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インタビューは今の自分を素直に出せる自己表現

プロインタビュアーの宮本恵理子さんがインタビュー術の極意を聞く「INTERVIEW ABOUT INTERVIEW」。13回目を迎えた今回は、早起き日本代表!?"5時こーじさん"こと、井上皓史さんをお招きしました。

22時に寝て5時に起きる生活を幼少期から続けている5時こーじさんは、日本の朝を変えるため、2016年に早起き応援コミュニティ「朝渋」を立ち上げました。コミュニティメンバーは現在200名を超え、「朝渋」名物の新刊著者のトークイベント(現在はオンライン開催)では、毎回第一線で活躍する豪華ゲストを迎えて、参加者と学びをシェアしています。

実は5時こーじさんは、宮本さんが講師をつとめるインタビュー特化型ライター養成講座「THE INTERVIEW」の第1期生。以前から交流のある2人の「INTERVIEW ABOUT INTERVIEW」は、こーじさんが夜更かししないように普段より1時間早めて、19時から始まりました。

5時こーじプロフP

5時こーじさん
早起きコミュニティ 朝渋代表
1992年、東京都生まれ。朝活コミュニティ「朝渋」代表。幼少期より22時に寝て朝5時に起きる生活。 2016年朝活コミュニティ「朝渋」を東京・渋谷で立ち上げ、本の著者を招いたトークイベントは累計1万人を動員する規模に発展。 2018年、勤務先の企業を退職し、ライフワークだった「朝渋」 に本格コミット。早起きを日本のスタンダードにすることを目指す。 新R25にて「日本の朝を変えるために会社を辞めた男」として紹介。2020年3月、小学館より「昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です」書籍発売。
▼SNSアカウント
Twitter:https://twitter.com/kojijico

宮本さんプロフP

インタビュアー(聞き手)
宮本 恵理子(みやもと・えりこ)
1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、日経ホーム出版社(現・日経BP)に入社し、「日経WOMAN」や新雑誌開発などを担当。2009年末にフリーランスとして独立。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。一般のビジネスパーソン、文化人、経営者、女優・アーティストなど、18年間で1万人超を取材。ブックライティング実績は年間10冊以上。経営者の社内外向け執筆のサポートも行う。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』『新しい子育て』など。担当するインタビューシリーズに、「僕らの子育て」(日経ビジネス)、「夫婦ふたり道」(日経ARIA)、「ミライノツクリテ」(Business Insider)、「シゴテツ(仕事の哲人)」(NewsPicks)など。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。

こーじさんがインタビュー力を発揮している「朝渋」。実はこの勉強会「INTERVIEW ABOUT INTERVIEW」を開催している西村創一郎さんのアイデアで始まりました。「朝渋」発足当時から見守ってきた西村さんは、こーじさんの一番大きな変化について「らしさを出せるようになったこと」だと断言します。

当初はいいインタビューにしようとするあまりガチガチに緊張して、予定通りに進まないとすぐに焦っていたこーじさん。どのようなプロセスを経て、自分らしさを出せるようになったのでしょうか。まずは、初期のインタビューの様子から話は始まりました。

<公開処刑並みに緊張した初期のインタビュー>

――こーじさん、当初のガチガチの状態から持ち味を発揮できるように変化してきたということですが、ご自身でもそう感じますか?

そうですね。「朝渋」のきっかけは、西村さんが僕の早起きの才能を見出してくれたことです。当時は新卒2年目の営業マンで、副業のような形で始まりました。でもイベントにいらっしゃるゲストの面々が、株式会社サイバーエージェントの曽山哲人さんや、SHOWROOM株式会社の前田裕二さんたち。自分からすると「神様」レベルのそうそうたる人たちだった。
でもお客さんからすると、僕はその「神様」と1対1で同じ壇上に立っている。しかも、1時間半も話さなくてはいけない。最初の方は"公開処刑"かなと思いました(笑)。お金を払って来て頂いているので「ゲストは素晴らしいのに、インタビュアーはイマイチだったと言われるのはイヤだな」というプレッシャーに押しつぶされながら、なんとかやっていましたね。

<緊張の克服方法は"憑依"すること>

――とても学びが多い話だと思います。すごく目上の方がゲストの時、こーじさんに限らず、インタビュアーは緊張するものじゃないですか。その緊張をどう克服されましたか?

