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大学のときにアカペラサークルに入っていました。
理由としてはハモネプが大大大好きだったこと、浪人だった私より先に大学に入っていた友人がアカペラサークルに入っていたこと、そして何より私が歌うことがとても好きだったこと、が挙げられます。

アカペラでやってみたかったことといえば、さわやか邦楽を素敵にアレンジした曲を歌ったり、大学の先輩みたいにゴリゴリ洋楽をかっこよく歌ったり、、、
今でもまだまだやりたいなー!と思う、アカペラの理想系!だと思います。
特にハモネプが大好きだったので邦楽を楽しくエモくハモるのには憧れがありました。

そんな私が、忘れもしない大学1年の追いコンの日、とんでもなく理想とは外れたバンドを結成しました。
名前は「網💋tights」(当時は「まっすん(私)がセクシーに歌うバンド」みたいな名前やったかも)。
本当に結成しようやーって話したその日はまったくやる気がしなかったことを覚えています。笑

そんな網💋tightsの初舞台は「マメカフェライブ」という、おしゃれな落ち着いた学内カフェ内でコーヒーを飲んでいるお客さんにアカペラをお届けするという素敵なロケーションのライブでした。
どんな経緯で決まったかはあんまり覚えていませんが、このバンドはセクシーに歌うという路線から網タイツを履くことを決め、振付を付けて歌う、セクシーの皮を被ったいわゆるネタバンドにいつしかなっていました。
そんな我々の初舞台は、場所とのマッチングが非常に悪く、タチの悪い滑り方をしました。
ただ滑るのではなく、おしゃれな空間で滑るというのが本当にタチが悪かったです。
けっこうな傷を負ったような気がします。

それにもかかわらずなぜか心が折れる人がひとりもおらず、2回目のステージ:合宿では、またまた果敢に挑戦し意味わからんぐらいウケました。
このときの記憶が本当にないんですが、なんで誰一人として心が折れなかったのか本当に分からん。みんな別にめっちゃハート強い人の集まりじゃなかったはずなのに。

私がこのときの感情でめちゃくちゃ覚えていることはただひとつ。
「ウケるって楽しい!!」
そして「人をコケにしたりイジるんじゃなくて、自分発信で笑いをとることが自分にできると思ってなかった。感動。」
ひとつじゃなかった。
後者の気持ちが本当に強くて、私は昔からとにかくお笑いが大好きで面白い人間になりたい気持ちが強かったのですが、自分から面白いことをしに行くのが怖くて勇気も自信もなくてできなくて、「私はこのまま、あんまりいじられにくい性格だし人をいじったりするだけで小手先の笑いをとっていくんだろうなぁ」みたいな諦めの気持ちが漠然とあったのです。
理想がちゃんとあるのに、プライドが邪魔をして振り切れない、という矛盾が。
今でもちゃんと覚えているぐらいなので、気持ちの大半を占めていた訳じゃないけど、割と強くしこりとしてあった感情だったように思います。

この強いジレンマを打ち破ってくれる存在がまさか網💋tightsになるなんて、、
何より、自分発信でウケることがこんなに楽しいなんて、、!
私は本当にこの楽しさに出会えたことをめちゃくちゃ人生のターニングポイントな気がしていて、すごく感謝しています。
しょうもないプライドのうちのひとつが崩れ去ったというのでとても最高な出来事でした。

それからの網💋tightsの勢いは自分で言いますが結構すごく、学内で主催ライブを開催する、学内ライブで優勝する、アカスピEXというアカペラの全国大会のギャルバン部門に選出される、→けっこうウケて爪痕を残す、大阪のライブにお呼ばれする、などなど、、、
飛ぶ鳥を落とすほどではなかったけど、飛ぶ鳥の羽をかすめるぐらいの活躍はできた気がします。
じわじわと名前が売れていく感じってこんなに心地いいのかということを知りました。
しかもその評価が、「面白い」ということによってのみ稼げたものというのが自分の自尊心に非常につながりました。
ちょっと盛ったか。本当はリードのうまさかわいさが6割で面白さは4割だったかもしれません。

我々は練習熱心なタイプではなく、数少なく設定している練習日に集まってはぺちゃくちゃおしゃべりして30分練習するという生産性の低い時間を過ごしていたのですが、さすがにアカスピEXの前は練習に力を入れました。
もちろん、力を入れた部分はネタ部分です。
手前味噌ながら、あんまり練習しなくても演奏はけっこううまかったのでネタの方ばっかりに時間を割いていました。
みんなであーだこーだ話しながら振り付けを考える作業はとても楽しかったですし、生まれた振り付けは実際今考えても面白いものばかりでした。(たまに「なんでこんなん考えた???」という究極の空振りみたいなやつもある)
6人全員が、ステージを経るごとにプライドが薄れていき恥ずかしさは最終的にゼロだったのがとてもいい集団だったなと思います。

そういえば、このあたりで公式な大会に出るにあたって、バンド名に💋(絵文字)が使えないということになり、正式に「網」になりました。
漢字一文字でカッコいい。

そんな網のやってきたことでかなり面白さ上位に入るんじゃないか?というのが、アカスピの予選動画を公園で撮影したことです。
網は網タイツを履いていることに加え、明らかに質の悪いコスプレショップで買った婦警の制服が衣装です。
そんな我々が、一番会ってはいけない存在の子どもたちが集まる公園で、しかもめちゃくちゃファンシーで楽しそうな遊具に悪質に絡みながら歌ったり踊ったりしたのが非常に最低で面白かったです。
この動画案は、決まった時「ハマった!頂いた!!」とものすごく思いましたし、実際たくさん反響が貰えたので本当に嬉しかったです。
今見返しても普通に面白いです。

