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ここだけの進路相談(続編)

進路相談をするとき、やりたいことが決まっていないという生徒には、好きなことを尋ねることにしています。基本的に、好きなことについて話をするとき、どの子の顔も生き生きして、声に張りが戻ってくるからです。

しかし、ここでも壁にぶつかってしまうことがよくあります。

生徒「好きなことですか。う~ん、特にないです。」
私「えっ、ひとつもないの? くだらないことでもいいよ。」
生徒「何が好きとか、あんまりない。」
私「スポーツやったり、楽器も習ったりしているよね。」
生徒「やってはいますが、そんなに才能ないから。好きかっていわれてもよくわかりません。それに職業にはならないですよね。」

微妙な沈黙が数秒続く。

親「先生、それでA大学とB大学では、この子の希望する学部の偏差値なんですが。」
私「あ、そうですね。はい、学部別の偏差値でしたね。」

こういう展開になってしまうケースです。

よく観察してみると、こうした傾向は、周囲にとっていい子に育っている子に目立つと思います。親や教師の言うことをよく聞く、いわゆる手のかからないタイプの子たちです。
当然ながら、いい子になるためには、周囲に合わせる力を養っていかなくてはなりません。周囲にとってのいい子であるために、自分自身と対話するチャンスを見失う。そうしていくうちに、いつしか自分自身を殺してしまうのではないかと思います。その結果、自分は何が好きなのかも分からなくなってしまう。

親の期待に沿うよう頑張って、先生の言うことを聞いて勉強に励み、本当に大切な自分自身との対話を忘れてしまう。これがどれほど大変な問題かに大人が気づいていない、それこそが大問題なのではないでしょうか。

今、社会の価値観や、その構造自体が大きな転換期を迎えています。次の時代に、もっとも大切なものは、自分の好きなことで生きていく力だと思います。

これは、好き勝手に振舞っていいということではなく、自分の頭で考えて自分で決めて行動する胆力を培っていくべき時代が来ているということです。これまでの頭の良さとは、高度事務処理能力を指していました。でも、それは今後AIが代行してくれますよ。

正解のない時代がもう始まっているのかもしれません。

なんだか静かな革命前夜のような時期ですね。

こんな時代だから、いま私にできることは、自分自身を安心して出せる場所を生徒たちに提供すること。生徒たちの好きに耳を傾けて面白がる時間を持つこと。受験指導とはかけ離れているかもしれませんが。

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