僕の場合、準備が不完全だと思いながら当日を迎えると必ず緊張します。例えば僕があまり知らない分野のマーケティングの本の著者の場合、本を読めばわかることなのに、予習が甘いと「これ聞かれたらやだなあ」と考えて緊張してしまう。だから、自分の中で持てる力をすべて使ったというくらい完璧に準備をする。すると、本番前に「よし、もう大丈夫」と思える。これが、緊張しないコツです。

――こーじさん流の準備は何をされているのですか?

プロのインタビュアーである宮本さんとゲストや、経営者同士の対談は、もうそれだけで聞く価値があります。でも、僕と「神々」との対談は、ゲストが「この人、自分のことわかってくれているな」と思うことで対話が深まり、価値が生まれる。


相手を深く理解するために、準備の段階でゲストの方に「憑依」しています。例えば、こんまりプロデューサーの川原卓巳さんがゲストの時は「この1週間は川原さんになる」くらいの気持ちで、著書はもちろん、過去の対談記事やインタビューを読んで、YouTubeで動画を見ます。すると、だんだん川原さんが言いたいこと、コアの部分がわかってくる。そのキーワードをノートに書き込む。
週に1回のペースでイベントがあるときは、1週間に1回ゲストが変わるので、1週間ごとに別のゲストに憑依します。

――週替わりのキャンペーン。もうお祭りみたいですね(笑)

そうですね(笑)

――1番の素材である著書を理解するために、特別なことはしていますか?

著書を深く読み込んで、その本と対話するような形で浮かぶ質問は全部メモします。さらに、その中で出てきた15個くらいのキーワードを精査して、6個くらいにまとめる。この作業をすることで、本の全体を俯瞰したほうがいい質問ができるんです。

えりこ

<10分で初対面の相手の心をつかむ>

――そのコアな部分は、インタビューの早い段階で相手に伝えるようにしていますか?

そうですね。

――緊張の克服方法としては、入念な準備によって、憑依するくらいゲストの直近の価値観のコアを理解して、インタビュイーと共有すること。それで距離を縮めているんですね。

今回の著書を読んで「ココとココのキーワードが大事でしたよね」と最初に認識を揃えることで、ゲストの方が「あ、5時こーじはわかっているね。じゃあそこについて深く話していこうか」みたいなテンションになってくれる。
ゲストが何を話しても「それは2章で書かれていた話ですよね」などの返しで、こちらがどんな発言も拾えることをわかってもらえると、そこで一気にチームになれる感覚はありますね。逆に少し調べればわかるような質問を最初からしてしまうと、会話のリズムが崩れてしまうことがあるので気をつけています。

――こーじさんがインタビューをする時の相手は、基本的に初対面の方が多いですか?

多いですね。だからほぼ毎週祭りです(笑)。会場でのインタビューの時は、午前7時半開始で、ゲストの方には7時10分に会場に入ってもらいます。そこでようやく「はじめまして」から始まり、「朝渋」の説明や打合せをするので、本当に最初の10分くらいで信頼関係を築かなければいけない。これが毎回ハラハラする時間です。

こじ

<震えが止まったのは100回目から>

――ほぼ毎回うまくいってらっしゃるとは思うけど、シビアな失敗とかありましたか?

やっぱり最初の10分で心がつかめないと、ズルズルと最後まであまり深い話ができません。初めの方はよくあって大変でしたね。今でこそ「知り合いの〇〇さんが出ていた『朝渋』ですよね」と言っていただけたりと、多少の信頼感を獲得した上でスタートできるので、ありがたいです。

――最初の方はガチガチに緊張して、ブルブルしていたとおっしゃっていましたが、その震えが止まったのはいつくらいですか?

100回ぐらいやってからですね。

――100回もかかったんですね。

そうですね。イベントは100人ぐらいの参加者の前で行う公開型なので、インタビューが終わった後の参加者の表情や空気感で100点だったのか、30点だったのかわかるんですよね。コンスタントに80点ぐらい出せるようになってきたのが、100回ぐらいだと思います。

――言語化しにくいかもしれませんが、その100点と30点の差は何ですか?