それから私が一番面白かったのは、ほとんどどこでもやっていませんがcat's eyeという曲中の試みです。
歌う前のMCで、「今からやる曲でメンバーの誰かが跳ぶので、その瞬間をカメラで撮れた人は我々のTwitterに送ってきてください!景品差し上げます!」みたいなことを言って、
曲中全員が跳ぶふりをして全然跳ばんで本当にどうでもいいところでパーカスが跳ぶという演出をしたんですが、これがやってる方も笑いが抑えられないぐらい面白かったです。
コーラス全員がここで絶対に跳ぶぞー!!!って言わんばかりにためたのに、
ためた末に意味わからん決めポーズをとるっていう箇所がめちゃくちゃ面白くて、たぶん本番も笑いながら歌ってました。
これはどこでもやってなかったのが結構もったいないぐらい面白い試みやったなぁと今になって思います。

こんな感じで、振り付けにかかわらず間のMC、メンバー紹介までたくさんみんなで考えた面白いことをやりまくってきたのですが、
この思いついた面白いことを、自分でやって、笑いが返ってくるっていう経験が自分の中でとにかく大きくて、やればやるほど「もっともっとウケたい」というハングリーな気持ちになってました。
よく芸人さんが、「芸人は麻薬しなくても舞台でウケたらおんなじ効果が得られるから麻薬をしない」というようなことを言ってますが、
自分もこの感覚がおそらくですが分かるようになっていたのです。
本当にこれは気持ちいい!
シャイで自分から変なことをみんなの前でするのなんて恥ずかしいと思っていた少女をこんな風に変えてくれた網の存在は本当に本当に何度も言いますが自分の中でとても大きな財産になっています。
なので網以外にも、積極的に笑いを取りに行くようなバンドをいくつか組めたし、そのことで本当に楽しい舞台上の思い出がたくさん出来ました。
固定バンドで、しかも大事なオーディションの舞台でもおふざけMCを臆することなくできたのは網のおかげでした。

網は最終的に行くところまで行って、なんと2回目に出たアカスピギャルバンEXという全国の大会で優勝までしてしまいました。
技術的なところでいうともっともっと上を目指せた状態での優勝になってしまいましたが、何より自分たちが考えた面白いものがたくさんの人に評価されたのかぁというのが本当に嬉しかったです。
全国大会は、みんなハイになってたくさん反応してくれて、考えた面白いことがとことん大ハネするのでそのときのウケとしてもめちゃくちゃ楽しかったし、本当にちゃんと評価していただけたというので、あとにも残る楽しいステージを届けられたんだなという嬉しさがありました。

先ほどからの書き方だと、まるで面白いことを考えたから優勝したみたいな感じになってますが、それだけではなく面白く演じるのもみんな本当にうまかったです。
何より恥がゼロなので笑いやすくて、そういう意味ではいいステージを届けられたんだろうなーと思います。
恥がゼロ、というだけでやっていることに関わらず絶対最終的には笑いがとれるということもこのバンドで学びました。

プラス、このバンドでのMCが本当に楽しかったというのも思い出深くて、
ただ考えたネタとかをお届けするだけじゃなくて、めちゃくちゃ適当に出まかせみたいなのを喋ってて長い時間話してるのに内容がマジでゼロみたいなMCで、それが面白かったです。
だいたい私とリードボーカルのもつが話を進める感じだったと思うのですが、私ももつも適当に喋るのがめちゃくちゃ得意なのでとても楽しかったです。
今もちょいちょい映像が残ってるのでたまに見返すのですが、ウケてるところはもちろんウケてないところも適当すぎてめちゃくちゃ笑えます。

あと、もともと自分はあがり症なのですが網ではどういうわけかまったくあがらなかったので結構冷静に今何を言ったらウケるかなとか考えながら喋れていたのもナイスでした。
たぶん、網の時だけ舞台上の自分と本当の自分を切り分けるなだぎ武さんタイプだったんだろうと今では思います。切り分けて別人になることで、滑ることも少なくありませんでしたがかなり平気でした。
このマインドってめちゃくちゃ素晴らしいのに、網でやってることが変すぎて発動しただけであとはどこでもすべると恥ずかしいシャイな少女のままでした、、、

今、大人になってみて思うのは
こういう人前で注目浴びてウケるみたいな経験ができて本当によかったなーということ、、、
歌を歌うのも楽しかったけど、やっぱり心に残っているのは自分たちが思うおもしろをぶつけて笑いが返ってくる快感とか、自分のプライドを捨てられた嬉しさです。
これは、網を組んでなかったら私はもしかしたら一生もじもじして自分から変なことをして笑いを取りに行くピエロにはなってなかっただろうなーと思うので、本当に自分の人生に網があってよかったです。し、全員が同じ温度感というか、同じ面白さと恥のなさでネタに対しては真摯に向き合える?軍団だったことがとても素晴らしく、奇跡に近いことだったなと思います。女の子は基本シャイなはずなのに。
私のアカペラ人生の中に網のみんながいてくれたおかげでこんな経験ができました。

当時は楽しい感情ばかりじゃなかったし、金がないのに遠征するのも大変だったけど、この気持ちや思い出がずっと残ってるから本当に私の人生になくてはならなかった、あってくれてよかったなと思うターニングポイントのようなものになっています。
もうアラサーまっしぐらなのでお痛できないけど、当時に戻ってまたあの爆笑浴びたいね。

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