小豆島旅行記2【嵐の前のゲリラ上陸編】①もう一度小豆島へ!
1.縮むGOTOの心の叫び(宮崎ユウ視点)
「ごっさん、いってらっしゃい!気をつけてね!」
早朝4時前、私の家から仕事へと出かけていくGOTOの後ろ姿に声をかける。
「おう、行ってくる!ありがとう!」
私の言葉にそう片手を上げて応えるGOTOの後ろ姿はこの数日ですっかり縮んだように見える。大洲にある家まで帰る気力も体力もないからと、今日は我が家に泊まったくらいだ。
大丈夫かなぁ…
ため息と共に心配が溢れる。
8月5日から3日間、猛暑の大洲市で開催した忠平さんの個展ならびに妖怪美術館はじめ小豆島勢とのコラボイベント終了翌日から、GOTOは早朝から夜遅くまでの撮影の仕事が入っていた。傍から見てもキツいスケジュールで、体を休めている暇もない状態なのだ。
昨夜も遅くに我が家にやって来て、コンビニ弁当をかきこみ酎ハイをあおると、グチを叫んで気絶するように寝ていたGOTO。かと思えば、ものの3時間足らずでもう出発である。世間ではこれを仮眠と呼んでいる。
ヘアメイクを生業にしているGOTOは、炎天下であれ そこに演者がいれば常に帯同している。イベント翌日から1週間ほど続いているこの仕事も今日が最終日。ここまでしんどそうな姿をを見たことがない。さすがの体力オバケGOTOも、もうボロボロなのだ。
どうか、無事に終わって欲しい。
祈るような思いで見送った。
その夜のこと、全ての撮影を終えてクランクアップを迎えたGOTOが闇のグループLINEでこう叫んだ。
闇チームには平日でも動ける平日組と、仕事の関係で土日祝日の赤日にしか動けない休日組がいる。基本休日組に合わせて平日組が仕事を捌いてスケジュールを調整、旅行やキャンプに出かけているのだ。
しかし、1人でも行くというGOTOの心からの雄叫びに異を唱えるメンバーはもちろんいなかった。
皆、本気でGOTOを心配していたのだ。
GOTOと同様平日でも動きやすい私は、彼女の小豆島行きに付き合うと決めていた。
スケジュールなんて何とでもする。どうせなら、面白い事しよう。
すでに埋まり始めている先のスケジュールの中からGOTOが挙げたオフの日程のうち、9月16日の金曜をGOTOを癒す小豆島旅行の日に決めた。
めっちゃ楽しいことしようぜ、GOTO!
この日から私たちは計画を練り始めた。
2.秘密にしませんか?(中岡勇人視点)
「えー!金曜日ぃぃ?」
ユウさんからGOTOさんの癒し旅に小豆島へ誘われた僕は日程を聞いて、頭を抱えるように前髪をかきあげると、椅子の背もたれに寄りかかり天井を見上げながらその曜日を口に出して確認した。
「番組は?どうするんです?」
ユウさんと僕は毎週金曜の22時から生放送でラジオ番組を持っている。
どうするかなんて、答えはもう分かってはいるが、それでも一応ディレクターとして僕は確認をする。
「番組は収録にして、アフタートークで実は小豆島にいまーす☆って小豆島から生配信しようや」
ユウさんの答えは予想通りだ。
日程的に取り急ぎ収録をしなければ間に合わない。当日いないのであれば、色々引き継ぎもしておかなければ…。
とはいえ、今回はGOTOさんの癒し旅だ。
イベント後からのハードスケジュールでボロボロになって 絶対に小豆島に行く宣言をしていたGOTOさんを思うと、首を縦に振らざるを得ない。
「分かりましたー」
と返しつつ、僕の脳裏にはひとつの疑問が浮かんだ。
前回の小豆島再訪の時に我々闇チームと小豆島面白Twitter軍団はあれだけのプロレス合戦(例:小豆島上陸5分で宮崎ユウリサイタル開幕の刑、一流歌手の楽屋入りドッキリの刑など)を繰り広げたのだ。
今回先方に我々が行くことが分かっていたら、前回を上回るプロレスを仕掛けるべく入念に準備をされるだろう。
そして負けず嫌いの面白いことしいのリーダー・ユウさんが果たしてそれらに対して何も対策をせずにいられるだろうか。
否。ユウさんは先方の裏をかく何かを仕掛けようとするだろう。少し考えただけでもかなり壮絶なプロレス合戦が繰り広げられることが想像できるのだ。しかも、こちらは3人。前よりも少ない人数で小豆島軍団からの洗礼を受けて立つことになる。
果たしてそれが癒し旅になるのか。
そう思いをめぐらせている僕に
「なんか面白いこと仕掛けようや」
例のワルい顔でニヤリと笑みを浮かべたユウさんが囁いてきた。
殴り合い確定である。
眉間に皺を寄せそうになったその時、僕の脳裏にとあるアイデアが浮かんだ。
無意識に背もたれから背を離し、前屈みに姿勢を変えながら頭の中を整理した。
そうだ、相手に準備の隙を与えなければいいんだ。
「これ、提案なんですけど…」
僕の言葉にキラリと目を光らせたユウさんが目線で続きを催すのを見て、僕はこう続けた。
「向こう(小豆島面白Twitter軍団)に、小豆島に行くこと…内緒にしません?」
3.刺し盛りが食べたいんですけど?(GOTO視点)
「え!向こうに黙って行くって、泊まるとこどうするんよ?」
LINEで「小豆島に内緒で上陸しよう」と言ってきたユウさんに、私はこう返した。そして大事なことなので、矢継ぎ早にこう続けた。
「私、宿舎さんで木下さんの刺し盛り食べたいんですけどー?」
そう、あの素晴らしい刺し盛りをもう一度拝みたい。そして、腹いっぱい食べたいのだ。こればっかりは譲れない。
そのためにも国民宿舎小豆島に泊まらなければならない。刺し盛りを食べるには飛び込みではなく、ちゃんと予約をしてなければ。
そんな私を
「まあまあ、聞いてよGOTOさんw」
と宥めたユウさんはこう続けた。
「ちゃんと宿舎さんに予約するんよ?
……バレんように私達とは別の名前でwww」
ん!?どういうこと!?
彼女の言葉に頭の中がはてなマークでいっぱいになっている私に、ユウさんがタネを明かし始める。
なるほど…。
その方法なら宿泊の予約の段階で宿舎さんに私たちだって気が付かれずに予約ができるし、手続きも何ら問題ない。ちゃんと刺し盛りも食べられる!
ユウさんの話を聞いて、モヤが晴れたようにクリアになった私の頭の中は、小豆島で楽しんでいる自分たちの姿しか思い浮かばない。
これって最高のアイデアじゃない?
「それでさぁ……」
ウキウキしている私に、ユウさんが小豆島軍団に仕掛ける更なるプロレスの案を囁く。
きっと今、ユウさんったらワルい顔してるんだろうなぁ。
でも、面白い!
「いいね、それやろうや!」
私は諸手を挙げて賛成した。
ユウさんが出してくる案に、私も思いつく限りアイデアを出して肉付けをしていく。
敵を欺くにはまず味方からということで、当日愛媛に置いていく闇メン休日組の仲間にも秘密裏にことを進めることになった。
こうして、小豆島へ旅立つための準備はみんなの知らないところで着実に進んで行ったのだ。
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