ゲストの方が「いや、ここだけの話ですよ」と、言いたかったことをニコニコしながら全部話してくれる会と、予定調和の内容を話して、型通りの回答で終わる会の違いは、司会やファシリテーターの力量にかかっていると思います。

――その力量を左右するのが、先ほどおっしゃった「相手のことを深く理解する」ことなんですね。

ゲストが「この人には話しちゃおうかな」と感じる雰囲気は、すごく大事だなと思っていて。例えば、僕は宮本さんに過去にインタビューして頂いて、絶対なる信頼を置いているので、今回も「何を聞かれてもいいですよ」と思える。これは関係性があるからできることです。この関係性を「朝渋」では打合せの10分やイベント中に築いていくのがとても大切。それは参加者にもわかることですね。

――すごい。一本勝負にご自分をさらされているのね。

勝率はあがってきた感覚はありますけど、10回に1回はめっちゃへこむ回がある。

――本当に、インタビューは生ものですよね。

<「ちゃんとやる」のをやめたら「らしさ」が出た>

――あともう1つ伺いたいことがあります。こーじさんが、インタビュアーとしての自分らしさを出せるようになったきっかけがあったら教えて頂きたい。

「ちゃんとやるのをやめよう」と思ってからですね。

イベントを始めたばかりの4年前は、25歳で何もわからないポンコツ加減を出さないように、難しい横文字を使ったり、知ったかぶりをして、目上のゲストを相手に何とか対等に行こうと頑張っていたんですよね。そうすると、ゲストにも一夜漬けのパターンであることがばれてしまって。

最初は西村さんの「具体と抽象を行き来するファシリテーター術」を真似していました。
でも「こういう具体例ありますよね」と広げたら、ゲストに「いや、そうじゃなくて」と言われたり、「まとめたらこうですよね」と言ったら「いや、それはまとめじゃなくて」とトンチンカンな要約ばかりしていたんですよ。それでも、最初の50回までは、なんとか背伸びしようと頑張っていた。

――いいお手本がそばにいたんですね。

西村さんにもアドバイスを頂きましたけど、次第にどうやら僕と西村さんは毛色が違うぞ、と感じ始めて。そんな時に迎えた朝渋で、とても賢いゲストがいらっしゃって、全然そしゃくできなかったんです。思わず「ごめんなさい、それってどういう意味ですか?」と聞いてしまった。そしたら、目の前にいた参加者がめちゃくちゃ頷いて「5時こーじ、よく聞いた!何言ってるのかわかんないよね、このゲスト」という顔をしていたんです。

イベント後も参加者から「僕らの代表の質問をしてくれてありがとうございます」と言われました。その時に「あ、25歳の等身大の、社会人3年目の質問をしたらいいんだ」と気づいて、そこからガラリとスタイルを変えました。

<完璧な準備をビリーッ!と破く>

――もう着ぐるみを脱いだんですね。

着ぐるみを脱ぐ

脱ぎました。もちろん原稿や進行の流れを書きだして、今まで通り準備は完璧を目指すんですけど、本番前にビリーッ!と破いて捨てる感覚ですね。それで等身大で始めると、ゲストも「25歳の5時こーじ、これわからないか。よし、説明するね」となる。いつも神様同士のトークイベントを見ていた参加者も、「朝渋」は自分たちに向けた言葉でしゃべってくれるのか、と価値を見出してくれる。

――なるほどね。今度は参加者が、こーじさんに"憑依"するようになったんでしょうね。

だから、僕はいつも参加者はどんな疑問を持つのか意識して、参加者代表の気持ちを忘れないよう心がけています。朝からイベントに参加するような、これから頑張っていこうとしている人100人なりを援軍に引き連れて、僕が挑戦者になってインタビューする。今はこのスタイルを確立できたかなと思います。

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<オーディエンスの巻き込み方>

――こーじさんのインタビューの場は、オーディエンスも同じ熱量で参加されている雰囲気が唯一無二な場になっていると、私は感じています。インタビュー中に心がけている巻き込み方はありますか?

まず、一体感をつくること。ゲストに話を振る前に、参加者に「今日ここに来たのは、こういう理由の人が多いんじゃないですか?」と呼び掛けたり、チャットを打ったりして「そうだそうだ」と頷けるような一体感をつくっています。

――たしかに、「そうだそうだ感」がすごいですよね。チャットの内容も義務的に意見を言わなくてはいけないとかでなく、単純にインタビューで聞いて感動したフレーズをリフレインするという。あれは、お願いしているんですか?

