園を始めた。 いつも私のジョーロを何の断りもなく勝手に使っては、自分の菜園の側に置きっぱなし。 使うのはまったく構わないが、せめて元の場所に戻せと思う。 が、何も言わないでおく。 ある朝、底が割れたジョーロが水汲み場に放置されていた。 それ以来、気まずいのか、屋上で鉢合わせると隠れるように出て行くようになった。 一言も謝罪はないが、何も言わないでおく。

    • 空蝉(うつせみ)

      あれは父の四十九日法要の後のことだった。 生前、父がお気に入りだった窓際の椅子に腰掛けて庭を眺めていたら、梅の枝に掴まっている蝉の抜け殻が目に留まった。 春とは名ばかりのキリっと冷えた三月の空の下、まだ山には白い雪の残る景色の中で、季節に取り残されたようなそれはちょっとした異彩を放っていた。 私は直感的にその蝉の抜け殻に父を重ねた。 庭いじりが好きだった父のお気に入りの梅の木。 夏から秋口にかけての台風にも木枯らしや大雪にもさらわれずにそこいた不思議。 それは半年以上経過した

    如雨露