特に頼んではいないですが、このイベントを一緒に楽しもうというメンバーが多いのは、本当にありがたいです。たとえゲストが、社会的地位が高い有名な方でも、聞く側の視点に合わせた内容で話をかみ砕いてくれるように、僕が直球でぶつかっていくスタンスは、メンバーに支持されます。ゲストから怒られる可能性があるかもしれないけれど、参加者からは「よくぞ言った!」「それを聞きたかった!」という声が多いです。

その人が書いた本を読んで行動できたら、みんなその人のようになれるわけじゃないですか。でもそうなっていないということは、本に書かれていない部分もたくさんあるはずなんですよ。そこをえぐるような気持ちで挑んでいます。

<背伸びをしていた自分から、原点回帰する自分へ>

――無意識に著者が省いている部分を掘り起こし、かみ砕いているから、一緒に聞く参加者の方々にとっても自分ごとになっていくんでしょうね。だから言葉が響いて、もう1回イベントに行きたくなる気持ちになる。

25歳の時、西村さんと一緒に「朝渋」を始めたばかりで、まだ何もできなかった頃の自分の経験が、とても大きいと思います。誤解を恐れずに言うと、今ではゲストと同じ目線で話せることも結構あるんです。そっちのほうがラクだったりするけれど、もう1回25歳の時の感情を取り戻して、質問も25歳の自分が聞いても面白いか、確認しています。
もちろん、大切なのは年齢だけではないですが、これから何かをやっていきたいマインドが一番強かった時期の自分に、照準を合わせています。

――今のステージでの新たな挑戦ですね。原点回帰をしているような。人間ってつい自分を良く見せたくなりますよね。「これだけ準備してきました」と示したくなっちゃいますが、そうじゃなくてね。

最近僕はゲストに「僕は早起きしかできないんで」とよく言うんですよ。初めにあえて何も知らない感じを出すケースはありますね。

――なるほど。ニュートラルに何でも聞ける自分に戻ろうとするということですね。

<オーディエンスからの質問>

――先ほど100回目くらいからやっと80点とれるようになってきたとおっしゃっていましたが、それまでに100回続けられた理由は何だと思いますか?

2年間毎週イベントをやっていたので、48回x2年で計100回くらいですね。毎週のように波(イベント)がやってくるのでクヨクヨしている時間も、振り返る時間もない。本当に友達がゼロになる覚悟で、次から次に本を読んで、準備して。2年くらい経ってからようやく振り返る余裕ができて、できることが増えている、引き出しが増えた実感がありました。

僕は元々営業マンをやっていて、その立場だと20年かかってやっと話せるようになるような人たちと、毎週話せる機会を頂けるというモチベーションがあった。そこに挑戦しない理由がなかった。この波は絶対に乗るんだという気持ちは、一度もぶれたことがありませんでした。

みやもとV

<こーじさんにとってインタビューとは?>

自分の持っているものをすべてさらけだすこと、ですかね。僕は真っ裸でいつもインタビューに臨んでいます。

――最初のころは色々と守ろうとしていたから、ガチガチに緊張していたと。今はインタビューという時間があるから、こーじさんが背伸びせず、自分に素直に向き合う時間を持てていると言えるのでしょうか。

そうかもしれないですね。現時点での自己表現。だから、偶然今ぴったり感覚が合うゲストもいれば、合わないゲストもいる。今回合わなくても、1年後にすり合わせができるかもしれないと思えるのは、長年続けてきたことへのご褒美ですよね。

こーじV

(取材:宮本恵理子、構成・文:緑川真実)

*当インタビューを企画しているインタビュー特化型ライター養成講座「THE INTERVIEW」の詳細はこちら。
https://the-interview.jp/
*毎回豪華ゲストを招いて、インタビューのコツをインタビューするオンライン勉強会「INTERVIEW ABOUT INTERVIEW」はこちら。
https://the-interview.peatix.com/
*次回の「INTERVIEW ABOUT INTERVIEW」はこちら。第15回ゲストとしてお迎えするのは、編集者の干場弓子さんです。https://peatix.com/event/1994515


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